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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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塩も人口も交易も増やそうよ

ブックマークや評価ポイントをありがとうございます。

 翌朝、俺はヤクマ王とともに海岸に来ていた。

 ここはツシマ国でも数少ない海辺の平地だ。


 スセリたちは王城に置いてきていて、俺とヤクマ王と護衛と文官だけが朝の日差しに照らされている。


「次代の王よ。朝早くからなにをするのじゃ?」


 ヤクマ王は海に来てイキイキとしている。

 やはり海人族だ。

 がっちりとした骨太の体、浅黒い肌に渦巻き模様のような刺青が全身に施されている。

 初老とは思えないほど若々しい。


「手土産を持ってきたんです」


「手土産?」


 ヤクマ王はきょとんとした顔をしている。

 連れている文官たちは、なにやらひそひそと話をしている。

 まあ、手ぶらの俺が手土産って言ったって、なに言ってるんだと思うわな。


 ワ国連合の今後の交易を考えるうえで、海人族であるツシマ国との関係はとても重要になってくる。

 そして、ワ国の人口を増やすには、それを支える食料が必要になってくる。


 とくに冬だ。

 保存料なんかの添加物や、冷凍冷蔵庫なんかの貯蔵方法が存在しないこの世界では、雪が降り農作物が収穫できない、冬の間の食料問題が大変なのだ。

 まあ、夏も生ものが腐るから、食料保存の重要性は高い。


 そして、その食料保存で現状一番に活躍するのが塩だ。

 魚を塩漬けにしたり野菜を漬物にしたり、塩を使った保存食は、とても簡単で実用的なのだ。


 つまり、ワ国の人口を増やして国力を増強するためには、塩の増産が不可欠だってことだ。

 その塩の生産拠点のひとつとして、このツシマ国を選んだのだ。


 そう、俺の手土産とは、製塩工場を作り技術を提供することなのだ。


「ツシマ国の塩の生産を3倍にしてみせます」


「なんじゃと?」


 ヤクマ王も文官たちもとまどっている。

 昨日の宴会のときに、ツシマ国における製塩の事情は聞いておいた。

 海草を使った藻塩ってやつだ。


 現状のツシマ国の製塩はこうだ。

 ホンダワラという巨大な海草を天日で乾かして、それを焼いて水に溶かして濃い塩水を作る。

 その濃い塩水を、土器で煮詰めて塩にするのだ。

 手間と時間がかかる割に、生産量はとても少ない。


 宴会の席でヤクマ王に、塩が増産できれば助かるかと聞いたのだが、それは助かると言っていた。

 俺はそれを実現してみせようと思う。


 土魔法で地面を平らにならして塩田を作り、表面を硬い石に変えた。

 テニスコートほどのサイズごとに水路を作り、海水が流れ込むようにする。

 とりあえずテニスコート8面ぶんほどの塩田を作った。


「これは? 魔法か?」


「ええ、俺は魔力が多いんです」


 そして、塩田に砂をまいた。


「新しい塩作りの技法をおしえますので、文官の方はよく聞いて覚えてください」


 ヤクマ王も興味深そうに、俺に集中している。


「これは塩田というものです。この水路から塩田に海水をまきます」


 俺は万宝袋(まんぽうぶくろ)から桶を出して水路から海水を汲み、砂をまいた塩田の上にぶちまいた。


 ヤクマ王も文官たちも食い入るように見ている。


「こうして海水をまいて、それを太陽光と風で乾かすと、塩田の上の砂に塩が残ります。それを繰り返して砂にたくさんの塩をつけていきます」


「ふむふむ」


「そして、その塩を土器や桶に集めて、海水で砂についた塩を溶かせば、濃い塩水ができるんです。それを煮詰めると塩ができます」


 ヤクマ王はまだ半信半疑のようだが、文官たちは理解しているようだ。


「煮詰めるためにこれを差し上げましょう」


 俺は万宝袋(まんぽうぶくろ)から、巨大な鉄鍋を2つ出した。


「これは鉄か?」


「ええ、イズモの鉄で作った最高級品ですよ」


「おお」


 黒く光る巨大な鉄鍋。

 高速船レインボーを造るときに一緒に作っておいたものだが、われながらよくできている。

 文官たちからも驚きの声があがっている。


 ツシマ国の塩作りは、土器で塩を煮詰めているのだから、この鉄鍋を使えば効率は跳ね上がる。

 俺は塩田に海水をまく日数の目安などをおしえた。


「次代の王よ。感謝する。これでわれらツシマ国は一層潤うだろう。交易について話をしたいということだが、なんなりと言うがいい」


「ありがとうございます。イズモの鉄と米の交易をまかせたい」


「なんじゃと!?」


「そして、イズモにツシマ国海人のための拠点となる村を作る。そこを使ってほしい」


「ほう、見返りはなんじゃ?」


「税なども含めなにもいらない。ただし、交易の内容を報告してほしい。どこに何をどれだけ運んでいるかだ」


「そんなことでよいのか?」


「ああ、イズモは急激に発展する。その人たちを支えるためには、交易を活発化させる必要があるんだ」


「よかろう。報告のための専門の文官をつけよう」


「感謝します」


 よかった。

 これで流通の動向が把握できる。


 ヤクマ王や文官たちは、俺が損しているように思っているようだが、それは違っている。

 この世界ではまだ理解されないだろうが、情報はとても重要だ。

 それも、俺がこれからやろうとしていること、つまり規模の大きな国造りにはとくに情報が大切になってくる。


 そして、ツシマ国が豊かになり交易が活発になることは、人口が一気に増え、そして農作物の生産量や、海産物の収穫量が劇的に増えるであろうイズモ国にとって、願ったり叶ったりなのだ。


「交易のルートをおしえてほしい」


「わしらは海の向こうの半島、オキ、イズモ、イズシ、コシへ船を廻しておる」


「あれ? 南は?」


 むむ、九州と交易してるはずなんだけどな。


「南? ああ、それはわしらではない」


「え?」


「南のことはイト国の女王に聞いてくれ。南は戦乱も多くてのう。わしらは何代も前に手を引いておる。今はイト国にこのツシマ国から南の交易はまかせておるのじゃ」


 海人族はひとつじゃなかったのか。

 まあ、そう言われるとそのほうがあたりまえだな。

 イト国、なんだっけ?

 なんか聞いたことあるような気もするけど、すぐには思い出せないな。


「イト国に行くことはできるのですか?」


「できるが・・・。まあ、紹介の証の品は出してやろう」


 紹介の証の品?

 紹介状のようなものだろうか。

 ヤクマ王はなぜか苦笑いしている。


 まあ、ここまで来てるんだから行くか。

 そういうわけで俺はイト国に行ってみることにした。

いつも読んでいただいて感謝しています。

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