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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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ここって修羅の国ですか?

ブックマークありがとうございます。

 翌朝、俺たちは赤ハチマキの男の案内で、イト国の首都に向かった。

 森を抜け平野を歩き、昼前に首都入り口に着いた。

 首都への街道というには、細くて険しい道だった。

 聞くと、首都への街道はどこもそんな感じらしい。


 オートマッピングのマップで確認すると、九州北部の山の中だ。

 北には港があるようだが、まだ行っていないので黒い輪郭しか表示されていない。


「ここが一番マシな入り口だ」


 赤ハチマキの男が案内してくれたのは、首都入り口の門だ。

 環濠の向こうには、丸太の先を削ってこちら向きに立てたバリケードが見える。

 門は大きな柱を立てただけの簡素なもので、その後ろに門番の詰め所の建物がある。

 門番は立っていない。

 今までの町では、入り口の門番は武器を持って立っていたが、ここは違うようだ。


「マシ?」


 しかし、マシってなんだろう?


 赤ハチマキの男が門に近づくと、詰め所の窓からいかにも荒くれ者という感じの男が顔を出した。

 スセリとヤカミの顔を、下卑た笑いを浮かべながら見つめている。

 ぶん殴ってやりたいが、ここはぐっと我慢だ。


「5人だ」


 赤ハチマキの男が荷物から布で封をした土器を取り出して、詰め所の男に手渡した。


「行け」


 詰め所の男がぶっきらぼうに言った。


「ついてこい。さっさと通るぞ」


 赤ハチマキの男に急かされながら町の中に入った。

 聞くと、手渡していたのは酒らしい。


 この町では、なにをするにも賄賂(わいろ)が必要で、いくつかある門の中でも、この門がもっとも少ない賄賂(わいろ)で通れるのだそうだ。


 ちなみに最悪のところでは、殺されて身ぐるみ剝がれたりすることもあるという。

 なんだこの修羅(しゅら)の国は・・・。


「首都にしては荒れていますね」


 スセリが言うのももっともだ。

 家はまばらで、廃墟が多い。

 人の往来もない。

 家の奥や路地裏から、こそこそとこちらを見ている人影があるだけだ。


「本当にここが首都なんですか?」


「俺にはむずかしいことはわからん。イト国女王の都はこの町だ。町の顔役の男のところに案内する。あとはその男に聞いてくれ」


 あいかわらず人通りはない。

 物陰からのぞく剣呑とした視線に、ミナがすべてにらみ返している。

 トラブルにならないか気が気ではないが、ミナは制御不能なので仕方がない。


 町の中央に近づいているというのに、退廃した風景は変わらない。

 廃墟の割合が9割から8割に減ったくらいだろうか。

 そして、大きな建物の前に着いた。


「役所だ。俺が案内できるのはここまでだ。すまないが後は中で聞いてくれ」


「いえ、助かりました。気をつけて帰ってください。族長や村のみなさんによろしく!」


 赤ハチマキの男と握手して別れた。


「さて、行ってみるか」


「役所という雰囲気ではないですね」


 スセリが言うように、中からはまるで酒宴でもしているような騒ぎ声が聞こえている。


「イナバ国国境の町でも、これほど荒れていませんよ」


 ヤカミも美しい顔をしかめている。


 中に入ると、早速、ガラの悪い男が近づいてきた。


「税だ!」


 男が大きな手を出した。

 建物に入るなり徴税(ちょうぜい)って、なんだこの役所は?


 カエルみたいな顔をした太った男は、顔や全身に刺青をしていて、とても役人には見えない。


「なにを・・」


「税だ!」


 質問をさえぎられて、税を要求された。

 わかりやすいくらい腐敗している町だ。

 ちょっとイラッとしたが、なんとか耐えた。


「あい」


 俺は耐えたが、ミナが男をぶん殴った。

 男は激しく回転しながら飛ばされ、壁にぶち当たって止まった。

 さすがミナ・・・容赦ないな。


「って、おいミナw」


 いきなり役人を殴るとか、交渉のスタートとしては最悪じゃないか?

 奥から大勢の荒くれ男たちが出てきて、俺たちを取り囲んだ。

 酒盛りをしていたのか、手に酒杯を持っている男もいる。

 ここは本当に役場か?

 酒場の間違いじゃないのか?


 短気そうな男が、額に血管を浮かび上がらせて憤怒の形相で前に出てきた。


「おい、おまブファ」


 なにか言おうとしたがミナにぶん殴られて吹っ飛ばされた。


「ゴトーさグァ」


 次の男は天井に飛ばされた。

 さっき吹っ飛ばされた男はゴトーさんというのかもしれない。


「なガ」


「まてオ」


「ちょグッ」


 もはや男たちは逃げようとしているが、ミナが踏み込んで殴り飛ばしている。

 逃げることすら許されないハードモードだ。


 幼女が荒くれ者の大男たちを殴り飛ばすシュールな光景。

 壁際の床には、殴り飛ばされた男たちが転がって(うめ)いている。

 広い部屋には、壊れたテーブルや椅子の破片が散乱していた。


 かろうじて殺していないようだが、死んでいないだけだ。

 誰一人動くことも立ち上がることもできないだろう。

 放置してたら死ぬかもしれない。


 役場に入って一分もしないうちに、なんだこの惨状は・・・

 最初のは正当防衛とも言えなくはないが、途中からのは逃げまどうやつらを追いかけて殴ってただけだろうw


 ミナむごいよ。

 敵じゃなくて本当によかった。


「なんだおまえたちは!?」


 奥の部屋から、偉そうなハゲが護衛を連れて出てきた。


「あい」


 しかし、護衛が武器を構える前に、全員ミナに殴り飛ばされてしまった。


「待って、ちょ、ちょとマッテください」


 偉そうなハゲは、土下座して小刻みに震えている。

 もう偉そうな雰囲気は微塵もない。


 あれ、これって絵的に俺らのほうが悪者っぽくないか?


 役場に入ってきて問答無用に全員殴り飛ばしたわけだし。

 止める間が無かったのと、ミナがあまりに綺麗に殴り飛ばすので、爽快な気持ちで見守ってしまった。


 まあいい。

 このまま高圧的に押し通してごまかそう。


「おい」


「ひゃい」


 男は怯えきっていて返事すらおかしい。


「女王に挨拶に来た。案内しろ」


「あ、あなた様方は、トガ山の鬼でしょうか?」


「なんだそれは?」


「ヒッ、す、すいません。最近、西の山に住みついた盗賊で、町を繰り返し襲撃しているのです」


「俺たちはワ国イズモから来た者だ。女王のところまで案内しろ」


「女王は誰も会うことができません」


「なんだと?」


「ヒィ」


 男は小さくなって震えている。


 そういえば赤ハチマキの男もそんなことを言ってたな。

 誰も女王に会えないって。


「なんとかしろ」


「あ、あいえ、はい」


 ミナが拳を振り上げると、男は真剣な顔で一生懸命に思案している様子だ。


「トガ山の鬼を退治していただければ、報告と褒美をいただくために謁見を推薦できると思います」


 どうやら西にあるトガ山という山に、いつからか盗賊が住みついていて、町を繰り返し襲撃しているらしい。

 その討伐のために荒くれ者が集められていたようだ。

 それをミナが全員殴り飛ばしてしまったのだ。


「鬼退治する?」


 スセリとヤカミに聞いてみた。


「よいかもしれません。女王へのよい手土産になると思います」


 スセリとヤカミも賛成のようだ。


「いいだろう。トガ山に案内しろ」


 こうして俺たちは鬼退治をすることになったのだった。

いつも読んでいただいて感謝しています。

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