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現代ペット問題に関心持つようになった。乗り掛かった舟で分析をつづける。

前回のペットの社会学(1)に続き(2)は人間側の精神面の深堀である。

 この数値の意味するものをまず解かなければならない。ペットが家族の一員だと言われて久しく猫ブームともいわれているが、表はこれを数値の上からも裏付けている。明らかに犬から猫へと愛玩動物のシフトのが進んでいるようだ。犬の飼育数の減少が著しい。猫も猫ブームと言われながらいち頓挫であった。

原因として考えられるのはペットを飼う人のライフスタイルや価値観の変化、経済の景況が影響していることが考えられる。

 ライフスタイルの変化とは、住居のアパート、マンション等の集合化が進みペットを飼いたくても飼えない状況があるかと思われる。犬は外で飼うことが主であったからこのための減少とも考えられるが、近年は座敷犬と称して屋内での飼育も増えているから犬から猫へのシフトは犬の飼い難さのみが原因でもなさそうだ。

 やはり犬は愛玩動物の席を猫に譲った感が強い。猫も2024年の飼育数がピークなのか、それとも一時的な現象なのか今後の推移が興味深い。


社会はますます分断化、細分化され人心の荒廃・砂漠化が進んでいる。この人間砂漠の大砂丘で、人はスマホは持つがスマホは生活上のあらゆる機能があるが肝心の羅針盤がない。

 心はなんとなく満たされず、どこか物足りなさを感じ、生活が何となく不如意なのだ。その一つの方便にペットを溺愛することでこの(うつ)な穴を埋めようとしていることは否めない。

””私はそうじゃないは、だって心からペットを愛しているもの””と言う人もいるだろう。しかし人の心は魔物だ。人は心の奥にあるものを簡単にさらけ出すことは容易ではないことを知るべきだ。

 心理学に「代償行為」という概念がある。人生の喪失感を別の代償物で補おうとする行為をいう。ヴィクトール・フランクル(注4)は自らナチスの強制収容所に収監された経験を持ち、その体験をつづった著書『夜と霧』の中で「実存的空虚」という概念を導き出し、生きる意味を見失った人が、物質的なものや刺激的な行動でその空虚感を埋めようとすることがあると、述べている。

 

 この「代償行為」は必ずしもペットに限らない。スポーツや趣味や仕事に没頭することがある。代償行為をすべて否定的にとらえてはならない。代償行為への真摯に取り組むことで、それを超えて活路や成果が得られることだっであり得る。

 夫の転勤で家に残された妻が虚ろな寂しさを紛らすためにペットを飼い始めたり、ペットを可愛がり始めたのは息子を亡くしてからだった、ということはよくある話である。仕事で人間関係の軋轢に疲れ、ペットになぐさめを求めることだってあるだろう。ことにペットの溺愛にはペット依存症や代償行為のカムフラージュ(注5)がある。

 公園に行くと犬のペットを連れて散歩している人をよく見かける。私が散歩の途中で出会う人のおよよ半数の人がペット連れである。リタイヤをした老齢の人かばかりかと思えば必ずしもそうではない。子供と一緒にペットと散歩する家族もいれば、若い夫婦の散歩に犬連れ人もいる。何ともほほえましい光景のように見えるが、悪意を持って穿った考えをすれば家族間の話題の乏しさをペットが補っているかのようにも見える。

 その中に50代前後の働き盛りとおぼしき人もいる。その姿を見ると”自分は犬と散歩などしていていいのだろうか”といった表情が漂っている。”本当はするべき何か”があるはずだが、それが見つからないために犬と散歩しているいように窺える。孤独、孤立、社会との接触の乏しさなど、ペットの社会学は、ペットの可愛い仕草の中に埋没して、底流として大きな目標を持てない現代を象徴するような問題が潜んでいる。


ペットの社会学(1)の赤川教授のように猫の飼育を、可愛いさのみで判断することは、分析の結果に大きな誤りを生じる恐れがある。


ペットを飼うことは社会に別の現象をもたらした。人心の荒廃・砂漠化が明らかにビジネスになっている。これは驚くべきことだ。近年ペット関連産業がビジネスとして大きくのしてきている。ペットは動く商品、動く”縫いぐるみ”なのだ。

表2

ペットビジネスに関する市場規模調査 (単位・億円)

    '20年度     24年度(予測)

市場規模     16,842 19,026

比較       ―      △13%

           (株)矢野経済研究所調べ


ペット業者は人の心のすき間に巧みに分け入り愛くるしいペットの飼育を進める。満たされない心はつい業者の口車に乗ってしまう。人間の側にがペットを飼う理由はあっても、ペット側に飼われる理由は何もない。

ペットはひたすら人間の都合によって飼われる。人間とペットの出会いに不思議な因縁を感じたりすることがあるとすれば、人間がそう感じるだけであって、ペット側にとって不思議な因縁など何もない。人間とペットの出会いはただ偶然だけが支配する。

表2を見ていただきたい。 2024年度のペット関連総市場規模は対2020前年度比13%増の1兆9,026億円と伸長の予測である。ペット関連市場は巨大規模であり、これには《ペットフード市場》《ペット用品市場》《繁殖・販売・病院・葬儀》などが含まれる。

 ペットとの共存のライフスタイルの困難さが、飼育頭数の鈍化となり今後の増加は難いとみる向きもある。とはいえ、ペットは人間の生活に切り離せないところまでの浸透しペット依存社会になってる。


(注4)

オーストリアの精神科医、心理学者、ホロコースト生還者。著作は多数あり日本語訳も多く重版されており、代表作は『夜と霧』。患者が自ら生きる意味を見出す手助けを施すことにより、精神障害を克服する心理療法「実存分析」を提唱した。1905年~1997年(92歳没)(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

(注5)

本当のことや本心を悟られないように人目をごまかすこと。

つづく


次回はペットの社会学(3)である。この(3)おいてわれわれはより深刻なペット繁殖の過酷な実態を知るだろう。われわれは人間が神でもあり悪魔でもあることを知らされる。

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