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ある夜の日  作者: いずみ
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あの日の夜


目を覚ますと、そこには誰もいなかった。

それはまるで、全部夢だったのかのように。


部屋に残る微かな香水の匂いだけが、あれは現実なんだと教えてくれた。



***


微かな香水の匂い。

ほんのり香るシャンプーのように、ナチュラルで清潔感のある優しい香りだった。

あの香りが街中でするたびに、あの香りと同じような匂いがするごとに、

僕はいつも振り向いてしまう。


あの人が帰ってきたのではないかと。

あの匂いがするたびに、今日もまた、あの日のことを思い出す。


君が突然いなくなったあの日のこと。あの寒かった夜のことを。



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