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Chapter VI

夢から覚めた。

「おはようございます。今日は6月18日、土曜日です……。」

驚いて起き上がり、スマホを開くと、6月18日と表示されていた。

時間のループが終わったんだ。

まさか、こんなことが本当に存在するなんて。

咲花にこのことを伝えたいと思い、少し身なりを整えて朝食を食べてから出かけた。

今日は土曜日だから、ちょうど休暇を取る必要がない。

記憶を頼りに咲花の家に行くと、目の前には一面の草地と点々とした蒲公英が広がっていた。

そうか、これが結果だと予想すべきだった。

私は失望を感じた。人生で大切なものを取り戻したのに、人生の道しるべである星野奈花と宮田咲花に感謝の言葉を言えず、別れも告げられなかった。

彼女たちは単なる幻想かもしれないが、まるで現実に存在するかのように私の生活の中にいた。

朝陽を見上げながら、私はすべてに感謝し、未来へ一歩を踏み出した。


待ちに待った文化祭が三ヶ月後に始まった。

キャンパスはカラフルなリボンで囲まれ、まるでおとぎの国に入り込んだかのようだ。

私は鏡で髪型を何度も確認した。

乱れていないだろうか。

クラスメートたちは同じ制服を着ているが、特別な輝きを放っている。

「こんにちは、文学部を見に行きませんか?」

「え、いやいや、私は自分の活動があるので。」

「こんにちは、環境部を見に行きませんか?」

「え、まだやることがあるんです。」

何度断ったかわからないほどの誘いを振り切り、やっと物理部の前にたどり着いた。

部員たちは積極的に準備をしていて、私を見て親指を立てた。

私も親指で応えた。

「今日も一緒に頑張ろう!」と彼らに声をかけた。

「頑張れ!」と一人の男子が言った。

入口に置かれたチラシを手に取り、キャンパスの中で私の「目標」を探し始めた。


人が行き交うキャンパスは、少し目が回りそうだった。

また、あの日屋上で一人で本を読んでいた女の子を見かけた。

キャンパスの喧騒は彼女には関係ないようで、静かに花壇のタイルの上に座り、本の中で自分の世界を探していた。

以前なら、彼女に話しかけることはなく、淡々と一瞥を送るだけだっただろう。

しかし、私は自分の意義を見つけ、変わった。

「こんにちは、物理部を見に行きませんか?」

知らずに私の顔に消えていた微笑みを浮かべ、腰をかがめてチラシを彼女に渡した。

少女はゆっくりと顔を上げた。

物理部は今日の最初のお客さんを迎えた。


「人生って、プリンみたいだよ。」

私は央蓮とキャンパスのベンチに座っていた。

「苦い部分もあるかもしれないけれど、その容器には甘い幸せな時間も詰まっている。」

「人はその部分のために生きているんだ。」

青い空を見上げながら、央蓮に感慨を語った。

「今日もお疲れ様。」

私は央蓮に微笑みかけた。

「あなたもね。」央蓮も微笑んで返した。

「飲み物はいかがですか?」と一人の部員が言いながら、飲み物を私に投げた。

飲み物の角度が合わず、伴って「ガタン!」という音と共に、頭に痛みが走った。

「おい、痛いじゃないか!」

私は立ち上がり、その男子に駆け寄った。

央蓮はそっとシャッターを押した。

こうして、私たちがキャンパスで追いかけっこをしている滑稽なシーンが出来上がった。


(完)

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