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恋人の種類

『負の感情に神は寄ってくる』 

 色々な悩みや迷いを持った子供たちに天の使いから招待状が届く。それを読んだ者には『迷いのモリ』への扉が開かれるそうだ。

「忠広一!海行こうよ、海!」


 4歳上の幼馴染の絵莉姉がいう。


「先に言ってて。俺まだ用意がある」 


 いつもの返事をする。

 それをみて絵莉が満足そうにはにかんで近くの海に行ってしまった。

 俺はベットの上に座っているものを両手で持ち上げる。これが俺の全てだ。

 両手サイズの犬のぬいぐるみ。

 12年前。あの海岸で絵莉姉にもらった風景が脳内に映し出される。

 それをしっかりと抱きしめ、絵莉のあとを追いかけた。



「忠広。きゅーちゃん連れてきた?」海につくなり絵莉姉が聞いてきた。


「もちろん。この子はオレの心臓だ」


 オレはキューちゃんを両手で持ち上げる。

 すると絵莉姉はどこか寂しそうな目でこちらを見た。


「私、明日この島をでるの」


「そうだったな」


そういえば絵は都内の大学に行くと言っていた。


「そう。これ最後だよ」


「最後...」


「それをまだきゅーちゃんに伝えてなかったからさ。伝えてくれる?」


 オレはきゅーちゃんの瞳を見つめる。


『げんき、でね。えりちゃん』


 脳に直接語ってきた。

そうオレにはキューちゃんの声が聞こえるのだ。

 このことはオレと絵莉姉以外誰も知らない。これからも話す気はない。

バカにされるとわかっているから。


「元気でねだって。キューちゃんはオレが一生大切にする。安心してよ絵莉姉」


絵莉姉を元気づけようと無理やり声を出す。


「ありがと、約束だよ。やっぱ私達って似てる」


絵莉姉は笑っていた。


そう。僕の恋人はこのぬいぐるみ、きゅーちゃんだ。

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