【第97話】開く音
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
スピネル
ゾイ
アイカ
アクロ・アイト
イト
「ね、ねぇメイト、この作戦で何が分かるの?」
ふと、作戦の目的を知らされていないアイカが、沈黙しているメイトに問うた。
「今、アクロがゲームにおいてアイカがそうだと言い当てた、さらにその後、"三人同時"に本気で刺しにいってもらったアクロはアイカだけを素手で防いだ、残りは魔法で、三人同時なら三人まとめて魔法で良かったじゃないか、なら――"アイカだけ襲って来ると思っていた"んだろ」
やはり、全て理解した上でのやり取りだった……。
「じゃあ、なんでアクロがそうしたのか、過去未来を見ることができるんだろう、それは『ラプラスの悪魔』だろ」
メイトはさして喜んだ様子なく、淡々と平素な声音で説明していく。
「可能性として、『ラプラスの悪魔』の譲渡、もしくは複数人が所持、アクロが本物のイト、今本物の所持者となんらかの魔法で通信していた……そういう感じ」
今考えうる可能性の数々を並べていくメイト、アクロはゴクっと固唾を飲む。
「へ、へぇ……まぁわかんないけど……とりあえずこれからどうするの」
「……今ここで、アクロを潰す。やはり予定通り一位の座を奪う」
その結論に、アクロは予想外と言う感じだ目を開いて沈黙する。
過去未来が見える、その事実を知っておきながらゲームに挑もうとするメイトに、もはや驚嘆していた。
いや驚いてる場合じゃない!
アクロは顔を上げて、「は?」と眉を寄せる。
「すまない、何を言ってるいるのか分からないんたけど……」
完璧にメイトを下す。何があっても作戦の変更の必要を認めない。必ず私の練んだ作戦で勝つ。
「……」
道化るアクロに、メイトはふわっととても小さな迷いが浮かんでしまう。
俺は間違えたのだろうか。
「……」
アクロの言葉に、宇宙の誕生したときのビックバンの如く爆発的に広がる考察の渦が脳を埋め尽くす。
ふと、隣に立つスピネルとキアナ、アイカを意識した。
結論、俺は間違えていない。
「仮にお前が知らなくても、お前は俺に負け――」
その瞬間、扉が開く音がした。
無機質で、メイトたちの声しか音がない図書室に突如乱入した人為的な音に、その場の全員がドアの方向を見る。
木製で厚い、豪勢な雰囲気を醸し出す扉は、人一人が通れるほどに開けられていて、そこから一人の人が体の半分を覗かせていた。
「ろ、ロリ校長……――」
ちょこんとそこに立つのは、八階にいるはずの校長だった。床につくほど長い髪を揺らしながら、大きな瞳をキュルンと瞬かせる。
――刹那、校長は唖然とするメイトとアクロに駆け出した。幼い身体を的確に動かし、素早くアクロに向かって魔法石を投げる。
「……?」
投げられた小さく光る魔法石を、アクロは一瞬でアイカから短刀を奪い、刃先で弾いた。
「――ッ」
その先にいたのはメイト、反応できなかったメイトは魔法石が飛んできたことは見えて、気がついたら――身体に当たっていた。
メイトはなんらかの魔法攻撃だと判断して、自分への危害を諦め、視線だけを巡らし周りを確認する。
キアナとアイカとスピネル、キアナだけが動いていてメイトに向かって手を伸ばしている。
次に校長とアクロに視線を向ける。
校長はピンっと、弾くことを想定していたかのように二つ目の魔法石を投じていて、それはアクロに当たった。
――その時、落下中の魔法石は粒子レベルに分解されて光と化し消え去る。
それと同時に、メイトとアクロが光出す。
これは……――。
その時、メイトはなんとなく察し、残りの三人に視線を向ける。
だが、時すでに遅し、手を伸ばすメイトは魔法石と同様に光に化し、消えた。メイトを追うようにアクロも消える。
「――ッメイト!!」
やっと驚愕から解かれたキアナの声が轟いた。消えていく光を集めるように手繰り寄せるが、霧のようにすり抜けていく。
その時、何か聞こえたような気がした。微かに聞こえたそれは、メイトが残した要求。
『メイトの要求に従う』。
