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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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新しい王様はどこですか?

「王になられると言われたではないか?」


 痩せた男は激高して、テーブルを叩いて立ち上がった。

 息を荒げて、俺を睨みつけている。


 女王崩御の公示と国王即位の具体的な段取りについて検討するために、個室で実務レベルの打ち合わせをしているのだ。


 痩せた男と俺、そしてスセリ、ヤカミ、ミナ、なぜかハッチもいる。

 部屋の外には、誰も入れないように兵士が固めている。


「いやまあ、なりますよ。でも、よく考えたら俺ってワ国の次期大王なわけだから、連合国の盟主としての王になるわけです。しかし、ワ国大王とこの国の王の兼務は無理ですわ。この国に常駐できないですし」


 この国は荒廃している。

 安定した国ではなく、さまざまな改革によって国を立て直さなければならない。

 俺はノキの町やイズモ国の富国政策をはじめたばかりだし、このイト国を同時に治めることなどできないのだ。

 急激に増えた人口を支えるための冬支度があるしな。


 冬までにやることが山積なのよ。

 この国の王をやってる暇がない。


 つまり、イト国には別の王が必要だ。

 どうしても俺ということなら、来年の春まで待ってもらう必要がある。


「春以降まで待ってもらえますか?」


「冬までにお願いしたいのだ。もう一刻も待てん」


 女王の死を隠しながら不向きな国政を担うという重責から、やっと逃れられると思っていたのだろう。

 それが実務的な話し合いをはじめた途端に、やっぱりやめましたでは怒るのは当たり前かもしれない。

 でも、実際に無理なんだよな。


 いや、待てよ。

 俺ができなくても、この男が納得する王を立てればいいのか。


「王の器であれば、俺じゃなくてもいいんですよね?」


「それならば構わんが、王の人物に妥協はできかねるぞ?」


「ちょっと相談させてもらいますね」


 俺はスセリとヤカミに相談することにした。


「誰かいい人材っているっけ?」


「どのような人材をお考えですか?」


「うーん、そうだな」


 イト国は荒廃している。

 この修羅の国の住民は、多くが海人で荒くれ者だ。

 この国を治めるには、武力に秀でたカリスマが必要になるだろう。


 それと、これは現代知識だが、古代九州は青銅器や鉄器の産地だ。

 今後はイズモと並ぶ鉄の産地になっていくはずなのだ。

 この国の王として国を富ませるには、鉱物資源についての知識がある人材がいいだろう。

 実務経験がある鉱物氏族ならなおさらいいな。


 ということは、武力に秀でたカリスマで鉱物氏族が最適ってことか。


「武力が高くて政治ができて鉱物氏族だといいな。ムル教官でも呼び寄せるか?」


「あの方は木こりなのではないですか?」


「ああ、たしかにそうだな」


 ムル教官は巨大な斧で大木を切る木こりだ。

 それと祭りの能力は高いが、鉱物には強くないだろう。


 うーん、むずかしいな。

 ヤエは手放すわけにはいかないし。

 よさそうな人材は思い浮かばない。


「おいピッキー!」


 ハッチが俺の肩を叩いた。


「俺はピッキーじゃねーよ!」


「王に最適な人物を知ってるブーン」


 ハッチがニカっと笑っている。

 つーか、こいつ俺の名前覚えてないな・・・。


「誰だよ?」


「ピッキー知りたいのか?」


「だから俺はピッキーじゃねーよ!」


「いやいやいや、そういうのいいから」


「いやマジでピッキーじゃねーし!」


 なんだか知らんが、ピッキーってマジむかつく呼び名だよまったく。


「で、王に最適な人物って誰だよ?」


「知りたい?」


 ハッチがくねくねしながら、上目使いではにかんでいる。

 いや、マジでむかつくから、そういうの必要ないわけですよ。

 なんの目的でじらしてんだよ。


「さっさと言えや!」


「俺様ハッチ様だ!」


 ハッチが腕組みで立ち上がり、胸を張ってふんぞり返っている。

 めっちゃどや顔、すごいどや顔です。


「え?」


「俺様ハッチ様だよ!」


「え? で?」


「おいーー、俺様が王になってやるって言ってんの! もう、わかんないかな?」


 ハッチが激おこな感じで怒鳴ってきた。

 王に最適な人物ってハッチなのか?


 いや、そういえばハッチって、天才と(うた)われたオロチ族8番目の首領だったな。

 オロチ族はイズモ国の古代豪族であり鉱物氏族だし、神剣アメノムラクモの製造技術は神級だ。

 それに武力も高い。

 そう考えると悪くないな。

 むしろこれ以上ないほどの王の適任者なのか?


「やれやれだぜ。まったく察しろやピッキー!」


「俺はピッキーじゃねー!」


「なに照れてんのピッキー?」


「だからピッキーじゃねーから!」


 俺とハッチはしばらく殴りあった後、痩せた男やスセリ、ヤカミとも相談し、俺をピッキーと呼ばないことを条件に、ハッチを王とすることに承諾した。


 そして二日後の正午に、ハッチを新王とする即位の儀礼が行われることになったのだった。


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