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死に抗う


「わかりました。今からあたしはラパンを名乗ることにいたします」


 冷静さを取り戻したあたしはリシェスの提案を飲むことにした。

 この世界で生き残るにはそれ以外に道はないから。


「ただあたしは自他共に認める大根役者だから赤の他人になりきれる自信がないわ」

「その点は心配いらない。君はただ尊大かつ横柄に振る舞ってくれればいい。あまり主を悪く言いたくはないが、ラパン様は粗暴な性格で皆の嫌われ者だった。部隊でラパン様のことをよく知る者など護衛のおれぐらいのもの。まずバレはしない」


 なるほどみんなの嫌われ者か。

 良かった。それなら演技の必要はないわね。

 あたしはリシェスの顔をビシっと指さす。


「どうでもいいけどいつまであたしを見下しているつもり? 無礼よ、今すぐそこにひざまづきなさい!」


「……順応が早いな。悪役を演じる才能があるじゃないか」


 リシェスは苦笑してからひざまづいた。

 悪役令嬢ならお手の物。前世でも似たような立場だったもの。

 あたしの性にもあってるしこれからはこの無神経ドンカン男にガンガン命令を下していくわ。


「あたしは生まれ変わったばかりで右も左もわからない。今すぐ状況を説明しなさい」

「状況……と申されましても、いったいどこから話せばいいものか……」

「そんなことぐらい自分でお考えなさい。あなたの頭は飾りなのかしら?」

「……本当に天職に就かれたようで」


 リシェスは頭を下げたまましばらく考え込む。

 これは意地悪じゃないわよ。あたしを利用したいなら最低限いったい何を話せば自分にとって有利かぐらいは考えてもらわないと。


「まず最初に伝えなければいけないのは我々は追われている立場ということです」


 リシェスの説明はザックリかいつまむと以下の通り。



1.ラパン様のお父上である公爵様が悪政で領民を怒らせる。


2.領民が教会と結託して反旗を翻し公爵様を襲って捕らえる。


3.身の危険を感じたラパン様は自らの親衛隊を引き連れて領を脱出した。



 リシェスは丁寧かつ詳細に状況を説明してくれたけど、今のあたしの頭ではこのぐらいしか理解できない。

 ひとつ言えることは……地獄の治世も楽じゃないってことね。人が住んでいる以上は当たり前の話か。


「あなたたちの事情はザックリだけど把握したわ。さっそく質問だけど、なんでこんな化け物が巣食うヤバい森の中に引きこもっているのかしら。身を隠すにしてももっと安全な場所があると思うのだけれど」

「周辺の侯爵たちが包囲網を敷いて街道を封鎖しているからです。我々も好き好んでこのような場所にいるのではございません」


 あらまあ公爵様ったら嫌われ者。

 いやこの場合はラパン様も同じく嫌われてるのか。

 でなければか弱い少女を寄ってたかって捕らえようとなんてしないわよね。


「幸い森の管理者であるサントル侯は中立的な立場で、この森に滞在している限りは手出しはしないと約束してくれています」

「ホントに? あのサルの化け物が怖くて手が出せないだけじゃないの?」

「約束は約束ですので」


 リシェスはあたしから目をそらしながら言った。

 どうやら図星だったらしい。


「四方を敵に囲まれ森から出られず――つまりあたしたちは今、絶体絶命の大ピンチってことかしら」

「おっしゃる通りです」

「いちおう聞いておくけどここから逆転の一手とか持ってたりする?」


 リシェスは沈黙した。

 あるわけないか。あったらラパン様は自殺を決断なんかしない。

 何をしようと何度繰り返そうともあたしたちはここで全滅する。それはもう運命によって定められている決定事項なんだ。


「わかったわ。まずはこの包囲網を突破しましょう」


 あたしは断固たる決意をもってリシェスに告げた。

 死ぬことが運命ならば覆すのみ。単純な話よね。


「突破した後は部隊を解散。家と名を捨て散り散りになって国外逃亡する。それでいいかしら?」


 あたしは一度死んだ。

 それで禊は済ませたつもりだ。

 もう二度と死なない。死にたくない。

 たとえ相手が神であろうと必死に抗い続ける。


 最後の最後まで!

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