その言葉の意味を理解するのに時間がかかっていると、校長が声を出す。
「君たちは、メイトと私たちの関係を知っているのかな?」
普段と変わらず"校長"としての威厳を醸し出す声音で唖然とする二人とジロッと視線を動かすキアナ。
「知っている、って?」
アイカが聞き返すと、校長はフッと笑う。
「メイトがこの学校にきた理由でもある『イトとのゲーム』の話だよ……まぁ知っていなくても関係ないのだがね」
校長はゲームを知っている。別に意外性もないがやはり現実に叩きつけられると信じ難い、ほど鬼畜。
それはこの魔法学校の最高峰の学校、言わばその王たる存在の人間、そんな人と戦うのだ。
「……」
三人は心のどこかで察した、校長は私たちと戦う気だ。
だから、逆に"願う"、そうじゃないでくれ、と。
「関係ないのだよ君たち、"敵"がなんでも――勝てばいいのだ」
その瞬間、校長は人差し指を立てる。
世界は瞬く隙もなく赫色に照らされた。その発光源は、校長の小さな手の指先から作られた小石程の赫色の魔法球。
手で握る潰せるほどの大きさのそれ、それ一つで図書室は血塗られたように紅く染まる。
「先日の魔法運動会、エルフィアという少女が作り出したと言っていた『爆轟魔法』、彼女はブラフとして使っていたが……私はそこから着想を得てな」
魔力が球の周りに渦を巻く。
図書室に穏やかかつ激烈な風が吹き始める。
「私が実際に作った」
サラリと言った校長。そんな校長に三人は絶望する。
無限の面積を持つ幾何学的な空間図形――メイトの前世では『ガブリエルのラッパ』と呼ばれていた、前世の情報がない異世界で校長が知っているわけもない、これも校長が独自に見つけ出した物だった――。
無限と有限の融合による、魔力と凝縮と拡大を無数回繰り返していく、そんな神の所業で作り出される爆轟魔法は果てのない威力を持つ。
「――ッ」
キアナとスピネルが動いたのはほぼ同時だった。
キアナはアイカとスピネルが入るように特別な術式で組まれた防御魔法を貼る。
スピネルは元々キアナを信頼していないので、吹っ飛ばされることを想定して、背後の壁を魔法で切り取った。
大きな穴が開き青空が見える。外の庭などにいた生徒からは、突然開いた図書室の壁に注目する、理由は一つ、開いた事実もあるが大体の人間はそこから漏れ出す赫色の光が理由だった。
「言っておこうか一応ね、ゲームである。ルールは単純な殺し合いだ」
それを聞いていた三人は口を開けて固まる。
殺し合い。
「だが、安心しろ――すでに"この世界で起きたことはゲームが終われば勝敗以外の事実は消える"――だから安心して殺しに来い」
そして、校長のそれは――爆発した。
――――――――――――――――――――
魔法は前方、つまり三人に向けてのみ発散されられた。
「……ふむ、やはり今では死なないか……ただの防御魔法ではないなキアナ……いやゾイ、やはり魔法の才がある」
校長は、スピネルが開けた穴よりも大きく開いた焼け焦げた図書室の壁の穴を一瞥してから、横に歩く。
本棚の裏、そこには一人の生徒がいた。
「君がキアナ・ローゼ本人だな」
「は、はい……」
オドオドと返事をしたのは、膝を抱えて蹲り頭を抑える、か弱そうな女の子。
「『他人が変装したとしても未来が見えるのか』の検証と言ったところか……アクロが本棚の裏に気づかなかったのを見れば『見れない』とバレたか……まぁもはやどうでもいい」
そう言って息を吐いた後、校長はスッとキアナの額に人差し指を置く。
「すまない。ゲームである以上、そのローブがないと"参加者"として認められないのだ、"そういうふうに作った"のでな」
「あ、え――?」
その時、校長の指先から微量かつ爆大な電撃が走る、キアナの脳天を貫き、キアナはパタリと倒れた。
校長は罪悪感を抱くこともなく、勝手にローブを奪う。
全くサイズが合わないローブ、半分ほどを地面に引き摺るほどの長さのそれをバサっと羽織る。
「さて、殺すか」
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




