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リアトリス  作者: 高速処女膜
第一章 誘いの仮面編
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4 鏡の国


 「さて、まずはお名前と年齢を教えて頂いてもよろしいですか?」

 鏡の国案内所係員の名札を下げたカイリがユーリに向かってにこやかに問いかける。

 「浅見由有莉(あざみゆうり)といいます。今十四歳です」

 「ユーリちゃん、ですね。それでは早速ここがどこなのかをご説明しましょう! そう、ここは鏡の国!! 迷える子羊が集う安息の地です!!!」


 「……」


 沈黙。


 (……少し変わった人なのかも)

 「コホン……すみません。この世界は一般的に鏡の国と呼ばれています。この世界には基本的にユーリちゃんのように、異なる世界からやって来た人しか居ません。つまり、私もその1人です」


 「お姉さんもなんですか?」


 「お姉さん!!! んくぅ〜!!」


 ユーリが問いかけるとカイリは身悶えした。しかしこちらの視線に気づいて再度咳払いをして続きを話し始める。

 「そうです。随分と昔になりますが、私も気づいたらこの世界に来ていました。恐らく、私が元居た世界はユーリちゃんとは全く違う世界でしょうけどね。そんな事情で毎年大勢の人がこの世界に迷い込んできますので、ここでの暮らしをサポートさせて頂くのが我々案内所の業務になっております」


 (やっぱりここは違う世界なんだ……)

 「ならどうやったら元の世界に戻れるんですか?」

 ユーリの問いにカイリはおかしなものを見るような顔になった。

 「帰る、ですか? 変わったことをおっしゃいますね。ユーリちゃんは元の世界に帰りたいんですか?」

 「えっ? それは‥‥」

 予想とは異なるカイリの反応にユーリは混乱する。普通であればどうやったら帰れるかが一番気になる点ではないのだろうか?

 ユーリはこのままでは家族が心配するだろうということをカイリに伝える。

 「なるほど。でも、本当に帰ってしまって良いんですか? ユーリちゃんはそれで大丈夫なんですか?」


 「えっ?!」


 (帰っても大丈夫ってどういうこと?)

 カイリに浮かぶ表情は先ほどまでの明るいものから真剣なものへと変わっていた。

 「まぁ、まだいらっしゃったばかりで混乱している状況ですものね。こちらに住民登録の為の書類がありますので、記入して頂けますか? 詳しいお話は明日にしましょう」

 そう言ったカイリが数枚の書類をユーリの前に広げる。

 見ると名前の記入欄の下からは種族や特性・異能の有無など、今まで見たことがないような記入項目が並んでいた。

 「分かる範囲で結構ですよ。明日ゆっくりとお話ししながら細かく記入頂きますので」

 ユーリはいくつか分かる部分を書き込んでいく。

 しばらくカイリの話を聞きつつ記入を終えたユーリにカイリが安心させるように笑い掛けた。

 「この世界に慣れるのには時間がかかります。アフターケアも含めてしっかりお付き合いしますので心配しないで下さいね。上の階に宿泊用の部屋がいくつかあります。しばらくはそこに泊まって頂いて構いません」

 カイリはそう言うとカウンターから立ち上がり、入口に向かって歩いていく。

 「こちらへどうぞ」

 カイリについて入口を出て建物横の階段を上がると、廊下の先にいくつかの扉が見えた。

 「203の部屋を使ってください。一番奥の管理人室に当直のスタッフがいますので、何か分からないことがあればいつでもいらっしゃってくださいね」

 カイリはそこで言葉を切った。そしてユーリの目をじっと見つめる。

 「私の知る限り、鏡の国から元来た世界に帰る方法は分かっていませんし、そう言った話も聞いたこともありません。ですが、この世界には〈影の魔王〉と呼ばれる災厄が現れることがあります。そして、魔王が世界を壊した時、私達は元の世界へ送り返されるのではないかと推測されています」

 そう話すとカイリはニコリと笑いかける。

 「もっと他の方法があるのかも知れませんけどね。では、私は事務所を閉じてきますので。おやすみなさい。いい夢を」


 (魔王? 壊す? どういうことなんだろう?)

 事務所に向かうために階段を降りて行くカイリの背中を見つめながら、ユーリはカイリの言った言葉を思い返す。ユーリにとっては魔王なんてものは空想上の存在でしかない。

 (とりあえず、部屋に行こう)

 ユーリは教えられた番号の部屋へと向かう。


 ガチャリとレバーを下げて扉を開けると、六畳ほどの部屋に机とベッドが置いてあった。

 ユーリが部屋に入ると勝手に照明が付いて部屋内を明るく照らす。

 暖かな光と落ち着ける空間に入ったことでずっと張りつめていた緊張が少しほぐれたらしい。ユーリは急な眠気を感じベットにそのまま倒れこんだ。

 (どうするかはまた明日考えてみよう……今日は疲れたな……)

 ユーリはそうぼんやりと考えながら眠りについた。


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