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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第2章】神聖アルディア魔法学校編

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【第93話】脅しと交渉

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト・マルマロン

スピネル

ゾイ

アイカ

アクロ・アイト

イト

「ちょっと待て、まずなんで俺に言う? 俺は手伝うなんて言っていない」

 詳細な出来事を聞いてしまえば、付き合ったことから自然に手を貸す流れになってしまうだろう。正直、アクロが校長とどうとか俺には関係ない。

「メイトに関係のある話らしいんだよ」

「俺に関係がある?」

 らしい、ならば校長から聞いたのだろうか、そうならやはり例のゲーム関係なんだろうか。

「あぁ、そこも含めて説明するよ」

「……」

 この流れで聞かないってのも違和感あるか……。

 メイトは変に誤魔化すのをやめ、無言で承諾を示す。それを受け取ったアクロは察し、語り出す。

「これは、数日前のことだ――」


――――――――――――――――――――


 つい先日のこと。

 学年一位の俺は、気まぐれに八階へ上った。

 本当にただ、一体誰が八階を立ち入り禁止なんてことをしたのか気になったからね。

 そこで、出会ったんだ。

 八階に上がって、最初に目の前に入ったのは――。

「18分の1スケールの『ガンドラゴラ』の模型を炎魔法で作る、校長だったんだ……!」

「……」

 いきなりよくわからんフィクションの生物が出てきて萎えたメイト、手をアクロに向けて一旦止める。

「ちょっと待て、ガンド……なに?」

「ガリル高地やヘッペド山の山岳地帯に見られる火炎竜だよ、普段は地下深くの洞窟で『マタる』らしいんだけど、冬季に近づくと何故か山を燃やし尽くす害悪なモンスターだ。その地域だと結構『ジャシン』として、駆除依頼とか多いらしい」

 なるほど? 全然分からん。とにかく火を吐く竜なんだろう。

「へー。で、そのガンなんとかがどうしたって?」

「いやそこはどうでも良いんだ、問題はこの後――」

「どうでもいいならこの(くだり)いらなかっただろ。帰っていいか」

「待て、聞いてくれ」


「――こ、校長先生? なぜここに」

「おや、君は確か……アクロ君か……透明人間ではないのか…」

 ――あぁ、そこで俺に関係があると分かったのね……。

 校長はそう小さく呟き、少し残念そうにため息を吐くと、ガンドラゴラに手に振る。すると渦を巻く炎で精巧に作られたそれは、フッと消却された。

「さて、私がここにいる理由だったな……簡単に言えば、私は八階を立ち入り禁止とした奴の仲間だからだ」

 その言葉に、俺は思わず身を引いてしまった。

 校長が協力者、それはもはや根本のルールすら変えれてしまう、まさしく『チート』だったから。

「そんな……校長が相手なんて、勝てるわけありませんよ、それになぜ?」

「勝てる人もいる、それと、理由はぁ……あー、ある人間との約束なのだ」

「約束……誰とですか?」

「君も知っているだろう、あの透明――」


「おしゃべりはそこらへんにしといて下さい……誰かが来たらすぐ私に知らせろと言っといたはずですが」


 すると、校長が寄りかかっていた壁の一個奥の扉から、人が出てきたんだ。

 深くローブを被っていて顔は見えなかったが、体格や声から女の子なのは分かった。

「あぁすまない、この数ヶ月誰も来なかったんだからついな」

「使えねーこの校長……」

 ヘラヘラする校長に、その人は心底うんざりした様子でため息を吐いた。

「それで……あなたは何をしに来たのかしら」

 聞かれた俺は、答える。

「特に用はない、なんとなく」

「……」

 その人は、何かを考えるような沈黙の後、こちらに歩み寄ってきた。

 純毛で上質なカーペットを歩く音だけが、廊下に響いた。


「じゃあ、せっかくだから"ゲーム"でもしていかない?」


「――ゲーム? いいけど、何をするんだ」

「……こっち来て――――」


「――そこまでは覚えているんだけど……、その先がどうにも……」

 アクロは顎に手をやり、視線を右上にやったりと、考えているがどうにも思い出せないらしい。

「へぇへぇ、そうですか……」

 メイトは興味なさげに返事をする。記憶がないほどめんどくさいことはない、アイカ戦で十分理解している。

「それでも、ゲームのコンセプトだけは覚えてる」

 そう言って、またアクロは、とん、と指を自分のこめかみに当てる。なぜか、今度は面白そうに微笑んだように見えた。


「『互いの事実』……それをチップに、天秤ゲーム」


 互いの事実を、天秤?

