プロローグ 勇者伝説
今より千年前。
世界に突如として魔物が溢れかえった。
次々と壊されていく国々。
常に赤く染まった空はその戦いで死んで行ったものたちの血のようだった。
そんな中、一筋の光が現れた。
その者は自身を魔王を打ち倒すもの、勇者と名乗った。
右手の甲に光り輝く紋章をつけた男は瞬く間に押されていた戦線を押し戻した。
戦士、魔法使い、僧侶。
彼らも勇者と共に戦い、一騎当千の活躍をしていた。
彼らは竜を倒し、姫を救い、聖剣を抜き、とうとう魔王城に辿り着く。
だが、中に入れるのは聖なる力を持ち、魔に対抗できる力を持った勇者のみ。
残された戦士たちは勇者が無事に戻ってくることを祈ることしかできなかった。
ついに魔王と対峙する勇者。
彼らの戦いは長く、三日三晩続いた。
そしてとうとう戦いが終わる。
崩れる魔王城。
外で待っていた戦士たちは勇者が帰ってくるのを今か今かと待ち続けていた。
だが、帰ってこない。
城の崩壊が終わっても、夜が明けても。
彼らは勇者が魔王と相打ちしたのだと結論づけ、彼の偉業を忘れないために家族が待つ国へと帰った。
その後百年おきに魔王が復活するが、その度に勇者が現れ、一つの例外も無く勇者は帰らなかった。
いつしか伝説はねじれ、
勇者が死ねば魔王も死ぬのではないか
勇者が本当の魔王で、誰にも見つからないところで隠れているのではないか
そもそも魔王や勇者などは本当にいるのか
などという噂まで流れ始めた。
初代勇者の伝説から千年。
勇者は未だ帰らず。
新たな勇者と魔王が生まれようとしていた。