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ここは。
ここは教室だ。学校?中学校、制服着てる。何年生の時?恋の痛みなんて、中学生で?初恋ってどういうこ「高田さん」
息が止まるかと思った。むしろ止まった。
「はい、なに?」
中学生の時ってどーいう喋り方してたっけ。
「三橋君が呼んでるよ、階段下。」
階段下。三橋君。――やられた!アイツ……名前もわかんない怪しい奴め!名乗りくらいしないと罵れないじゃないか!階段下。こんな急に。こんな急に「初恋の痛み」と対峙しろって?
「高田さん、どうしたの?顔色、悪いよ。」
心配させてしまった。年下の中学生に。いや、私も今は中学生なんだった。
「だ、いじょぶ、ごめんね。ありがと」
三橋潤君。1週間前からの私の彼氏。初恋の痛み。些細なことだ。でも、確かに、私の痛みはこの瞬間にある。
「三橋君、ごめん、待たせたね。」
「ううん、大丈夫。急にごめん。」
三橋君は、サッカー部のゴールキーパーをしている。けど、ゴツくなくて、勉強も出来る。クラスは隣だから、話すときは廊下か、階段下か。1週間前に彼から告白してくれて、嬉しくて、付き合うことになった。
「えっと、呼び出しておいて、大したことじゃないんだけど…」
「大したことなんて、関係ないよ。こうやって、話せるだけでも、嬉しい。」
素直な気持ちを言ったら真っ赤になって照れられた。そうだ、私、こんなキャラじゃなかった。私、高田沙耶は、クラスメイトに苗字でさん付けで呼ばれるくらい大人しくて、でも仲良しの友達はいる。勉強は高校に入ってから成績が上がるんだからこの時点ではそこそこ。吹奏楽部で、みんなに混じってクラリネットを吹いている。上手じゃないけど下手でもない。
そうだ、こんな子だった。だから、彼氏が出来るなんて、好かれるなんて思わなくて、それで――
「あのさ、今日、一緒に帰りませんか。」「え?でも、吹奏楽部終わるの遅いよ?」「待ってるから。」「でも、三橋君の家って学校の近くだよね、私、駅の近くだから遠いし」「大丈夫だから」「え、で、でも急だし、今度にしない?」「えっ今日だめ?」「でも」階段の上のほうから、女子の声。「潤が誘ってるんだからさあ、素直に帰ればいいじゃんね!」「ほんと、でもでもばっかり!」男子の声もする「はああ~~なんで付き合えてるんだか!」ぎゃはは、と笑い声がする。私は真っ赤になって、「三橋君の、友達…?」って聞いて、からかわれたんだって恥ずかしくなって、涙目で逃げ出すんだ。
――弱い。弱すぎるよ私。でもこれがきっかけで疎遠になってそのまま自然消滅ハイ卒業~みたいなもんだから、確かに「初恋の痛み」だ。
そう、ぼんやりしていると、三橋君が私のおでこに手を当ててきた。
「み、三橋君…!!」
「あ、熱は無いね。急にぼーっとするから、どうしたかと思って。」
三橋君がニコっと笑う。初めての笑顔だ。嬉しい。私もつられて口角が上がる。
びくっと、驚かれてしまった。
あれ、私って笑わない子だったっけ、関係ないや、笑っとこう。
「あのさ、今日、一緒に帰りませんか。」
ああ、言われた。照れてくれてる。一生懸命誘ってくれたんだな。そうだ、確か三橋君も私がはじめての彼女だったはずだ。あの時も、こうやって言ってくれたんだろうな。私、下を向いてたから、あなたの顔なんて、見てなかった。もったいなかったなぁ。しかも走って逃げて、あなたの気持ちなんて考えてなさすぎだよね。ああ、こんなに好いてくれてたんだ……「ちょっと、潤が誘ってるのにだんまりって意味わかんなくない?!」「ほんと、とろくさ!」男子の声もする「はああ~~なんで付き合えてるんだか!」ぎゃはは、と笑い声がする。
しまった、やっちゃった!すぐ答えようと思ってたのに!




