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02 スキル発現

神託の儀で転生前の記憶が蘇り、絶賛混乱中な僕ではあったが、見た目だけは冷静を装って神官に向かい足を進める。


だが脳内は冷や汗ダラダラでこの後の展開を考える。


あの「ヤベっ」てのはなんだ?そう思いながらすでに定位置にたどり着いた僕は、目の前の二人を見る。


目の前の神官は『大切な公爵様の御子息だ。きっと良いジョブとなるだろう。であれば精一杯よいしょして私の地位も安泰だ!』という笑顔に見える。


笑顔の父も『この子は私の子なんだ。きっと私の剣聖を受け継いでくれるだろう。いや待てよ?ハレルヤは大魔道だ。もしかしたら未知の英雄的なジョブもありえる!だからこそ懇意にしている枝葉の貴族たちも半ば強制的に集めたのだ!絶対に凄いの来ちゃうから!めっちゃ期待大だよね!』という顔に見える。


僕は日々の鍛錬により『剣技』という自身の経験により発現する修練スキルを持っている。それ自体は珍しいことでは無い。武家では『剣技』や『身体強化』、魔術師の家系では各種魔法スキルが発現することもある。

だが、実際にそれを発動できるのはこの神託の儀が終わってからだ。


『剣聖』である父から見ると、『剣技』が発現した僕にかける期待も大きいようで、さっきからこちらを見る目が怖い。笑顔なのに怖い。


これは…ジョブ次第で死ねる。


そう思いながら『神様どうか凄いのください!』という思いで神官越しの神に祈った。


「では、偉大なる天空の主、アイテール様、新たなる神の子にこの世界を生きるための御力をお分け下さいませー」


神官が少し間の抜けたような言葉で神託の儀が始まるが、正直神託スキル持ちなんだろうからあんな句は詠まなくても良いのでは…と吹き出しそうになった。

それでもこの世界ではそれが当たり前の光景で、他の貴族の子供たちが受けたのを何度か見ていたので、ギリギリだが頬に力を籠めて堪えることができた。


そして体の中が熱くなり、目の前には勝手にステータスが表示された。


――――――

イテイオ・ダグラセイド ジョブ:掌る者 LV.0→1

攻撃:0→1

防御:0→1

敏捷:0→1

魔力:0→1

魔攻:0→1

魔防:0→1

器用:0→1

アクティブスキル 『剣技』→New!!『軽量化』

――――――

『軽量化』触れればどんなものでも軽くする

『剣技』剣が扱いやすくなる

――――――


僕は、目の前に表示されたステータスに驚き呼吸がとまりそうになる。

能力値が1と言うのは絶望的に低い能力値だ。


普通に生活していたらこの神託の儀で0から一気に10、20と表示される。高い者なら一気に50程度になるものもいる。

それまでの修練の効果がそのまま反映されるのだ。


それが1だというなら…僕は今まで立って歩くことすらしてこなかった、と言ってもいいぐらいじゃないか…

そして能力値を置いておくとして、肝心のスキルとジョブも良いものでは無いと思える。


――――――

ジョブ『掌る者』

スキル『軽量化』

――――――


少なくとも僕は聞いた事のないジョブとスキルで、とても父の期待に応えることのできる物ではなかった。


軽量化の方は似たもので『ダメージ軽減』や『物量軽減』というスキルなら聞いたことがある。いずれもあまり良いスキルではない。

だがそれより、このジョブとスキルの二つの部分だけ違和感がある。


そして先ほどから黙って僕と同じものを見ているであろう神官が、まだ何も言葉を発していない。ここでジョブとスキルを発表するのでは無いのだろうか?


「読め、ません…」

やっと口を開いた神官はそう言って目を丸くしながら僕の方を凝視していいる。


「読めないとは?説明してくれ神父殿!」

父が神官に説明するよう促している。お互い顔が引きつっているのが伺える。


「し、信じられないことかもしれませんが、能力値が全て1と言うのは分かりました…が、スキルに元からある『剣技』の他、神託で発現したであろうジョブもスキルも、おかしな文字で書かれております…」

「読めないばかりか能力値が全て1?それではイテイオが無能だと言っているに等しいではないか!ふざけているのか神官殿…こんな…厳粛な場でそのような戯言…覚悟はできているのだろうな?」

父の怒りの表情に後ずさる神官。


「ほ、本当です!能力値が1なのも、こう、このような、形でジョブとスキルは書かれております!信じてくだされ、公爵殿!」

必死に目の前の紙に筆を走らせる神官。


そしてそれを父に見せ頭を下げる。

そうか…それは僕には読めた。読めるに決まっている。


あれは日本語だ。

今目の前で狼狽えている神官の名はセイドルス・イルオッテ。彼の胸に縫い付けてある刺繍にそう書いてある。『セイドルス・イルオッテ大神官』と…だがそれはこの世界の文字であり、それはこの世界で10年過ごした僕にも読めた文字だった。


だが、神官セイドルスの書いた字は、少し不格好ではあるがそのジョブとスキルを、まんま日本語で書いたと思われるものであった。


なるほど。

それが『ヤベッ』と漏らした神の失敗だったのだろう。


「父上…神託を受けたからでしょうか。私にはその文字が読めるのです…」

僕の言葉に神官と父の視線が集まる。


恐らく他の物も今僕に注目しているのだろう。


「ジョブはツカサドルモノ<掌る者>、スキルはケイリョウカ<軽量化>と書いてあります」

会場が少しざわついた。


「そうか、ではそのジョブはどういうものなのか分かるのかイテイオよ」

「ジョブは…正直分かりません。ツカサドルということなので何かを指示する者ということなのかと…」

「そうか、良く分からんが我が公爵家に相応しいジョブのようだ…して、スキルの方はどうなのだ」


父の言葉に、僕は言っても良いものか…

先ほどから脳を必死で動かし考えているが、とてもすぐには答えることなどできなかった。

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