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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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驚きっぱなしのガイムさん

ブックマークありがとうございます!

 翌朝、俺たちは海岸を調べていた。


「とくになにもないな」


 フィッシュマンたちが襲来(しゅうらい)したとされる海岸だが、とくに変わったものもない。

 船も無いし、やつらは泳いできたとでもいうのだろうか?

 調べてもわからないので、一旦、村に戻ることにした。


「ムイチ、いや、次期大王様、本当に感謝している。ありがとう」


 族長のキクムさんが礼を言ってきた。


「いやほんと、なんてことないんで。気にしないでください」


 あまりに感謝されると、なんだか恐縮してしまうな。


「またいつでも寄ってくれ」


「はい、それとお願いがあるんです」


「なんだ?」


「村の若者を二人、本土で教育したいと思います」


 俺の提案にキクムさんは一瞬とまどったが、すぐに聞き返してきた。


「教育とは?」


「稲作をおしえます。一年はかかると思いますので、人選をしてアマ王城に送ってください。そこから本土に送るように手配しておきます」


 俺は来年度、ノキで本格的な米作りをはじめる。

 そして、そこに村々から若者を集めて、米作りなどをおしえるのだ。

 その若者たちが技術を習得したら、村に帰って村の農耕を指導する。

 こうして、この国を豊かにしていこうと思っている。

 この村には、とくに思い入れがあるし、豊かになってもらいたい。


「差し出せるものはないぞ?」


 キクムさんが申し訳なさそうに言った。

 ワ国に所属してまだ日が浅いこの村は、はっきり言ってとても貧しい。

 狩猟採集で清貧に生きてきたのが、この隠れ里なのだ。


「もちろんなにもいりませんよ。豊かになってから税で返してください」


「わかった。甘えさせてもらう」


 俺とキクムさんはがっちりと握手をした。


「ムイチよ。豊かさを履き違えるでないぞ」


 婆さんがやってきて言った。


「ええ、むずかしいけどがんばりますよ」


「人は貧しければ助け合うが、富の蓄積(ちくせき)は争いを生む。年寄りの言葉じゃが大切にしておくれ」


「そうですね。よく考えてみます」


 たしかに物質的な豊かさというのは、よいことばかりではない。

 豊かになって富を蓄積できるようになると、富を持つ者と持たない者の貧富の差が生まれる。

 そして貧富の差は争いを生むし、多くの戦争は富の奪い合いなのだ。


 ただ、この世界はすでに富を知ってしまったし、地域差はあるが戦乱も生まれている。

 俺はまずは飢えを無くし、人口を増やそうと思っている。


 豊かさを求めながら足るを知るような社会の実現、それはとてもむずかしいと思うが、2000年先の知識を持つ俺だ。

 叡智(えいち)の祝福もあるし、失敗はするだろうけど、そこから多くを学び取って前進できると思う。


「キクムさん、婆さん、また来ます。みなさんによろしく伝えてください」


 ミナの命令で、家臣団もこの村に残ることになった。


 俺たちは村を出てアマ王城に向かった。


☆☆☆☆☆


 アマ王城では、駐屯しているワ国軍の将に会った。


「村に魔物の襲撃があった。殲滅したが、ワ国軍兵士を20名ほど駐屯させてほしい。費用はすべて国庫から出す」


「わかりました」


「それと、オキの村のすべてから若者を2名ずつ集めて本土のノキ町に送ってくれ。そこで一年間の研修で稲作をおしえる。この費用もすべて国庫から出す」


「わかりました」


 ものわかりのいい将兵で助かった。

 新しく併合(へいごう)した島だからなのか、とても優秀な人材が送り込まれているようだ。


 アマ国王に挨拶をして、アマの町の武器屋ガイムさんのところに寄った。


 島を出る前に寄る約束をしていたからだ。


「来たか大王」


「まだ大王じゃないですから」


「ほら、これは姫さんたちにだ」


「うお?」


 スセリには水色の宝石がついた杖、魔力を高める効果があるそうだ。


「ありがとうございます」


