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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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やっぱりヤエはできる女だ

ブックマークありがとうございます!

 アマの港について係留している船のところに向かう。

 船のところには、日焼けした刺青の大男が番をしていてくれた。

 海人族だ。


「ご苦労様!」


 俺が言うといぶかしげな顔をしていたが、ミナを見て頭を下げている。

 これはどういうことなんだろう?


 すると最初の担当官がやってきた。


「出航するのか?」


「ああ、島のまわりを回ってからミホへ行く」


「ツシマではないのですか?」


 スセリが聞いてきた。


「ツシマに行く予定だったが、フィッシュマンの襲来で予定が変わった。ミホでヤエたちに対策を指示しておく必要があるんだ」


「わかりました」


 担当官は支払った金を返そうとしてきた。

 ミナからお金は取れないと言う。


「払うのはミナじゃなくて俺だから、遠慮なくもらってくれ」


 そう言って押し付けると、渋々と金を袋に入れていた。


「ミナは何者なんだ?」


「タケミナカタ様は我らが守り神だ。証の宝剣を持っておられる」


 ミナの家の家宝だという剣は、海の一族の守り神としての証ってことらしい。

 まあ、たしかにミナの武力は高いし、これからもどんどん強くなっていくだろう。

 暇を見つけては稽古をしてるしな。


「そういえばフィッシュマンって知ってるか?」


「フィッシュマン?」


「頭が魚で人の形をしている魔物だ。槍やこん棒を持ってたな。青くて小さいやつと、黒くてでかいやつがいた」


「知らんな。海のことならだいたいわかるが、そのフィッシュマンとやらは聞いたことがない」


「そうか。なにかわかったらアマ国王を通じてワ国の使者に伝えてくれ」


 俺はそう言って担当官に金を渡した。


「よし、レインボー出航だ!」


 俺は新造船レインボーに乗り込み、ミホを目指して出発した。

 スセリ、ヤカミ、ミナが乗っている。

 ルウは村に残ることになったのだ。

 港から手を振っている。


 陸が小さくなっていく。

 フィッシュマンの調査のため、オキ島のまわりを船で廻ることにした。


「綺麗な海ですね」


 屋根のある部分から出て海を覗き込んでいるスセリは、顔が影になるように手をかざしている。

 夏の終わりとはいえ、まだまだ日差しがきついのだ。


 ヤカミは静かに席に座っている。


「すごい崖だな」


 島の絶壁を見ながら海を廻りこんでいく。

 現代ではオキは山陰ジオパークに認定され、観光とレジャーの島になっているが、たしかにこれはすごい景観だ。


 村の海岸が見える。

 今は誰もいないようだ。


「フィッシュマンの痕跡ってなにもないな」


 あたりの海域をくまなく調べたが、なんの痕跡も見つけられなかった。

 しばらく調べたが、あきらめてさらにオキ島を廻り、なにも見つからなかったのでミホの岬を目指すことにした。


☆☆☆☆☆


 ミホの岬についた。

 新造船レインボーは、とても快調で航海は快適だった。

 船着場に船を係留して、ヤエに会うために役場を目指した。


「御館様、早いですね」


「いや、オキから退()き帰してきたんだ。ちょっと問題が起きてね」


 ヤエの青い髪はとても目立つ、そしてもっと目立つのはその胸だ。

 ついつい目を奪われていると、横からスセリの舌打ちが聞こえた。

 やべえ、気をつけろ俺。


「ヒナはどこにいる?」


「研究棟にいますね。というか、研究棟から出てきませんね」


 役場の建物の隣に、研究棟が建てられたらしい。

 なにを研究しているのかは、よくわからないらしい。


「じゃあそこに行こう」


 俺たちは連なって研究棟に向かった。


「おやおや、次期大王様ご一行じゃないか。なにが起こるのかな?」


