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第12話「逆転の切り札と、悪党たちの断末魔」

 ヴァーミリオン王国との交易を成功させた俺は、アークライト王国の王都へと向かっていた。

 目的は、今回の事件の黒幕であるバルフォア子爵とゴードン商会の悪事を国王に直接訴えるためだ。


 もちろん、ただ訴えるだけでは彼らのような権力者を裁くことは難しいだろう。だから俺は決定的な「切り札」を用意していた。


「カイ様、本当に大丈夫でしょうか……。相手は大貴族と大商人ですよ」


 王都へ向かう馬車の中で、リナが心配そうに言う。


「大丈夫だ。正義は必ず勝つ。……まあ、勝たせるための準備は抜かりなくやってきたさ」


 俺が用意した切り札。

 それはバルフォア子爵が雇った偽山賊の一人を捕らえていたことだった。

 山越え作戦の裏で、俺は領地に残った自警団と連携し、街道に残った敵の動向を探らせていた。そして見張りの一人を生け捕りにし、すべての計画を白状させていたのだ。


 彼の証言と、ゴードン商会からの不当な取引停止を通知する手紙。

 これらがバルフォア子爵と繋がっている動かぬ証拠となる。


 王城に到着した俺は、父を通じて国王への謁見を求めた。

 謁見の間にはアークライト王国の国王と居並ぶ重鎮たちの姿があった。そしてその中には、何も知らずにふんぞり返っているバルフォア子爵とゴードン商会の会頭の姿もあった。


「面を上げよ、アースガルドの三男坊」


 国王の厳かな声が響く。


 俺はまずアースガルド領の農業改革の成功と、ヴァーミリオン王国との交易が成立したことを報告した。

 その報告を聞き、バルフォア子爵の顔がみるみるうちに歪んでいく。


「そ、そのようなこと、ありえません! 陛下、こやつの戯言をお聞きなさいますな! ヴァーミリオンとの交易など、我が国の法を無視した裏取引に違いありません!」


 バルフォア子爵が慌てて俺を非難する。ゴードン会頭もそれに同調した。


「いかにも。アースガルド領の作物は害虫被害で品質が劣悪なはず。そのようなものを大国ヴァーミリオンが買うはずがございません」


 よし、食いついてきたな。


 俺は待ってましたとばかりに懐から証拠の品々を取り出した。


「では、これはどう説明されますかな?」


 俺は捕らえた男の宣誓供述書とゴードン商会の手紙を高らかに読み上げた。

 害虫をばらまいたこと、不当な取引停止を行ったこと、街道を封鎖して交易を妨害したこと。すべての悪事が白日の下に晒された。


「なっ……! で、でっち上げだ! そのようなこと、断じてしておらん!」


 バルフォア子爵の顔から血の気が引いていく。

 ゴードン会頭はもはや顔面蒼白で、わなわなと震えている。


「では、証人にもご登場願いましょう」


 俺が合図をすると謁見の間の扉が開き、捕らえていた偽山賊の男が兵士に連れられて入ってきた。彼はバルフォア子爵の顔を見ると、観念したようにすべてを話し始めた。


「……以上の通り、我々はすべてバルフォア様のご命令で……」


 もはや言い逃れはできない。

 謁見の間は静まり返っていた。国王は燃えるような怒りの目で、震える二人を睨みつけている。


「バルフォア! ゴードン! 申し開くことはあるか!」


 国王の雷のような声が響き渡る。


「ひ、ひいいい! お、お許しを……!」


 二人はその場に崩れ落ち、無様に命乞いを始めた。

 だが時すでに遅し。

 彼らの犯した罪は一貴族、一商人の独断を遥かに超え、国と国との関係を危うくしかねない大罪だった。


 バルフォア子爵は爵位を剥奪され、領地は没収。一族郎党、未来永劫王都から追放されることとなった。

 ゴードン商会も解体を命じられ、その莫大な資産はすべて国庫に没収された。


 まさに自業自得の末路だった。

 俺を馬鹿にし、陥れようとした者たちが破滅していく様を、俺は静かに見届けていた。


『ざまあみろとは思うが……後味がいいものではないな』


 だがこれでアースガルド領を脅かすものはもう何もなくなった。

 俺は改めて国王の前にひざまずいた。


「カイ・アースガルドよ」


 国王の声は先程とは打って変わって穏やかなものだった。


「そなたの働き、実に見事であった。その功績に報いねばなるまい」


 国王はにこやかに俺に告げた。

 その言葉は俺の人生を、そしてこの国の未来を大きく変えるものとなるのだった。

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