第三話 きれいなお姉さんこんにちは!そしてさよなら
俺は大波武一14歳、現在、絶賛とまどっている。
目の前にきれいなおねえさんが立っている。
いったい何が起こったんだ?
地震でジジイの斬撃で飛ばされて、土の中にあった勾玉が光って・・・。
どこかに飛ばされた?
うん、意味がわかんない。
あらためておねえさんを見る。
少し外人っぽいのかな。
肌は透きとおるように白いし唇の色も薄い。
こういうのアルビノって言うんだっけ?
髪の毛は白銀で輝いている。
ちょっとこれは人間離れした美人だ。
目は閉じているみたいだけど普通に立ってるし、寝てるわけじゃなさそう。
薄目を開けているのかな?
感覚的には見つめられている感じがしている。
「誰ですか?」
かなりびびりつつも声をかけてみたが返事は無い。
俺は武力は高いがコミュ力は低い。
むしろコミュ障のキモオタだ。
女性と話すのは苦手だし、もちろん妖精だよほっといてくれ。
視界の範囲であたりを伺うが、家の庭じゃない。
まわりは鬱蒼とした森で、おねえさんの背後には、見たこともないレベルの巨木が、天を突いてそびえ立っている。
小さく波の音が聞こえていて、かすかに潮の香りもする。
海が近いのか?
家は山奥だしありえないんだけど。
誘拐されたのかな?
いや、一瞬の出来事だし、そんな感じでは無いな。
てか、ジジイはどこいった?
目の前のおねえさんから視線をはずさないようにして、とりあえず身体を起こして正座の形になる。
土下座はあんまりだしな。
さてどうする?
ちょっと沈黙がきついんですけど。
繰り返すが、俺はコミュ障で引き篭もり系のオタクだ。
きれいなおねえさんの対応なんて無理ゲーすぎです。
「あのぅぁ」
しまった。声が裏返ってしまった。
あのぅぁってなんだよ。
われながらありえないだろ。
『月に打たれた者よ』
「はい!?」
頭の中に直接声が響いた。
月に打たれた者って俺のことか?
おねえさんの口は動いていないが、まわりを見回しても誰もいない。
やっぱおねえさんの声に間違いないっぽい。
月? そういえば空に月が無いな。
さっきまで満月だったはずなのに。
っていうかおねえさん誰なの?
『創造の母にして破壊の女神。時間と運命の秤。智慧の血。28の獣』
返事キタコレ!
やべえ。でも、まったく意味がわからない。
女神とか言っちゃってるけど、その後の言葉なんて、まるで意味がわからない。
28の獣とか、なんかの組織名だろうか?
まさかの厨二展開に、俺の厨二パワーが追いついていない。
妖精王よ! 俺にもっと力をくれ!
いや、現実を見つめよう。
これってあれ?
頭のお医者さんが必要なやつ?
それとも事件になる薬やっちゃってるとか?
つーか、ここってどこなんだろ?
『浄化の地。英雄王のゆりかご。夢と無意識の楽園』
「夢?」
あ、夢なのか?
夢ってどこからだ?
しかし、夢にしてはリアルだ。
全身に感覚があるし、音や匂いもある。
こんな夢は見たことないぜ。
いや、待て。ひょっとして死んだとか?
これって死後の世界とかじゃね?
いやまあ、行ったことないから知らんけど。
『月に打たれた者よ』
「俺ですか?」
『祝福を』
「え?」
おねえさんが右手の平をこちらに向けた。
次の瞬間おねえさんの目を開いた。
瞳が白い!?
「うおおおおおお!?」
吸い込まれる!?
光が爆発したように広がって、視界が白い光で埋まっていく。
手の中の勾玉が光っている。
あわてて振り向くと、夜空にそれが浮かんでいた。
「地球か?」
夜空には青い惑星が浮かんでいる。
海と陸地、雲が渦巻いていていて、宇宙に浮かぶ青く輝く星。
宇宙船から見た地球の映像が、たしかこんな感じだった気がする。
なにがどうなった?
おねえさんも風景も、白い光に飲み込まれていく。
そして、世界が白く塗りつぶされた。
俺は意識を失った。
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