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お嬢様は強かった

第五章のはじまりです!

「オオナムチさんをはじめて見たときにわかったんです。あなたはわたしの運命の人です」


 俺は今、スセリと焚き火を囲んでいる。

 夜の森の中、万宝袋(まんぽうぶくろ)から肉を取り出して焼くと、スセリは喜んで食べている。


「寒くない?」


 俺は戸惑いながら、話をずらした。

 そもそも、こんな俺のどこがいいのか?


 今までこんな経験はないし、どう返事をしていいかもわからない。

 こういう美少女にストレートに好意を伝えられるなんて、なにかの罠としか思えないのだ。

 そう、たとえば買っていない宝くじが当たったような感じというか、うれしいけど信じられないみたいな、そんな感覚なのだ。


 ヤカミとのこともそうだけど、この世界に来てから驚くことばかりだ。


「大丈夫です。こういうの憧れだったんです」


 スセリは目を輝かせながらイキイキと語る。

 お嬢様として大切に育てられたスセリは、こうして家族や護衛のいない状態で、夜間に出歩くことがはじめてなのだと言う。


 アレだ。箱入り娘ってやつだ。

 もちろん、森の中での一泊なんて、はじめての経験だそうだ。


 俺はジジイのサバイバル訓練で、幼い頃から幾度となく経験している。


 夜の森は暗い。

 暗いというか黒い。


「兄はわたしのことが大好きなんです」


「それはわかります」


 それはもう一撃でわかった。

 あれはひどい。

 あの兄は病的なシスコンだ。


 スセリの兄、イタケルは、父であるスサノオ大王とともに海を渡り、ワ国の根幹を築いた英雄で、今は二人の妹とともにキ国に住んでいる。

 キ国はワ国の傘下にある国で、ここから徒歩で一週間ほどの場所だ。


 射盾神(いたてのかみ)の異名を持つイタケルは弓の名手で、おそらく明日には部下たちとともに、俺たちを追ってくるだろうと言う。

 その場合は、スセリが住んでいるスサノオ大王の居城に向かうだろうとのことで、その裏をかいてキ国に向かい、スセリの姉にあたる二人をまず説得し、俺たちのことを認めてもらって味方にしようとのことだった。

 そして、妹3人でイタケルを説得する作戦だ。


 話しているうちにすっかり夜が更けてきた。


 にこにことこちらを見ているスセリに問う。


「眠らないの?」


「先に眠ってくださってもいいですよ」


「いや、火の番をしておくよ」


「そうですか。では、わたしは先に失礼させていただきますね」


 俺は土魔法で小さな小屋を作り、万宝袋(まんぽうぶくろ)から布と毛皮を出して、寝床を作ってやった。

 アマで買っておいた布がこんなところで役立った。


 そういえばルウや村のみんなはどうしてるかな。


 俺は生命と精神の祝福のおかげで、三日くらい寝なくても支障がない。


 その夜は、近くで寝ている美少女にドキドキしながら、寝ないで夜を明かした。


◇◇◇◇◇


 朝になった。


 俺たちは身支度をすませると、キ国へ向かった。

 追っ手の追跡を遅らせるために、野営の跡は土魔法で埋めた。


 スセリは箱入り娘のわりにたくましかった。

 深い森の中を苦ともせず、俺についてくる。

 最初は気づかってゆっくりと歩いていたが、大丈夫なのでもっと急いでくれと言われて速度を上げてみたところ、なんの問題もなく俺についてくることが可能だとわかった。


 はっきり言ってこれはすごいことだ。

 俺はもともとジジイに訓練されているから、山中での移動速度はとんでもない速さだ。

 ジジイですら俺にはついてくることができない。


 つまり、スセリはあの超絶体力バカのジジイより、はるかに体力があるということなのだ。


 というか、今って時速30キロくらいの速度は出てると思う。

 スセリがまだ大丈夫ですと言うから、速度を上げていったのだが、これはもう原付バイクの法定速度並だ。


 見た目は華奢(きゃしゃ)で、おしとやかそうな美少女なのに、はっきりいってありえない。


 俺は祝福の力や高レベルなこともあって、この世界ではさらに超人化している実感がある。

 しかし、スセリは苦もなくふつうについてくるのだ。


「スセリってすごいね」


「なにがでしょうか?」


「いや、お嬢様なのに、こんな山歩きができるなんてさ」


「兄と山に入ることがありましたし、父はこんなものではありませんから」


「うっく」


 そうだった。

 この美少女は、スサノオ大王の娘なのだ。

 あのサルダヒコ元帥を配下にするほどの力を持ち、ワ国を造り上げた覇王の血を引く娘なのだ。


 途中で何度か魔物に遭遇したが、俺があっさりと倒した。


 そして、昼になったので休憩することにした。

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