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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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やたらと穴に落ちました

 蛇亡魂(じゃぼうこん)、女王の亡霊のようなものだろうか、その巨大な蛇体(じゃたい)(ほふ)り、気を抜こうとした俺たちは南の空を見上げて戦慄した。


「あれは!?」


 空に船が浮かんでいる。

 赤暗い空に広がる黒雲を裂いて現れたのは、クマノの山の上空から姿を消していたスサノオ大王の居城、天鳥船(あめのとりふね)の巨大な船体だった。


 そして、次の瞬間、俺たちはさらに驚いた。


「砲撃かよ!?」


 天鳥船(あめのとりふね)の船体の両サイドと下部から、無数の砲が突き出したのだ。

 その黒い突起から、赤い炎が大地に向けて照射される。


「撃ってきたぞ? なんだよ!?」


 町が、森が焼き尽くされていく。


 いつもこうだよ。

 スサノオ大王が絡むと、常に理解不能の破滅的な状況になるんだよ。

 なんでここにいんの? なぜ攻撃してくるんだよ?

 あの人ってなんでも破壊すればいいと思ってんじゃないのか。

 スセリもただ首を振っている。


「クマソだ!」


 気絶していた痩せた男が意識を取り戻して叫んだ。


「え? クマソってあれ?」


「そうだ! 南のクマソが侵攻してきたのだ!」


 痩せた男は青い顔をしているが、スサノオ大王ってこっちじゃクマソって呼ばれてんの?

 天鳥船は大地を焼き尽くしながらこちらに向かってくる。

 赤暗い空を燃え盛る大地が赤く照らす。

 ちょっとこれは地獄絵図なんじゃないでしょうか。


「やべー、マジあいつしつこいのな」


 ハッチがつぶやく。


「え? どゆこと?」


「死にそうになりながら海を越えたのに、もう追ってきやがった」


「え? なにが?」


「いや、しつこい追っ手の話だよ」


 ハッチが苦い顔で指差しているのは、まさに天鳥船(あめのとりふね)だ。


「スサノオ大王に追われてるのかよ!?」


 そういや追っ手に追われてこの国に来たとか言ってたけど、追っ手ってスサノオ大王かよ!

 最悪の追跡者じゃねーか、関わりたくなさすぎる。


「すまん、国王は無理になった! 代わりを探してくれ!」


 そう言ってハッチは、痩せた男に手を合わせた。


「おめーらは穴ぼこに隠れてろ!」


 両手の神剣アメノムラクモノツルギが二度煌くと、俺たちの立っている地面が傾いた。


「地盤を斬ったのか?」


「じゃあな! 鬼ごっこをしてくるぜ!」


 ハッチがにかっと笑って地面を蹴ると、俺たちは地面ごと女王の出てきた穴へと飛ばされてしまった。


「ハッチ、死ぬなよ!」


「おうよ! またな!」


 ハッチの笑顔が見えなくなると、すぐに天鳥船(あめのとりふね)から照射された炎がそれを追った。


 地面に乗っかったまま穴に落ちていく俺たちを、炎が追いかけてくる。

 結界を張りながら風魔法で冷気を送る。

 水魔法を考えたが、水蒸気爆発とかされると困るので、ひたすらに結界を張った。


 痩せた男は地面に寝転がって頭を抱えている。

 スセリとヤカミは膝立ちになっていて、ミナは器用にバランスを取っている。


「捕まれ!」


 俺は天地理矛(あめつちのことわりのほこ)を地面に突きたて、全員にそこに捕まるように言った。


「スセリ、下に向けて結界を張ってくれ!」


「はい」


 女王の出てきた穴は直径15メートルくらいあって、垂直に下に向かっている。

 俺たちの乗った地面は、その穴にぶつかりながら、下に落ちていっている。

 炎は来ない。空が小さくなっていく。


 これは深い穴だ。

 ものすごい勢いで落ちている。

 穴の壁にぶつかる衝撃を、結界でなんとか吸収している。

 岩と岩がぶち当たる激しい音。

 なんだこのアクション映画のような展開は!


「うおおおおおおお!」


 地面の下に向けて風をイメージする。

 風魔法をクッションにするのだ。

 下がどうなっているかわからないので、イメージがきちんとできなくて効率が悪いが、少しずつ落下速度が落ちてきた。


「底か!」


 下方に重ねた結界が壊れていく。

 どうやら穴の底に接地したようだ。

 土魔法で粘土をイメージして、地面の下に展開していく。

 ほどなくして、ズシンとした衝撃とともに、地面の落下が終わった。


「フゥーフゥー」


 何百メートル落ちたのだろう?

 痩せた男が青ざめた顔で汗だくになっている。

 過呼吸になっているようなので、顔のまわりの酸素濃度を上げてやると、ほどなくして落ち着いたようだ。


 水とコップを万宝袋(まんぽうぶくろ)から出して、全員で飲んだ。

 やっと一息をつく。


「ここはなんなんだ?」


「横穴が続いていますね」


 俺が問うとスセリが答えた。


 痩せた男はまだ放心状態だ。


「深い穴だな。外が見えない」


 落ちてきた穴を見上げるが、真っ暗で光が見えない。

 ひょっとしたら崩れたのかもしれない。


「地下迷宮だと!?」


 オートマッピングの地図をなにげに確認すると、女王の地下迷宮と表示されている。

 現代では発見されていないし、ここはなんなのだろう?


「地下迷宮?」


「あ、いやなんでもない」


 スセリが聞き返してきたが、慌ててごまかした。

 マップのことはまだ内緒にしているのだ。


「おい、ここはなんなんだ?」


 痩せた男に声をかける。


「う、わからない」


 痩せた男は目がうつろだが、次第に力は戻ってきているようだ。


「あれはクマソなのか?」


 スサノオ大王の天鳥船(あめのとりふね)に間違いないが、あえて男に聞いてみた。


「そうだ。南方の蛮族クマソだ」


 たしかに天鳥船は南の空から現れた。

 歴史的にもクマソと呼ばれる勢力がいたことは間違いないが、でもあれはスサノオ大王の天鳥船(あめのとりふね)なんだよな。

 なんだか、混乱してきたぞ。


「女王はなんだったんだ?」


 話題を変えてみる。


「うーん」


 男は目を閉じて首をひねっている。


「我らの神は蛇神であるという話は聞いたことがある。海の底にいる神だと。ただし、神託を降ろす巫女である女王にしか、詳しいことはわからない。わたしのような審神者(さには)ですら、そういった込み入ったことはわからないのだ」


 審神者(さには)とは、祭祀において受けた神託を解釈して人に伝える役目なのだそうだ。

 女王が巫女として神託を受け、それを審神者(さには)が解釈して人に伝えるということだ。


「ハッチマンがよく知っているのではないか?」


「ハッチが?」


 たしかに、ハッチが女王の棺を斬ったことが発端だ。

 この結果を知っていてやった可能性が高い。

 今度会ったら、いろいろ問い詰めないといけないな。


「とりあえず出口を探しませんか?」


 スセリが提案してきた。

 上に登るのはむずかしそうだし、この横穴の先を調べるほうがいいだろう。

 女王の地下迷宮ってマップに出てるし、なにかわかることがあるかもしれない。


 俺たちは地下迷宮の探索に乗り出すことにした。

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