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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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ツシマ王との宴

ブックマークありがとうございます。

「なんて透明な海なんだ・・・」


 俺は思わずつぶやいていた。

 高速船レインボーで飛ばしていたから気づかなかったが、ここいらの海の透明度は異常だ。

 ツシマに近づいて水深が浅くなってきたら、それがよくわかるようになった。

 まるで、船が空中に浮いて見えるくらいに透明なのだ。

 先導してくれている海人族の船が、空を飛んでいるみたいに見えている。


「底を泳ぐ魚まで見えますね」


 スセリとヤカミも、船から身を乗り出して海中を見ている。

 水深10メートル以上あるだろうに、底を泳ぐ魚が見えるのか。

 くそう、楽しそうだ。

 俺は操舵輪を握っているせいで、見ることができないのがくやしい。


「しかし、これはすごい海岸だな」


 俺たちはツシマの中央のあたりの、リアス式海岸に入っていこうとしている。

 くねくねとした山の峰がそのまま沈んで海岸になったようで、とても不思議で神秘的な景観だ。

 複雑に入り組んだ緑の陸地の隙間に、水色の透きとおった海があって、そこに緑が映りこんでいる。


「美しいですね」


 ヤカミはあまり海を見たことがないようだ。

 夢中で海中を見つめている。


「魚いる?」


「います! すごくたくさんいます!」


 スセリも興奮している。

 まあ、スセリが暮らすクマノは山奥だしな。

 やはり、海が珍しいのだろう。


 自然の造形に圧倒される。

 思わずため息が出る美しさだ。


 日が沈んできて、夕日が海面に映る。

 水色と緑だった海が、赤く染まりゆらゆらと揺れて、波の先端がキラキラと光っている。

 いやほんと、文句なく美しいわこれ。


「ここからは船を乗り換える」


 海人族の男が船をつけろと合図をしている。


 木で造ってある船着場だ。

 ゆっくりと船を寄せると、ミナが船着場に飛び移った。

 船を固定して、スセリとヤカミを降ろし、最後に俺も船から降りた。


「さてとホイ」


 高速船レインボーを万宝袋に収納した。


「え?」


 海人族の男が驚いている。

 いけね、異空間収納って珍しいんだっけか。


「おまえ船を収納できるのか?」


「まあ、なんとなく」


「なんとなくって、おまえすごいな」


「まあ、すごく修行したんで」


 修行なんてしてないけど、なんとなくそう答えておいた。


「乗れ。王のもとへ連れて行く」


 小さな船に乗り換える。

 俺とスセリとヤカミとミナ、そして海人族が二人の6人だ。

 海がまるで迷路のようだ。

 ツシマは9割が山だというが、たしかに進行方向には山並みが見える。

 そして、平地はまったく見えない。


「森は深いですね」


 険しい地形に原生林が生い茂り、視界はよくない。

 俺はオートマッピングがあるから位置がわかるが、普通の人は迷うだろうな。


 俺が原生林を眺めていると、海人族の男が言った。


「ツシマにはシシがいない」


「シシ?」


「そうだ。シカ、イノシシ、サル、クマ、キツネ、タヌキ、ウサギなんかがいないんだ」


「へえ」


 本土から遠く離れているツシマは、独自の生態系を持っているようだ。

 そして、海はいつの間にか川になっている。

 ツシマはとても不思議なところだと思った。


◇◇◇◇◇


 あたりが暗くなってきた。

 海人族の男が松明を出したので、魔法で火をつけてやった。


「ここからは歩く」


 川が浅くなってきたところで船を降りて、海人族たちに先導されて歩いた。

 山へ登っていくようだ。

 獣道より少しマシな程度の道は、交通量は多くないだろう。


「ツシマ王は山に住んでいるのか?」


「そうだ。王城は禁域にある。普通の者は入れない」


 俺たちは特別という括りなのだろうか、まあワ国次期大王とワ国大王の娘、イナバ国王女、そしてミナは神(謎)らしいから、たしかにこれは超特別だろうな。


 暗い原生林の中、どんどん山を登っている。


 そしてついに質素な石の門の前に辿りついた。


「この奥だ。少し待っていろ」


 男が門をくぐってその奥にあるであろう王城に入っていった。

 門からのぞいてみると、城というより洞窟だった。

 しばらく待っていると男が出てきた。


「王が会う。ついてこい」


 門をくぐって、洞窟に入る。

 自然の洞窟に人が手を加えたもののようだ。

 一定間隔ごとに灯りがあって明るい。


「いろんな王城があるのですね」


 スセリも感心している。


 メディアもインターネットもないこの時代では、地域差がとても大きい。

 下手すると500年くらいの差があるのではないだろうか。

 文化の程度も低いから、一人の天才の閃きで、その地域の文化が一気に進んでしまうのだ。

 ノキの町がちょうどそんな感じだ。


 まあ、現代でも南米の未開の地と先進国では、ものすごい文明格差があったから、それを考えるとそんなに不思議なことではないな。

 ただ、この世界の日本では、国内での格差がものすごいことになっているということだ。

 それはそれでおもしろいと思うけどね。


「入れ」


 広い部屋に案内された。

 テーブルの向こうに、浅黒い肌の全身に刺青のある、白髪でがっちりした初老の男が立っていた。


「ヤクマだ」


 人なつっこい笑顔で手を差し出してきた。


「ワ国イズモの大波武一(おおなみむいち)です」


 ごつい手を握り返す。

 潮を浴び続けてきた海の男の手だ。


「ワ国スサノオ大王が息女、ワカスセリヒメにございます」


 スセリがうやうやしく頭を下げる。


「イナバ国王女、八上姫(やかみひめ)と申します」


 ヤカミの美貌に、俺たちを連れてきた男が見とれている。


「ミナ」


 ミナが元気に自己紹介をした。

 ほほえましい。


「タケミナカタ様か。よくぞ帰って来られた」


 ヤクマ王の顔がいっそう柔和なものになった。

 いやしかし、ミナって一体何者なんだ?

 興味津々なんだけど、俺たちが連れてきてるのに聞くのはおかしいよな。


「して、此度はいかようにて参られた?」


 ヤクマ王の眼光が鋭くなった。

 やはり王だ。

 一気に雰囲気が変わった。


「こちらのスセリとヤカミを娶り、次期ワ国大王になることが決まりました。それで、ご挨拶に参りました」


「ほお、次期大王様になられるか。それはめでたきこと」


 ヤクマ王がじっと俺を見つめている。

 値踏みされているようだ。


「フッ、スサノオ大王もよき婿を見つけられた。ツシマは国をあげてお祝い申しあげる」


 ほっ、なんとかお目にかなったようだ。


「さしたる馳走はできぬが、食べて飲んでくだされ」


 ヤクマ王が合図をすると、テーブルの上に料理と酒が運ばれてきた。


「あい」


 ミナがさっそく酒を飲み干している。


「これは?」


「干しアワビのスープですじゃ。おかわりもありますぞ」


 うまい。

 なんてうまみだ。

 この濃厚なうまみと歯ごたえ、こんなのはじめてだ。


「このパンもおいしいですね」


 蜂蜜がたっぷりかかったパンもおいしい。

 食文化も本土とは違うようだな。


 飲んで食べて、楽しく盛り上がった。

 交易についての話がしたかったが、ヤクマ王も酔っているようなので明日にすることにした。


 ツシマ国一の酒豪がミナと呑み比べをしていたが、やはりミナに勝つことはできなかった。

 ほんと、ミナって身体が小さいのに一体どうなってるんだろうな。


 そして長い宴会が終わった。

読んでいただいて感謝しています。

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