「……はぁ、詳しく説明してくれ」

 メイトに好奇心を持ってしまった自分に対して呆れのため息を吐きながら、ジロッとアクロに視線を向ける。

「あぁ、俺も不明瞭だから詳しくは言えないけど、要するに、自分が経験した事実を互いに天秤にかけて、大きかった方が勝ち、だったかな」

「……大きいの基準は?」

「さぁ、それは覚えていないな……けど、おそらくそれを計れる特別な魔具(まぐ)の類いがあるのだろうな」

「……」

 『事実』を、ねぇ……。

「んで? お前はどうなったの?」

「負けたさ、なぜ負けたのか、どうやって負けたのかは覚えていない」

「……そうか」

 メイトは大方理解し、予想以上にスタンダードではない奇想天外のゲームに実感が湧かない。

 事実をチップに、賭け合う、と。

 俺が『ゲーム相手』という事実は、どれぐらい大きな事実なんだろう…――"人間一人"の存在を賭けた事実は、どれくらい大きいのだろう――。

「お前、自分がどんな事実を賭けたか覚えてる?」

「……それが、どうやら忘れたようだ」

 なら、と、メイトはアクロに聞かれないように口の中で呟く。

「――やっぱり、俺のことを狙ってんのか」

 『賭けた事実は、当人の記憶から消える』。

 負けには何も残らず、勝ちには『自分の賭けた事実』と『相手の賭けた事実』が手に入る。

 この場合、手に入るのは事実の改変と記憶の存続だろう。

 例を挙げるなら、『バナナを食べた』という事実を賭け負ければ、『バナナを食べた』という事実とその記憶ごと消える、勝った方のみが事実が改変されたことを知っている……そんな感じだろう。

 つまり、想い出勝負。

 大切な事実が『大きい』と判断されるなら、互いに隠した大きな秘密を賭け合うことになるだろう。

 それはつまり、『自分がイト本人』『自分がゲーム相手その人』、その事実を掛け合うことになる。

 間違いなく、これは俺と戦うためのゲーム。

「証明したければ、そっちから来いってことね――」

 メイトはおおよそ相手側の誘いを理解した。

「それで、そこに俺はどう関係する?」

 メイトは最初の質問を繰り返す。

 もう予想は付くがそれを俺が理解するのはおかしい、聞いて初めて知る、それが必要。

「校長が言っていた『透明』という言葉から関わっていることはなんとなく察した、けどそれだけじゃない……アイカにゾイ……五位に九位、分かるだろ?」

 アクロはメイトの思考を読んだように、蠱惑的(こわくてき)な視線でメイトを見る。

「もし俺が一声、『八階には校長がいた、挑む権利は私が有する……欲しければ九位から二位を退学にしてみよ』なんて言えばどうなる?」

 間違いなくメイトを脅す声音、やっぱりかとメイトは落胆する。

「それは脅してんのか? 趣味悪いな、手伝ってくれなんて耳を疑うぞ」

「脅しなんて言い方悪いな――これは交渉だよ、だがメイトはどうする?」

「どうっつってもな、何か問題でも?」

「アイカ、いるだろう? あの子、強くないよな本当は」

 メイトは沈黙を返す。

「ある人が教えてくれた、あの子は嘘をついている、強くないってね。例の天使化は一つの降臨魔法として処理された、学校側が揉み消したかようにも見える、それはいいとしても、アイカには天使化を制御する力はない」

 いや、揉み消したのは学校ではなく、"国"か。

「はぁ……」

「世界には、自分の才能を隠して生きる天才肌の狂人はいるんだよ、メイトみたいにね」

「……」

「そんな奴がアイカと戦えば確実に勝てるだろう、ゾイも例外ではない、どうだ?」

 その純粋に問うような顔にイラッとしながら、メイトは何回目か分からないため息を吐く。

「それは誰から聞いたんだ?」

「……校長から」

 フッと笑うアクロにメイトはさらに深いため息を届くわけのないロリに向かって吐き出した。

 まぁ……最初から決まっていたことだ、後悔はない……もはや俺の意思が介入する余地はない、手伝うか否かの選択権はなくなり、代わりに出てきたのは仲間を助けるか否かの俺の人格を問う問題になっている。

 ――そして前述通り、答えは"最初から"決まっていた。

「いいぜ、助けてやる」

 仲間の危険は、避ける。

 メイトの呆れたようなため息混じりの言葉に、アクロは、これまた分かっていたように軽く微笑んだ。

「助かるよ、勘違いしないでくれ、俺はメイトの力を信頼して今この話をしているんだ」

 あぁクソ、今回は手玉に取られたな……完全にやられた……ゲームは最初から決まっているなんて言うが、今回がそれだな。

「んで? 具体的には何を手伝えと?」

「それはおいおい説明するよ、俺はメイトの知能を信じているからね……じゃまたいつか」

 アクロはそう言って、ソファから立ち上がる。

「そうかよ……別に期待すんなよ――あと、あいつらに危害加えてみろ、校則退学順位ゲーム道徳プライドその他諸々無視して、お前を殺す」

 立ち去ろうとするアクロに、メイトは不気味なほどにゆっくり立ち上がり、去り行く背中に話しかけた。

 アクロはハッと息を呑む、一瞬動揺した心を正常に戻るのを待ってから無言でゆっくり振り返る。

「……それは、交渉と受け取っていいのかな」

「馬鹿、脅しに決まってんだろ」

「ハハ……――うん、約束する、俺は彼女たちに被害が被ることはしないよ」

 アクロは振り返りざまに言いつつ、軽く手を挙げて別れを示し、去っていった。

 メイトはそれをポケットに手を入れたまま、睨んでいた。


 殺す、か……。

 もし本当に殺意を向けられたら、対抗できないかもしれないな――安心しなよメイト、私は彼女たちを傷つけない。

 "私は"、ね。

ご精読ありがとうございました!

毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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