真っ赤な女の子
ミホさんの屋敷でお茶を飲んでいると、ムル教官が帰ってきた。
各チームのリーダーは、事後処理なんかの話し合いをしていたのだ。
そして、ドタドタと足音をさせながら、すごい勢いでドアを開けて、息を切らせながら部屋に飛び込んできた。
「おい!すごいことになったぞ!」
「んあ?」
ムル教官の勢いに驚いて、変な声が出てしまった。
「一時間後に宿屋街の街道で凱旋パレードが行われることになった。沿道にはもう観衆が集まりはじめてるぞ」
「早いっすね」
「なにせテマ山に入ってすぐのところで任務完了したわけだからな。撤収も早かったわけだし」
「ああ、そうですね」
「それと季節が季節だけに、早くしないと肉が傷むからな」
まだ朝だけど、たしかに外は暑くなってきている。
「レッドギガントボアを先頭に、今回の任務に参加した者が行進するんだ。これはすごく名誉なことだぞ!」
ムル教官はとても興奮している。
「そしてだな。ムイチとミナは最大功労者として、先頭の神輿に乗せられることになった!そしてパレードの後の式典で、テマ町長から名誉勲章が授与されるんだぞ!」
「欠席するっす」
俺は即答で拒否った。
ムル教官のドヤ顔が、驚愕の色に変わる。
目が飛び出ちゃいそうだ。
これ、目潰し決めたら気持ちいいだろうな。
「なにぃ!?なんでだよ!?」
「恥ずかしいんで無理っす」
そう、俺はコミュ障だ。
そして引き篭もり志望なのだ。
立派な日陰者をひっそりと目指してるのに、パレードとか式典とか無理すぐる。
「50年ぶりの快挙らしいぞ!こんな名誉なことないんだぞ!?」
「興味ないっす」
「なんでだよ!出てくれよぉ!出てくれないと俺が困るんだよぉ」
「なんでそんなに推すんすか?」
「支度金もらっちゃったんだもん」
うわ、うぜえ!
語尾がもんってなに・・・
角刈りのおっさんがもんって・・・
「しかもちょっと使っちゃったんだもん」
「おい待て!wwwなんで貴様が使ってんだよ!」
もんってはにかむ内容じゃねぇ。
犯罪じゃねーか!
「使ったってどれくらい?」
「200万くらいだもん」
「返事おかしいだろ。もう、もんって言いたいだけだろおっさん」
うぜえ、ミナが剣を抜こうとしてる。
「いくら支度金もらってたんだよ?」
「200万くらいだもん」
「全部使ってんじゃねーか!」
そして今、ムル教官はさるぐつわをかまされて、逆さに吊られている。
この男、支度金を何に使ったかというと、飲み屋のツケを支払ったらしい。
パレードのための正装なんかを用意するための資金なのに、俺もミナも正装とか持ってないし。
「ミナちゃん、これ着てみて」
すると、ミホさんが、娘が小さいときに着ていたという服を出してきた。
赤くてかわいらしい服だ。
さすが貴族だけあって、正装として十分というか、これ以上のものはない感じだ。
「ムイチさんには、わしが貸してあげよう」
ミチオさんが黒っぽい服を持ってきてくれた。
ゆったりした上下で、生地が気持ちいい。
「師匠」
ミナが着替えてきた。
うれしそうな顔をしている。
似合ってるな。
とてもかわいらしい。
あ、子供としてのかわいらしさだから誤解しないでほしい。
俺は犯罪者ではない。
「しかたない。行くか」
あまり気乗りしないが、まわりの全員が乗り気なのだからしかたない。
俺は流されやすく、長いモノには、うまくまかれちゃう男なのだ。
空気も読める日本人だしな。
ムル教官はしかたないので降ろしてやったら、さっそく正装に着替えていた。
ハチマキに水色のハッピに、裸にさらしを巻いて白の半ズボン。
なんの祭りだよ!?ww
って、背中に赤文字で大きく祭って書いてある。
「正装ってあんなのなんですか?」
ミチオさんに聞いてみたら、まったく違うとのことだった。
まあ、ムル教官には特殊な役目があるのかもしれん。
なるべく離れて歩こう。
そして、俺たちは凱旋パレードに参加するため、北の宿屋街へと向かった。




