大山さんこんにちは!
早朝にヨドエを出発して、テマ山に向かっている。
ムル教官の先導で、俺とミナが後ろを歩いている。
ルウはいない。
村のことが気になるということで、一度村に戻ることになったのだ。
ついでに、村の人とミナの家臣団に、俺たちが無事だってことを知らせてくれるように頼んだ。
ミナの家臣団については、すでにミナを探しに移動してるかもしれないな。
俺の背中には巨大な盾と剣。
新しい装備品だ。
イナバ往復の護衛任務の報酬であり、今回の任務のための支給品でもある。
ヨドエの修練場の武器庫にあったものだ。
長方形で十字の文様が入ったタワーシールドは、厚さが10センチある鋼鉄の盾だ。
俺の身体をすっぽりと隠すことができてしまう。
そして長さ140センチの両刃の長剣。
もちろん鋼の鍛造。
バスタードソードって感じで、パワーと重さで叩き斬るタイプの剣だ。
剣も盾も、普通の人では扱うことはできない重さだが、俺のパワーと技量なら問題にはならない。
本来、大波流は刀一本で機動性を重視する攻撃特化の武術で、防御は避けることが基本になっている。
俺自身も、素早さを活かした戦闘スタイルを好むから、こういう重くてでかい盾なんてのを使うことはなかった。
しかし、それでもこういう選択にしたのには、もちろん意味があってのことだ。
今回の任務は、テマ山周辺の魔物の調査と駆除だが、そこで俺が殺される可能性があるのだ。
今の俺が、未来に大国主命と呼ばれる存在であると仮定した場合の話だが、現代日本に伝わる神話では、テマ山で八十神に騙され、赤く焼かれた岩で殺されることになっているからだ。
そうなることは絶対に避けたいと思う。
その対策として、俺はふたつの方針を定めた。
八十神に騙されないように気をつけることと、赤く焼かれた岩に注意することだ。
この巨大な盾と剣は、赤く焼かれた岩対策のための装備だ。
盾でそらすか受け止めること、もしくは剣で粉砕するという二段構えで考えている。
俺の計算によると18トンの岩までなら、俺のパワーとこの装備で対応できると思う。
まあ、まずは八十神に騙されないことが最優先だが、そもそも八十神が誰を指し示すのかわかっていない現状がある。
とにかくテマ山では、注意深く立ち回ろうと思う。
「大きい」
ミナが言っているのは、伯耆大山という山のことだ。
ヨドエからテマ山に向かう俺たちの左側に、その大きな山はそびえ立っている。
実は現代日本での俺の家は、この伯耆大山のふもとの山中にあるのだ。
今はまだなにもないと思うけど、いつか行ってみたいと思った。
「美しいな」
今も未来も、変わらず美しい山だ。
ムル教官が、ホノカミ岳だとおしえてくれた。
ホノカミは火の神ということらしい。
伯耆大山より、ホノカミ岳のほうがかっこいい気もするな。
そういえば長いこと噴火していないらしいけど、この山って火山なんだよな。
橋を渡って小さな山を越えた。
ムル教官が立ち止まった。
「メシにするか」
湧き水のある木陰で、昼食にすることになった。
魔法で大きな氷を作って置いてみた。
「涼しい」
ミナが喜んでいる。
俺は万宝袋から、おにぎりとスープを出して二人に配った。
やっぱ外で食べるメシはうまい。
しかし、アレだ。
ムル教官は、おにぎりおいしそうに食べるプロだな。
やかんを取り出して、直接口をつけてお茶を飲んでいる。
とてもワイルドだ。
「なにもなければ二時間でテマに着く。そこで宿は手配してある」
すばらしい。
今回の任務は段取りがいいな。
小さな森を抜けて、後は街道を歩いた。
魔物や盗賊も出ないし、とても平和だ。
「あれがテマ山だ」
テマ山が見えてきた。
そんなに高い山ではないな。
山のふもとには、たくさんの家並みが見える。
これは、思っていたより大きな町だ。
そして、テマの町の入り口についた。




