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22 新たな門出

迷宮を攻略しCランクとなった2人。

たまに出る割の良い依頼も順調にこなしてゆく。


やっと貯まった金貨50枚で念願の魔法の箱を購入し、迷宮の30階層でハイスピードで狩りをして回るようになっていた。


他の冒険者などからスーパールーキーなんて言われ、遠巻きにヒソヒソされていた。

たまに粗暴な冒険者から「こんなガキどもが!」と声を掛けられるが、そう言った輩は背後に廻り短剣を首筋に添えるだけで、ちゃんと大人しくなってくれるので特に問題はなかった。


そんな迷宮最深部が物足りなくなっていた僕だったが、今のレベルは37でそろそろ他の場所へ移動しようとも考えていた。


レベル30となった時には新しいスキルも発現した。

僕の『軽量化』はどうやらランクⅢが上限だったのか、『重量化』というスキルを覚えた。


――――――

『重量化』触れればどんなものでも重くする

――――――


剣技などの修練スキルは別にして、念願の新しい固有スキルである。その効果は説明の通り一定期間ではあるが、触った物を重たくするというものである。

試しに自分の剣に使用してみると一気に重さが増してバランスをくずし、とっさに手を離していなければそのまま地面に叩きつけられていただろうと言うほどの効果だ。


もちろん軽量化と同じで剣が地面に落ちたときにはガンガランという剣本来の音だったが…

それからしばらくは僕より力の強いカタリナが持ってみてもよろけてしまうほどの重さだと確認してくれた。


効果は大体1分程度のようで軽量化をかけることでも解除できた。


「これは、相手の装備に触ることができれば無双できちゃうね」

カタリナにもそう言われたが、怖くてカタリナ相手に練習などはできなかった。


試しに棍棒のような太い枝を持っているオークを迷宮内で見つけ、その枝にすれ違いざまにさわり『重量化』を発動すると、オークが奇声を上げながら枝を地面に落とした。


何度も持ち上げてはふらふらとしながら戸惑っている光景は、少し面白いなと思ってしまった。それと同時にこれはかなりチートなスキルなのでは?と思ってしまう。


カタリナの方も順調にレベル40まで上がり『気合』という一時的に攻撃力を上げるスキルも発現した。

そして『連撃』も『連撃Ⅱ』にランクアップしたので、一回の攻撃で3度の連撃効果がついて、それだけでも攻撃力は実質3倍となっている。


そんなカタリナと相談して、僕たちは遂にこのウルズから旅立つことを決めた。


その行先は…帝都ビフレストである。

他の場所も考えたが、この辺りで難易度の高い迷宮があるのは帝都ぐらいであった。


若干気が重い部分もあるが、今の僕ならあの3人に会ったとしても鼻で笑うぐらいはできるだろう。

それに今の僕は一人じゃないから…


鍛冶師の親方にはウルズを出る前に、魔法剣をと伝えたが、どうせなら帝都にいる兄にもっと良いものを作ってもらえとアドバイスを受ける。

当然もう少し高額にはなるが、金貨20枚で作る最低限の魔法剣よりも、僕たちの今後を考えたら、金貨100枚程度の高ランク用の魔法剣を作った方が良いと教えてくれた。

『爆裂拳』などを持つカタリナにも、魔力の通りが良い高品質のナックルを作った方が良いだろう。とも教えてくれ、紹介状も書いてくれた。


「多分スキルなんだろうけど、お前たちを見ているとさらなる武器の可能性を見た。たまには顔を出せ」

そう言って送り出してくれた。


泣きそうになった。


そしてお世話になったレイティアさんなどに旅立ちを告げ、見知った冒険者など多数に別れを惜しまれるというイベントも初めて体験した。


泣いた。


辛い事の多い人生だったけど、この街にやってきた幸運に感謝した。


そして帝都の娘の家まで向かうというおじさんの護衛任務として、おじさんの小さな馬車に乗り込み帝都に向かって行った。


◆◇◆◇◆


帝都へ向かう馬車の上。

私は昔のことを…この世界に転生する前のことを思い出す。


帰宅の際に顧問の佐々木先生に頼まれた議事録の確認。

意外と早く終わった私は、これなら直樹に追いつくかな?そう思って急いで帰宅した。


そして何時もの横断歩道で信号待ちをしていると、後ろから誰かに押されたようで躓くように1歩2歩と足が前に出る。


「えっ?」

思わず声がでる。


そして次の瞬間、振り向こうとした私は大きな衝撃を感じ、痛みと共に目の前が真っ暗になった。


痛みも消え、つぶっていた目を開けると、そこは白い空間で「神様です」と名乗るおじさんが立っていた。

その神様は「不運だからチートにしてあげる」と言わたが、多分私はその時、大いに戸惑っていたのだと思う。


「どうなりたい?」

そんなふわっとした質問があったので…


「拳一つで成り上がりたい!」

そう答えたのはさっきまでやっていたゲームの影響だと思う。バカな願いだと思うが、今思うとそれはそれで良かったのかもと思っているのも事実だ。


そして宿屋の娘に生まれ、神託の儀が始まると同時にその事を全て思い出す。

この世界でカタリナとして生きた10年の記憶を持ちながら、前世の、加藤あかねとしても記憶も存在し混乱してしまった。


神託の儀で武闘家となった私は、両親に思いを伝え実家の宿屋を飛び出すと、ソロで迷宮に挑戦し少しづつではあるがレベルを上げていった。

異世界最高!と最高潮にはしゃぎながら…


でも5階層辺りで停滞していた私はソロはやっぱ厳しいかな?なんて思っていた。

でも冒険者ギルドで出会う厳つい冒険者を誘うのはちょっと躊躇する。そう思っていた時期だったと思う。


そして目ぼしい依頼が無いかと掲示板を確認しようとして、同じぐらいの男の子が見ているのに気付いて声を掛けた。

それがイテイオとの出会いだった。


私は、その事を思い出しながら、隣で穏やかな表情で寝ているイテイオを見て口元をにやけさせた。


まるで弟の様な存在。

でも今では強くなって、そして出会った頃から心が強く、そして純粋で真っすぐな男の子。まるで小さい頃の直樹のように思い、顔が熱くなる。

直樹は幼馴染で、弟のような存在で、私の初恋の人。今も大好きな…もう会うことは無い人…


そんなことを思い出し少し沈んでしまうが自分の頬をつまみ、強制的に気持ちを切り替える。


帝都に着いたら、きっと元パーティの奴等と何かあって揉めるだろう。その時は私がちゃんと彼を守るんだ。そう思いながら彼の肩にそっと寄りかかる。

イテイオは、私が絶対幸せに、違うよね。私も一緒に幸せになるんだ。目を瞑り彼の体温を感じながらそう思った。

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