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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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古き神とかでかすぎるって

ブックマークありがとうございます!

「海神じゃん」


 振り向いた俺はあっけにとられた。

 海面から20メートルはあるだろう龍が、静かに俺を見下ろしていた。


 もう少し小さかったら反射的に攻撃したのだが、あまりにでかくて予想外で、つい驚いて固まってしまった。


神龍(しんりゅう)かよ」


 ワニのような巨大な口、大きな目玉には知性が宿り、頭頂部には二本の角が天に伸びている。

 蛇のような胴の途中にある腕は、身体に対しては小さいが鋭い爪が光っている。

 青空と青い海、でかい龍。

 なんだよこのシチュエーション、まるで意味がわからない。

 まあ、突然に攻撃してこないだけマシな状況か、いやでもこれどうしよう?


「あの、こういうの海にはよくいるわけ?」


 海人族に聞いてみると、首をぶんぶんと横に振っている。


「遠い国の伝説として聞いたことはあるが、見たのははじめてだ」


「スセリやヤカミは知ってる?」


「いえ、わかりません」


 龍はただこちらをじっと観察しているようだ。


「じゃあ、みなさん帰りましょうか」


 そっと帰ったら見逃してくれないだろうか?

 わずかな期待で行動に移す。

 そう、つまり逃げるのだ!


 すると、龍の口が微かに動いた。


「小さき者よ!」


「うぁお! しゃべった!」


 龍がしゃべった。

 腹の底まで響く重低音、落ち着いた声だが威圧感はすごい。


「わかるのですか?」


 スセリが聞いてきた。

 どうも、俺しか言葉がわからないらしい。

 翻訳の祝福の効果で、この龍の言葉がわかるようだ。


「我が名は神龍(しんりゅう)、おまえはどこで龍言語(ドラゴンロア)を覚えた?」


 ほんとに神龍(しんりゅう)かよ。

 そのまんまじゃねーか。


 敵意は感じないが、逃げられそうにはなくなった。

 会話か、俺ってコミュ障なんだけどな・・・。


 海面から20メートルの高さに直立する蛇のような身体、硬そうなこげ茶色の(うろこ)に覆われた蛇体は、直径6メートルはありそうだ。

 その蛇体の上には、神社の彫り物にある龍のような頭がついている。

 ワニのような口は、一軒家を丸ごと飲み込めるほど巨大なものだ。


 こんなの日本にいたのかよ?

 いや、学校でも習ってないし、ありえないだろ。

 龍って伝説上の生き物じゃないの?

 想像上の生き物、幻獣(げんじゅう)ってやつだよな。


 龍言語(ドラゴンロア)

 いや、そんなの全然知らんし。


「わかんないっす」


 俺は青ざめながら答えた。


 蛇の洞窟の大物主もでかかったが、これはその倍はでかい。

 (ツノ)とか生えてるし、マジ怖いんですけど。


「むう?」


 神龍が顔を寄せてきた。

 思わず少し下がる。

 スセリとヤカミが俺の腕を掴む力が強くなった。

 ミナだけが動じていない。


 俺のすぐ前に大型トラックのようなサイズの顔がある。

 鋭い牙は俺の胴より太い。

 この新造船レインボーごと食べられたとしても、とくに驚かないほどの大きさだ。


「おまえたちはミコトか? それにそこの娘、スサノオの子か?」


「スセリはスサノオ大王の娘だ」


「わたしのことを聞かれているのですか?」


 スセリが小声で尋ねてきたので、そうだと小さく返した。


「スサノオ大王を知っているのか?」


 俺は精一杯の虚勢を張っている。

 なめられないようにだ。

 まあ、その考え自体が小さいとも言えるが、みんなを安心させるためにも強い態度で臨もう。


「やつは海の王に()えられた忌々しい男。海を与えられながら海を統べず、天に昇って地に堕とされた。数多(あまた)に別れ消えゆく者だが、そうか、おまえがスサノオの後継か」


 神龍の目がギョロリと動いた。


「ああ、いずれ大王となり豊かな国を造るつもりだ」


「ハハハ、まったく(かな)わんな。我ら古き神の時代も(つい)仕舞(しま)いというわけか。二柱(ふたはしら)の神より別れ出でて、三貴子(さんきし)により栄えるか。まあ、仕方あるまい。流れには逆らえぬ」


「流れとは?」


「その流れを(にな)うミコトたちよ。ヒトが世をどう固めるのか、導いてみせるがよいわ。わしの力も弱くなり眷属も智慧を失くしていく。もはやヒトとは交わらぬ」


「ヒトが世を固める?」


「そうだ。我らは個ではヒトを凌ぐが、ヒトは数で我らを凌ぐ。ヒトの増える力には敵わぬ。そしてヒトの想念の力が世の(ことわり)を固めるのだ」


 うむ、わかるようなわからないような、どういうことだ。

 ヒトが増えて、想念の力で世の(ことわり)を固める?

 イメージと魔力で魔法を実現するように、想いの力が世界を作っていくということか?


 なんか哲学や物理学でそういう研究があった気がするな。

 叡智の祝福の並列思考で、考えさせておこう。

 もちろんメインの思考からは切り離しておこう。

 頭の中がむずかしいことでいっぱいなのはいやだし。


「我が眷属を撃退するのは何者ぞと出てみたが、ミコトが揃っておるとは驚いた。盟約により我はミコトには手が出せぬ。国造り楽しみに見ておるぞ」


 神龍(しんりゅう)はそう言うと、大きな渦を作りながら海中に消えていった。


 俺は気が抜けて座り込んだ。


「マジびびったわ」


「どういう話だったのでしょうか?」


 スセリが聞いてきた。

 俺が簡単に説明すると、スセリは考え込むような仕草を見せた。


「ツシマに向かっているのか?」


 助けた海人族の男が声をかけてきた。


「ああ、ワ国イズモの大波武一(おおなみむいち)だ。ツシマ国王に会うための先触れも出している」


「わかった。先導しよう」


 予定外の神龍との遭遇に驚いたが、俺たちは当初の予定どおりツシマに向かうことにした。

 

いつも読んでいただいて、とても感謝しています。

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