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後篇*偶然?

 突然片思いの彼女と話せるチャンスがやってきた少年は、果してそれを活かせるのでしょうか?

 せっかくのチャンスなのに、僕は迷っていた。彼女が褒めてくれたことに素直に喜んで、それに飛びついて話せばいいのに、その簡単な”素直”が出来なかった。心に酷く引っかかったのだ。何故なら、それはついさっき僕がポロリと口に出した願い通りだったからだ。それを彼女が聞いていて、僕をからかってやろうとして言ったことではなかったろう。彼女には僕の呟きが聞こえていたはずもなければ、それを誰かが伝えたとも思えない状況だ。なのに、何だ?このウマすぎる話は。何かやけに不自然過ぎるんだ。偶然と言うには出来過ぎている。だから、理由もなく僕は怖くなった。いや、訳が分からなかった。これは罠だとも思った。どういう罠かは分からなかったが、浮かれて飛びついたら後で酷い目に遭うと思った。

 春菜さんは、まるで僕にチャンスをくれているかのように数分間そこにいてくれていたが、僕を初め誰も”褒め”に反応を示さないことに諦めてか、結局そこから先の話を何もしないまま、一緒にいた友達と教室を出て行った。僕は、罠にひっかからなくてこれでよかったんだという気持ちと、せっかくの大チャンスだったのにという後悔の狭間で揺れていた。

 それから再び片思いの日々が続いた。何の進展もなく、ただ僕が一方的に思い焦がれる日々が。彼女は僕にとっては眩し過ぎる存在で、友達からはよく”春菜、春菜”と呼ばれる人気者だった。冴えない僕とは、絶対に釣り合わな過ぎた。そんな思いのまま時は過ぎ、2学期の期末テストが終わって、冬休みまで後は修学旅行を残すのみとなった。

 修学旅行は3泊4日の九州旅行。その旅行でもし、又彼女と話せるチャンスがあったら、今度こそ思い切って話してみようとわくわくもしていた。バスの中で歌を歌って自分の殻をやぶって人気者になってやろうと、旅行前に家で流行りの歌を練習したりした。そうすれば彼女に近づけると思った。そんな思いとは裏腹に何もないまま旅行は2日目の観光を終えて、宿へ向かうバスの中で有志が歌を歌った。だが、僕はそれにも踏み出せずに迷い、挙句僕が練習していた歌を別の男子が歌ってしまった。すっかり、出番を失った。結局前半は何もなかった。

 そして3日目、それは起こった。忘れもしない名城熊本城。彼女以外に大した興味を感じなかった僕は、その観光自体に何の想い出もない。問題はそれを見終わってバスに戻る道でのこと。唯一僕の興味の的春菜さんは、相変わらず大勢の友達に囲まれて人気者だった。もうそれは息苦しいくらいに強大な差を感じた。ちょっとでも、この冴えない僕の為にレベル下げてくれないかと祈った。例えば、転んで大恥でもかいてくれれば、少しは僕の手が届く存在になるのにと思った。そう、それはそう思って僅か数十秒で起こったんだ。本当に並んで歩いていた彼女が、僕の目の前で転んだ。それも、見事に真ん前にばったりすってんと派手にこけたんだ。もうまさにそれは見事な転びっぷりだった。さすがに自分の目を疑ったが、

 「春菜!」

 「春菜、大丈夫?」と、彼女を取り巻く友達の声が、それは幻でないことを物語っていた。そして当の彼女といえば、もう大衆の面前での大恥に、どう対応していいのか困っているようでもあった。後から思えば、その時大袈裟でもなんでもいいから、”大丈夫か?”とか言って心配そうに駆け寄っていればよかったのかもしれない。でも僕はそれを何一つしなかった。

 「恥かくの慣れてるし。」友達に囲まれて、彼女は苦笑いしていた。

 まずは、ご愛読いただきましてありがとうございます。この話は、実は人の投稿小説を見たことをきっかけに書いたんです。でも、内容は真似ではありません。何故なら、99パーセント事実を記憶をたどって書いたものだからです。1パーセントは、まあ記憶違いもあるだろうからという謙虚な数字です。

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