 スセリがにこにこと笑っている。


 ヤカミには赤い宝石がついた杖で、これはとくに火魔法が強くなるらしい。


「ヤカミって火魔法が得意なの?」


「そうですよ。イナバ国では一番でした」


「はっは、嫁のことを知らないのか?」


 ガイムさんが豪快に笑っている。


「ガイムさん、少し稽古をつけてもらえませんか?」


「あん? 俺は膝がいかれてるし稽古になるかわからんぞ?」


「俺の強さもたしかめてほしいんです。自分では判断できないので」


「そういうことか。まあ、それくらいならやってやろう」


 ガイムさんは店を閉めて、中庭に案内してくれた。


「ほらよ。木剣でいいか? まあ木剣でも打ち所が悪ければ死ぬがな」


 ガイムさんは笑っているが内容はダークだ。


「よし、来い」


 合図とともに踏み込んで、まずは頭を狙ってまっすぐに打ち込む。

 ガイムさんが怖い(かお)になった。


「探るな! 俺は膝壊してて長時間は持たないんだから、最初から全力で来い」


「はい」


 フェイントを織り交ぜながら連撃を叩き込むが、すべて簡単にいなされる。

 さすが元イナバ国最強の武人だけあって、すさまじい技量だ。

 膝をかばいながらのこの動き、目も勘もまだ錆付いていないようだ。


 無呼吸の連撃の終わり、一呼吸ついたところで、俺の喉元にガイムさんの木剣の剣先があった。


「終わりだ」


「あっ」


 やられた。

 さすがに老獪だ。


「ふぅ、もうおまえとは二度とやらないぞ。勝ち逃げさせてもらう」


「そんな、また稽古をつけてくださいよ」


「おまえは俺のケガを労わって全力じゃなかっただろう? それに次やったら俺では相手にならないからな。さっきのが最初で最後の俺の勝ちの目だったのさ」


「くう」


「おまえは甘いな。その甘さがおまえを死地に追いやるかもしれんが、その甘さがおまえのよさかもしれん。まあ、おまえは強いぞ。今のイナバ国一よりも強いだろうな」


 観光主体のイナバ国では、あまり武は重視されていないのかもしれない。

 まあ、強いと認められたことは素直に喜んでおこう。


「そうだ。剣を見せてみろ。どんな獲物を使ってるんだ?」


「はい、これです」


 俺は生太刀(いくたち)を渡した。


「なんだこれは!?」


 ガイムさんの顔色が変わった。


生太刀(いくたち)です。スサノオ大王にもらいました」


生太刀(いくたち)だと!? 神話級武器(ミシカルウェポン)じゃねぇか? 存在してたのかよ?」


 ガイムさんは食い入るように剣を見つめている。


「それとこんなのもあります」


 生弓(いくゆみ)を渡す。


「そんなばかな!? なんで?」


 ガイムさんの目がまん丸だ。


「あとこれ」


 天地理矛(てんちことわりのほこ)を渡す。


「こ、これは?」


天地理矛(あめつちのことわりのほこ)です。カワイキュンに造ってもらいました」


「カワイキュンだと? 神の(たくみ)じゃねーか!?」


 武器屋のガイムさんには、俺の持っている武具の価値がわかるのだろう。

 この驚きっぷりは並大抵のものではない。


「カワイキュンはもう武具は造っていないと聞いたが? てか生きてるのか? 神代の時代の神だぞ?」


「え? 普通にカフェやってましたけど?」


「カフェぇ!?」


 ガイムさんは頭を抱えている。


「わかったムイチ。いやよくわからんが、意味がわからないってことはよくわかった。おまえの武器は最強のものだ。それらに並ぶものは十種(とくさ)神宝(かんだから)の宝剣などごくわずかだろう」


「はあ」


「おまえの技量にその神級武具(ゴッズウェポン)たち、その組み合わせでは敗北はあるまい。いや、本当にいいものを見せてもらった」


 ガイムさんは満足そうないい表情になっていた。


「おまえがいつかヒボコを倒せ。俺の仇をとってくれ」


「がんばってみます」


 強いやつはいやだが、空気を読んで答えてみた。


「それじゃあ、また寄りますね」


「ああ、いつでも来い」


 俺たちは店を出て、アマの港に向かった。

いつも読んでいただいて感謝しています。

評価ポイントを入れてくださったみなさん、とてもうれしいです。

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