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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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トガ山の盗賊

ブックマークありがとうございます!

 役場の男に案内され、退廃した町の西側の門へ着くと、トゲ山はすぐにわかった。

 おだやかな稜線の山並みに、ひとつだけ高い山がある。


「あそこに盗賊が住みついているのか?」


「は、はい。1000人以上いると報告を受けています」


 護衛を連れて高圧的に登場した男だが、今はミナの一挙手一投足に過敏に反応して、小刻みに震えている。


 この門には門番がいないが、聞くと何度も襲撃を受けるので今は人を配置していないらしい。

 盗賊に屈する首都の門ってどうなんだ?


「軍はどうしている?」


「女王の宮殿の警備をしておりやす。それでこちらで兵を徴集して討伐に行くことになったんです」


 その徴集した兵とやらを、ミナが全員殴り倒してしまったわけだな。

 しかし、国の軍というには、あれはちょっと柄が悪すぎると思った。

 あきらかに酒盛りとかしてたしな。

 ちょっとこの国の基準はおかしいようだ。


「昼までには首領を捕まえてくる。女王との謁見の手配をしておけ」


 トゲ山までの距離を目測すると、走って30分程度だろう。

 今はまだ朝だから、昼には余裕で帰ってくることができると思う。


「行こうか」


「あい」


 荒野を走ると、あっという間にトゲ山のふもとに着いた。

 トゲ山は原生林の深い森だが、さて、盗賊はどこにいるのだろうか。


「やっぱ山頂に盗賊のアジトとかあるのかな?」


「どうでしょう? ここからはそれらしいものは見えませんね」


 スセリが山頂を見ながら答えた。


 1000人もいるならば、砦とか拠点があると思うのだが、ここから見る限りはそれらしいものは無い。

 山の裏側か森の中の見えないところにあるのだろうか。


「まあ、行ってみよう」


「はい」


 スセリに補助魔法をかけてもらって、警戒しながら森の中を進む。

 盗賊の一団がいるような痕跡は見つけられない。

 1000人もの盗賊が何度も町を襲撃したのなら、町に向けて通った痕跡があると思うのだが、そういったものが見つけられないのだ。


「おかしいな。この山じゃないとか?」


 とうとう山頂付近までやってきたのだが、盗賊のアジトらしいものはない。


「見晴らしはよいですね」


 俺たちがやってきた町、そして北には湾と小島、港が見えている。

 町から俺たちが来るのが見えて隠れたのか?


 いや、1000人もの盗賊が、男一人に女三人、そのうち一人幼女のパーティーを見て逃げるとは思えない。

 しかし、待ち伏せしているような気配もない。

 むしろ、1000人以上が住み着いているような痕跡が無いのだ。


「騙されたんだろうか?」


「嘘をついている様子はありませんでした」


 スセリの観察眼は定評がある。

 そのスセリが言うのだから間違いないだろう。

 しかし、盗賊たちはどこへ消えたんだ?


「あれ、ミナなにしてんの?」


 ふと見ると、ミナが大きな穴を掘っていた。

 そして、木や枯れ葉で掘った穴を隠している。


「落とし穴?」


「あい」


 なんのための落とし穴なんだろう?

