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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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暴君ハッチマン誕生

 ハッチを新王とする即位儀礼の準備は、思いのほかスムーズに行われた。


 女王崩御の報せには衝撃が走ったようだが、それもすぐに沈静化した。

 やはり、何年も姿を見せていないことで、求心力が下がっていたようだ。


 痩せた男の差配は見事だった。

 重責から逃れられるというのがモチベーションとなったのだろうが、寝ずに手配をしたようだ。

 国が荒廃して住民も臣下も少なくなっているので、それで楽だったところもあるだろう。


 また、この世界の政治はまだまだ成熟しておらず、様式なども定まっていないため、痩せた男がこうだと示せば、それに反論する者はいないようだった。

 つまり、個人の影響力がとても強い世界だとも言える。

 これは次期大王になる俺としても、肝に銘じて気をつけたいところだ。


 教育を受けていない素朴な民衆は、主導され命じられるほうが楽なのだ。

 民衆は強い独裁者を求めていて、そのリーダーの資質に国運が大きく左右されてしまうということなのだ。

 そう考えると大王になるのが、なんだか少し怖くなってきたな。

 まあ、スセリやヤカミもいるし大丈夫か。


 ハッチは痩せた男と準備に奔走していたが、俺たちは即位儀礼までの間は街を見て廻ったり買い物をしたりとまったりと過ごした。


 まあ、街で5回ほど暴力的なトラブルに遭遇したが、ミナが嬉々として処理した。

 それらの件について、俺は何も見ていないし覚えてないから聞かないでほしい。

 いや、思い出したくないから聞くな。


 そしてついに即位の儀礼の当日を迎えた。


「あの山はこのために造られたのでしょうか?」


 スセリがハッチと痩せた男が立っている、土を盛った山について聞いてきた。


「ああ、そうみたいだな。古墳に似てるな」


「古墳?」


「ああ、いやなんでもない」


 古墳が造営されはじめるのは、まだ数百年後になる。

 しかし、こうした儀式がそれらの風習の原型になっているのかもしれないな。

 この時代には本は無いが、語り部の部族の者たちは、数千年前からの歴史を口伝によって継承しているらしい。


 高さ10メートルほどの山の手前には、俺たちを含めて400人が整列している。

 俺たちを見下ろすように、ハッチと痩せた男が立っている。

 その後ろには女王の亡骸を納めた棺が置かれているようだ。


「みなよく集まってくれた!」


 痩せた男がその身体からは想像できない大声を出した。

 最初に会ったときの印象からは考えられないほどの覇気だ。

 これで重責から開放されるという思いや、最後の勤めをしっかりと果たそうという思いがあるのだろう。

 ざわついていた人々も口を閉じて、痩せた男の次の言葉に注目している。


「女王は崩御し、盛大な葬送が行われる。しかし、その前に我らは新たな王を立てねばならぬ。喪主となり我らを導く新たなる王だ!」


 人々にざわめきが広がる。

 女王国として永く繁栄していた国に、男王が立つのだ。

 まあ、これほど荒れた国内を立て直すには、王と武力はどうしても必要になるだろう。


 痩せた男がハッチに前に出るように促した。

 だるそうに歩いて前に出るハッチ、もっとやる気出せっての。


「活目せよ! 新王ハッチマン様だ!」


 痩せた男の紹介で、神剣アメノムラクモノツルギを振り上げるハッチ。


 てか、ハッチってハッチマンって名前なのか?ww

 そういや、前にそう名乗ってたような気もするな。

 マンって英語だろ? なんで名前に英語がついてんだよww


「えーと、、」


 ハッチがしゃべり出すと、その場のすべての者が新王の言葉に注目した。

 

「解散!」


 一瞬、みんななんのことがわからなくてキョトンとしていたが、意味がわかると盛大なブーイングに変わった。


 最初の言葉が解散ってなんだよw

 ハッチまじでウケルんだけど、こんな国王は絶対にいやだと思った。


 痩せた男が慌ててなにか注意しているが、ハッチはやる気なさげにあくびをしている。


「その王は認められぬ!」


 民衆の不満は最高潮のようで、集団の中からヤジが飛んだ。

 ゲラゲラと笑う声、ハッチを蔑む声がそこかしこから聞こえる。


「メーン!」


 巨大な鉄が地面を打ちつけたかのような音をさせて、ハッチが10メートル上から飛び降りた。

 神剣アメノムラクモノツルギは振り下ろされていて、ヤジを飛ばした男が縦に両断されている。

 地面に血が広がっていく。


「文句のあるやつは前に出ろ! 斬る!」


 いや、あんた自分から飛んで斬っただろ。

 そういうのは斬る前に言えよ。


「どうした? 俺様に文句あるやつはいないのか?」


 あたりは静まり返っている。

 数10メートルを飛んで人間を両断するような新王に、誰もが恐怖を覚えているのだ。


「そこかブーン」


 ハッチが身を翻して剣を振り、離れたところにいた大男の首を飛ばした。


「なにをするんだ!? ブル様は文句など言ってないだろう?」


 大男の取り巻きだろうか、ハッチに抗議している。


「目が反抗的だったブーン!」


 言うと同時に抗議した男も両断された。

 ハッチためらいなさすぎというか、15秒で3人殺しやがった。


「それに剣をぶらさげてたからな。俺の前で剣を持つってのは敵対する意思表示だろ?」


 ハッチが言うと、ボトボトと音がして、男たちが剣を地面に捨てている。


「やっと話を聞く態度になったじゃねーか? 俺様が新王のハッチ様だ!」


 暴君確定、恐怖政治はじまりの予感がひしひしとしています。

 国民カワイソス。


「さて、王として最初の仕事をしよう」


 ハッチはもといた山の上に立っている。


 なにが起こるんだ?

 みな、固唾を飲んで成り行きを見守っている。


「チィェエエストゥオオオオ!」


 ハッチは女王の棺に振り返ると、奇声をあげて両手の神剣アメノムラクモノツルギを振り下ろした。


「なんですと!?」


 そして女王の亡骸の入った棺が三つに分断されたのだった。

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