S級認定されちゃいました!
みなさまブックマークありがとうございます!
今日はテマ山周辺調査任務の初日だ。
ムル教官は、昨夜はかなり遅く帰ってきたらしい。
話し合いの顔ぶれの中に古い知り合いを見つけて、何人かで酒を飲んでいたら遅くなったのだそうだ。
そして、今、出発前のミーティングをしている。
メンバーは、俺、ミナ、そして、テマ山ガイド役のミチオさんとムル教官の四人だ。
「これからテマ山のふもとの指定位置に移動して待機する。空に火魔法が打ち上げられたのを合図に、山頂を目指して出発する」
今回の調査任務では、テマ山周辺を囲むように6~10名程度のメンバーからなる50チームが配置されることになった。
そして、合図とともにそれぞれが出発し、調査をしながら山頂を目指して進む。
ちなみに俺たちのチームは人数が一番少ない。
おまえらなら問題ないだろうとムル教官は笑っていたが、これがフラグにならないことを祈ろう。
まあ、俺はコミュ障だし、ミナもぶっきらぼうで無口だから、知らない人が増えてもやりにくいだろうな。
そもそも人が増えたところで、連携とか取れる気がしないし。
俺とミナの師弟コンビで、どんな魔物が現れてもぶっ倒してやるぜ!
山頂に向けて調査しながら進むわけだが、魔物に遭遇した場合は、倒すか山頂に向けて追い立てることになっている。
強力な魔物がいるとしたら、おそらくふもとではなく山頂に近いほうだと思われ、山頂に向けて包囲網を狭めていき、最後は全員で殲滅するという作戦だ。
もし、倒せない魔物に遭遇した場合は、各チームのリーダーに渡されている魔道具を使って、空に救援要請の合図の魔法を打ち上げることになっている。
この魔道具だが、遭遇した魔物の脅威度によって色分けされている。
付近のチームの支援で倒せる程度なら黄色、それ以上の脅威なら赤、そして今回の元凶と思われるような魔物、もしくは、まず無いだろうということだったが、災害クラスの魔物に遭遇した場合は黒という具合だ。
各チームのリーダーに、黄色6本、赤3本、黒1本の魔道具が支給されている。
筒の色がそれぞれの色になっているので、間違って使うことはなさそうだ。
まあ、花火みたいな感じなのかな。
包囲網には一定間隔でB級以上の実力のあるチームが配置されていて、それによって包囲網を突破される危険を減らしている。
D級からはじまる実力判定は、C級、B級、A級、S級と続くにつれ実力が上がる。
B級以上のチームは少なく、A級以上は数えるくらいしかいない。
S級になると、もはや伝説のクラスだそうだ。
今回の任務にはB級が14チーム、A級が3チーム参加している。
これは国同士の戦争ができるほどの戦力だそうで、今回の事態がかなり重く受け止められていることを示している。
魔物の調査任務としては、いくらなんでも過剰戦力ということで、いぶかしむ声も上がったらしい。
しかし、テマが商業都市であることから、事態を早急に解決する必要があるという説明がなされ、一応もっともな理由だと受け入れられたのだとか。
ちなみにS級も1チーム参加しているが、それが俺らだったりする。
これは、ミナの存在によるものだ。
昨日の話し合いでは、タケミナカタが町にいるのを見たという話が出て、場がパニックになったらしい。
顔面蒼白になって、任務を辞退すると言い出したやつもいたとか。
ムル教官が自分のチームのメンバーだと言うと、いきなり俺たちはS級に指定されたらしい。
ミナってどんだけ名前が売れてるんだよ・・・
てか、イズモでは、なにをやらかしていたんだ?
「おいし」
ミナはお茶を飲んでいる。
たぶん、話は聞いていないと思う。
そして、俺は重要なことに気づいた。
今回の任務にあたって俺が立てた方針は、すでに意味のないものになってしまっている。
テマ山包囲網の300人超、これはそのまま八十神たちと言える。
その八十神たちが魔物を追い立て、それを殲滅するという任務なのだから、魔物が追われて俺の前に来たとしても、俺は逃げることはできない。
ふと、気になってムルさんに聞いてみた。
「今回の魔物って赤猪だったりします?」
「未確認だが、そういう話が出ていた。しかし、なんで知ってる?」
やっぱり・・・
俺が知ってる現代に伝わった神話、大国主命の再生神話では、八十神たちが赤猪を追い立てるから捕まえろと、大国主命に命令するのだ。
すでに、これはクリアされちゃってるじゃん。
今の状況そのまんまだし。
そして、神話の続きだが、赤猪に似せた赤く焼かれた岩を受け止めて、ヤケドしてバラバラになって絶命するのだ。
こんな死に方は絶対にいやです。
まあ、救いがあるとしたら、神話の続きでは、死んだあとに母神と二人の女神の力で蘇生されて再生復活するってところか。
まあ、それこそありえない話だが。
まあ、しかし、ここまできたらやるしかない。
よくも悪くも空気が読める俺は、ミチオさんとムルさんの指示で、俺たちチームの待機場所に向かった。
もうこうなったら、なるようになれってやつだ。
俺は気持ちを入れ替え、出発のときを待った。
ほどなく轟音とともに、出発の合図の花火が打ち上げられた。
さあ、やってやろうじゃないか!
赤い猪だろうがキツネだろうが、緑のタヌキだろうが、全部まとめて屠ってやるぜ!
俺は一歩目を踏み出した。