 紫の髪のヒナがおどけている。

 ホヒの娘だということだが、たしかにホヒもユーモアがあるよな。

 頭がよいから洒落が利いているのかもしれない。


「こいつを見てくれ」


 俺は万宝袋(まんぽうぶくろ)から、フィッシュマンの死体を3体ほど出した。

 研究用に焼かないでとっておいたものだ。


「こ、これは・・・」


「わかるのか?」


「まったくわかんないわよ。なにこれ?」


「わかんないのかよ!?」


 ヒナですらわからないようだ。


「オキの村を集団で襲ってきた魔物だ。200体くらいいた。村の長老や港の海人族に聞いたが、まったくはじめてのことらしい」


「生物としては破綻(はたん)してるわね」


 ヒナがフィッシュマンの死体を調べている。


「黄泉の影響を受けてるのかも」


「黄泉?」


「イビシの暴動があったでしょ。あれって黄泉の穴が開いていて、それに影響を受けた地霊が炎の兵になったみたいなのよね」


「黄泉の穴?」


「本来はこの世界と黄泉の世界は別世界であってつながっていないの。それがどうもほころんできてるみたいなのよね」


「黄泉の世界とは?」


「あら、あなたは次期大王でしょ? なにも聞いてないの?」


「なにを? 聞いてないと思うけど」


 考えてみたが、それらしいことをおしえられた覚えは無い。

 殺されかけた記憶とか、思い出したくない恐怖の感情だけが頭をよぎった。


「黄泉の国を母神から受け継いだのがスサノオ大王よ。クマノのあたりに入り口があるらしいわ。そこから黄泉が溢れないように防いでいるのがスサノオ大王のはずよ」


「なんですと!?」


 それでクマノの天宮山(てんぐうさん)山頂に天鳥船(あめのとりふね)を浮かべているのだろうか。

 いや、待てよ?

 そういや今って天鳥船(あめのとりふね)が浮かんでなかったな。

 ひょっとして、スサノオ大王が出かけているから、黄泉の封印みたいなものが緩んでいるのだろうか?

 まあ、これはいくら考えてもわからんな。


「スセリ知ってる?」


「わかりません。父は仕事のことはあまり語りたがりませんから」


 仕事以外のことは語るのかよとつっこみかけたが、話がそれてしまうのでやめておいた。


「これ、フィッシュマンっていうの? このフィッシュマンも黄泉の影響を受けているのかもね。海中に黄泉の穴が開いたのかも。そこに魚の群れがいて、まとまった数のフィッシュマンになったのかもしれないわね」


 ヒナの推論は当たっているような気がする。

 それにしてもヒナの頭の回転はすごいな。

 叡智の祝福を受けている俺から見ても、すごいなと感心させられる。


「で、どうすればいいの?」


「ひととおり調べてみてくれ。あとはヤエとの話だ」


「あいよ」


 ヒナはぶっきらぼうに頷くと、早速、フィッシュマンの解剖をしはじめた。


「ヤエ、各村の若者を二名ずつ、教育していくことにする。オキ島は手配した。ノキで農耕をおしえるが、来年の春まではヨドエの修練場で戦士として鍛えようと思う」


「ワ国連合の村から若者二名ずつを集めるということですか?」


「そうだ。戦士として鍛え、農耕をおしえ、オウで文字をおしえてから村に返してやるんだ。そして村で農業の指導者になってもらう。これで一気に農業生産力を上げることができると思う」


「こちらから指導者を送り込むよりも、村の若者を指導者に育てることは多くのメリットがありますね。さすが御館様です」


 事代主であるヤエの理解は早い。

 さすが頼りになる副王だ。


「先触れも出してあるし、俺たちはこのままツシマに向けて出航する。後は頼んだ」


「わかりました。ノキに赴いて手配しておきます」


 ヤエはできる女だ。

 信頼できるし安心してまかせることができる。

 大事にしなければならない。


「よし、行こう」


 俺たちは港でレインボーに乗り込むと、ツシマを目指して出航したのだった。

読んでいただいて感謝します。

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