第二十四話 これって因幡の白兎?
サメに襲われていたのは、なんと隠れ里の巫女見習いのルウだった。
昨日ぶりなんだけど、まさかこんなに早く再会できるとは思わなかったぜ。
「ムイチくん!?」
ルウは、俺に気づくと抱きついてきた。
よほど怖かったのだろう。
そして、すぐにミナに引き離された。
「ぐぬぬ」
おい、話が進まないからにらみ合いをやめろおまえら。
ルウは手足のところどころから血を流している。
サメの体当たりのときだろうけど、擦り傷がたくさんあったので魔法で回復してやった。
「あれからどうなった?」
ルウにあの後の話を聞いた。
「ミナちゃんはすごかったよ・・・」
俺が意識を失った後もミナはサルダヒコに立ち向かい、三度倒されて三度起き上がり、最後はうつぶせに死んだように倒れたそうだ。
「村は、村はどうなった?」
「とくに乱暴されたりするようなことはなかったけど、いろいろ言われてたね」
婆さんのいた洞窟の神殿や祭壇は破壊されて、ツクヨミ様への信仰は禁止され、隠れ里は隠れ里としての歴史を閉じることになったらしい。
また、税率は落とされて適正になることが告げられ、隠れ里はアマの属領として近代化の道を歩むことになったようだ。
つまり、最初の交渉で税率がやたらと高かったのは、わざと揉めようとしていたようだ。
揉めることで反対する者をあぶり出し、敵味方をはっきりさせることで新しい体制に移行しやすくしたのだろう。
古代とは思えない、よく考えられたやり方だ。
「それで、どうしてここにいるんだ?」
「ムイチくんたちが乗せられた船を追いかけたんだけど、はぐれちゃったんだよ」
サルダヒコたちは村での諸事が終わると、意識を失っている俺とミナを連れて行った。
ルウはそれをこっそり追いかけたそうだ。
そして、アマから船で出航したのを見て、すぐさま船を購入して後を追ったらしい。
必死で漕いだけれど、すぐに俺たちの乗せられた船を見失い、潮に流されて今に至るということだ。
しかし、それでこうして俺らと会えるって、なんだかすごい話だな。
「あれ?」
なんか違和感を感じて、ルウをじっと見つめた。
「ルウってそんな髪型だったっけ?」
「ううん。髪型変えたの。かわいくない?」
「いや、かわいいかも」
ルウは両サイドの高い位置で長い黒髪を結んでいた。
ツインテール、略してツインテってやつだな。
ツインテって髪型は、狙いすぎって言って嫌悪する人もいるけど、その狙いは俺に対しては正解だ。
むしろ、俺のストライクゾーンを四方向から50回くらい射抜いている。
「うさぎみたいでかわいいでしょ?」
ルウはそう言って笑った。
くそう、あいかわらずあざといかわいさだ。
そういえばルウは、漢字で書くと流兎だったな。
そこで俺はあることに気づいた。
これって、あの話じゃないかと・・・
古事記にも出てくる日本の神話、童謡にも歌われる『因幡の白兎』の話だ。
それは、若き日の大国主命の話だ。
大国主命は、八十神というたくさんの兄弟にいじめられていた。
八十神たちは因幡の国の八上姫に求婚に行くことになり、大国主命は荷物を持たされて、従者として連れて行かれた。
そして、遅れて歩いていた大国主命は、皮をはがれて苦しんでいる兎と出会い、それを助けるという話だ。
気多っていう場所だった気がする。
細かい部分は忘れた。
というか、叡智の祝福の力でこれだけ思い出せたっぽい。
それとたしか、兎は隠岐島から海を渡ってきて、ワニザメに皮をはがれたはずだ。
俺は近くにいたムル教官に聞いてみた。
「ひょっとしてここってケタっていう場所ですか?」
「そうだよ」
あっさり正解。
「これからイナバに行くのって、八上姫に会いに行くためだったりします?」
「あれ? 言ってなかったか? イナバで行われるヤカミ姫主催の婚活パーティーに参加するのが今回の任務だよ」
「なんですと!?」
婚活パーティーかよ!?
って、この時代からあるのかよwww
てか、国策の任務ってそれなのかよ!?
それで服やらなにやら、荷物がやたら多かったわけか。
聞いたら、半分以上はプレゼントのための品らしい。
まあ、イズモの貴族(豪族)が、イナバの貴族(豪族)と婚活するのは、ある意味たしかに国策扱いなのかもしれない。
今ってあきらかに人口少ない感じだしね。
つまり、八十神がバトゥンさんたち貴族のことで、荷物持ちの俺が大国主命で、イナバに向かう途中のケタでオキから海を渡ってきた兎を助けたわけだ。
ルウは色白だし、白い服を着てツインテだと、たしかに白兎って感じだ。
そういえば、たしかに昨日から俺はいじめられていたし、そこも辻褄が合う。(正当な懲罰という異説あり)
つまるところは・・・
俺って大国主命ってことか?
大国主命ってかなりすごい神様だよね?
うっは、厨二的にはテンション上がるけど大変そう。
まだ確定ではないが、可能性としてはありえる。
しかし、家の本で読んでいた神話知識が役立つなんてアレだな。
あまり覚えていなかったけど、叡智の祝福のおかげで、かなりクリアに思い出せるんだよな。
まあ、古事記や日本書紀なんかの場合は、作った人達、つまり当時の権力者の都合のいいように書かれてるだろうけど、参考にはなるよね。
「わたしもついていっていいかな?」
そして、ルウは俺たちと同行することになった。
サメはみんなが見ていないときに、万宝袋に収納した。
いきなりサメが消えて、驚いてるやつもいたが、波にさらわれたと言い張ったら信じていた。
ククク、古代人ちょろいぜ!
それからはとくになにごともなかった。
そして、予定より早く、明るいうちにイナバに到着したのだった。
漢字が多くてすいません!