 ミナがせがむので万宝袋(まんぽうぶくろ)からおにぎりを出してやると、ミナは落とし穴の上におにぎりを置いた。


「え? それで盗賊を捕まえるのか?」


「あい」


 無茶だw


 こんな罠にかかるやつはいねえ。

 というか、おにぎりで釣るのは無茶だろう。

 ミナの行動はほほえましいが、やはりまだ幼いのだなとほっこりした気持ちになった。


 すると、ものすごい速度で何かが飛んでくるのが見えた。


「ウキャッ」


 おにぎりを手にしようとして、落とし穴に突っ込む。

 隕石が落ちてきたかのような衝撃と音だ。


「なんですと!?」


 落とし穴って有効なのか?w


 ミナが穴の中に向けて、大剣でザクザクと突いている。


「待て待て待て待て!」


 慌ててミナを制止して穴の中を覗き込むと、そこにはおにぎりを手にした血だらけのハッチが転がっていた。


◇◇◇◇◇


「なにしてんだよ?」


「見てわかんねーのかよ? 俺様はおにぎり食べてんの」


「いや、聞いてるのはそこじゃねーよ!」


「ほしいのか? やんねえぞ」


 ハッチがおにぎりを隠すようにして、攻撃的な目で俺を睨んできた。


「いや、いらねーから! てか、もともと俺が出したおにぎりだし」


 めんどくせえ。

 ほんと、心底めんどくせえ。


 天鳥船(あめのとりふね)で別れたハッチとまさかの再会。

 なぜこんなところにいるんだ?

 てか、落とし穴に引っかかるなよ。


「なんでこんなとこにいるんだよ?」


「ん? 話せば長くなるんだが・・・」


 ハッチはおいしそうにおにぎりを平らげた。

 催促するのでもう一個出してやった。


 長い話、あれからなにがあったんだろう。

 ハッチの返答を待つ。


「・・・・・」


「おい! 早く言えや!」


「んあ?」


「話せば長くなるの続きだよ!」


「ああ、そこかよ」


「むしろそこ以外にどこがあるんだよ!?」


 ハッチの話を要約するとこうだ。


 天鳥船(あめのとりふね)で俺たちと別れた後、イズモ国を見てまわった。

 追っ手の追撃を逃れながら西へ西へと向かうと海に突き当たった。

 そして海峡を泳いで渡り、この島へと着いた。

 その頃には、人としての理性を失い、野生へと戻っていたのだそうだ。

 ミナに剣で突かれたことで我に返ったらしい。


「追っ手ってなに?」


「知らん」


「なんで野生に戻ったん?」


「わからん」


 マジめんどくせえ。

 ハッチはアホの子の表情を浮かべながら、食後のまどろみを満喫しているようだ。


「町を襲撃した盗賊ってハッチかよ?」


「そだよ」


「記憶あるんじゃねーか!」


「いやいやいや、そこはほら、流してよ」


「流せねーよ! ここが話の核心なんだよ!」


「えーー」


 どうやら、ハッチが盗賊で間違いないようだ。

 1000人というのは、ハッチの攻撃力や破天荒な行動に尾ひれがついたのかもしれない。

 そう考えれば、このトゲ山に大勢の人がいる痕跡が無いのも納得できる。


「またお会いしましたね」


 スセリがハッチに話しかけた。


「ん? ああ」


 にっこり笑うスセリに、ハッチが顔を赤らめている。


「っておい!!?」


 ハッチが飛び下がって大木の後ろに隠れた。


「なんだよ!?」


 青い顔で震えている。


「アババ、アバババババ」


「だからなんだよ?」


「アバ、ウバ」


 ハッチが指差す方向には、ヤカミが立っていた。


「わたし、ですか?」


 そうか、ハッチは女性耐性が低かったんだ。

 ヤカミとは初対面になるんだな。


 スセリに遠慮しているのだろうが、ヤカミは発言は少ない。

 しかし、そのビジュアルは本物だ。

 はっきり言って美少女パワーは限界突破している。

 実は俺もいまだにヤカミを直視できないほどだ。


 ヤカミを見るのは危険なのだ。

 たまに盗み見るだけで、心臓がバクバクしてしまう。

 そして、その様子を見つけたスセリの目は、心臓が締めつけられるほどの恐怖を感じさせてくれる。

 つまり、ヤカミを見てるとスセリが怖いってこと。

 ヤカミの描写が少ないなと思っている読者の諸君、実はそういう理由があるんだよマジ察してよ。


「あーもうめんどくせえ」


 俺は万宝袋(まんぽうぶくろ)から鉄の鎖を取り出し、ヤカミを見て固まっているハッチを捕縛した。


「ミナ」


「あい」


 そして、ミナが後ろから大剣でハッチを叩いて気絶させた。

 すかさずハッチの口に猿ぐつわをかます。


「盗賊ゲットだぜ!」


 盗賊ハッチを捕縛した俺たちは山を降りて、意気揚々と町へ向かった。

読んでいただいていつも感謝しています。

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