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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第2章】神聖アルディア魔法学校編

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【第90話】突発性懐疑症候群

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト・マルマロン

ハキマ・クォーツ

スピネル

ゾイ

アイカ

アクロ・アイト

イト

 『過去』があれば、『事実』がある。

 『事実』がなければ、『過去』はない。

 『過去』がなければ、『現在』はない。

 『現在』とは、『事実』の連続により生じる『結果』である。

 ――では、『事実』がないのに『結果』があれば、如何に。

 

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い――。

 全てなくなる、感情も思考も全部無に帰していく。全てが遡っていく。

 助けて、助けて、あ〜恐怖も無くなっていく、考えられない、痛みも無くなった。

 大丈夫かな、え? 何がそうなの? あ、そうか。私消えていくのか。いや〜怖いな〜頑張ってね信じてるから。

 私たちはずっと、信じることでなんとかなってきたんだから。

 信じることだけ誰にも負けない。私たちは頭がおかしいらしいから。

 ――ア、あ〜消えてする〜お母さん行ってきまス〜あ〜忘れ物〜分かんない疲れた〜お腹スイた〜何アレ知りたい嫌イキャッキャッ――――!!?

 ――その時、誰かが手を引いた。

 まるでその人が自分を引っ張り上げ、立たせてくれる感覚がする。

 一瞬、手を繋いだまま前を見て、誰かを見つめた。そこに意思が介入する余地はなかった、事実のみが存在する。

 そして、誰かと手を離した。

 そして、無になった。


――――――――――――――――――――


「……」

「……」

 カチ、カチ、カチと、周期的な、人間が作った時を刻む音を再現させた画期的な円盤が痛いほどの静寂を切り裂いていく。

 ペラ、とソファで本を読むスピネルは、半分閉じられた瞳で活字の海を泳いでいく。

 同様に、ソファに寝っ転がり自堕落そーにボーとするメイト。

 部屋には、その二人だけが無言でお互いに暇を潰していた。

 運動会から一週間経過した。

 例の悪魔やアイカの天使化などの出来事は、特段普段話すこともないクラスメイトとたまたま隣になった時に会話が途切れれば、「そう言えばそんなのあったねー」「やばかったねー」なんて数分の気まずさを紛らわせるくらいには、『問題』から『話題』へと昇華されたらしい。

 そして、アリーテールの消失に関しては、数日引きずるほど(みな)心を痛めていたらしい。

 数日とは言え、確かにクラスメイトたちとアリーテールの間に『仲間』という意識が生まれたのは事実だ。よって、らしい。

 初めてアリーテールと出会ったときのあいつなら、もはや誰も消えたことに気づかないレベルだったろう。

 なんて、漠然と思い馳せるメイトは、欠伸を漏らす。

「ふぁぁ……はぁ」

 いくら気を紛らわせても、何をしても俺の無知が脳裏に浮かぶ。

 アレからアクロのことを考えても、やっぱり理解できない。理解しないことにすることで意識してまた理解しようとする。

 だから、こんな浮ついた感情でしかいられない。

「あ、ちなみに非情とか思われたら非常に不快だし、皆さん理解してると思うが、一応補足しておこう。この学校で死んだ場合、おそらく"退学"という処置になるのだろう、だからアリーテールの消失は死んだのではなく今も五体満足であの曇った瞳も健在なのだろう」

 あんな死人が大量に出たと思われる事件があっても学校側は特に対処しなかったし、保護者からクレームがきた様子もないし記者会見的なことを開いたこともない。

 ここは異世界で人道的な対応がされない、なんて可能性を除けば、まぁ十分にあり得る説だろう。

「突然一人で何を言ってるのかしら、気持ち悪い」

 と、隣でいきなり毒舌を吐いてきたスピネルは、メイトのことを見ずに、活字を超えて行間すら読みながら呟く。

「独り言ですから、気にすんな」

「アリーテールが死んでない……妙案(みょうあん)ね、言われれば確かに可能性はあるわね」

 澄ました顔でスー、とコーヒー(冷)を(すす)る。

「お前は意外と悲しそうじゃないよな、ゾイは悲しそうだったのに」

「まぁね、慈悲はあるけど……そこまで関わってたわけじゃないし、そもそも私男ってあんまり好きじゃないから」

 その"死に設定"生きてたんだ。

 スピネルは昔、妹であるゾイが連れてきた、自慢するためだけの彼氏に犯されそうになり、男性嫌いになっていた。

「そういやお前男性嫌いだったな……つか俺は大丈夫なのか? 男だけど」

 ひょんと浮かんだ疑問を聞いてみると、スピネルはピクと体を硬直させた。メイトからは顔は見えない。

 なんだろう、なにか地雷でも踏んだのだろうか……。

 メイトは少しばかり罪悪感と杞憂を感じて、いや実は感じずに特に苦味のない固唾を飲む。

「さぁ? あなたは変人だけど……別に不快感はないわね」

「おぉ……それは良かった、前半罵倒されたけど」

「……」

 罵倒に関しては弁明は無しかい……いやいいけども。にしても――暇だな。

「やっpooooo!!」

 やたらハイテンションで静かな部屋に入室を決め込んだのは、スピネルが男性不審の原因を作った妹、ゾイである。

「おう、どした?」

「ゾイ……あんたもっと静かに入ってきなさいよ、うるさいわね」

「ゴメンゴメンちょっとバタバタしてたじゃん? だから伝え忘れててさ、頼まれてたこと、教えるよ」

「……あ、そうだった、完全に忘れてたぜ」

 メイトは体を起こす、ゾイは空いていたソファに座り、紙を机に置く。

「なんだこれ」

「全部データにしてみた、詳しくは読んでね」

 ドヤと自分の仕事の成果を褒めて欲しそうに威張(いば)るゾイに、とりあえず「おう」と生半可な返事だけしつつ、透明人間で紙を持ってくる。

「おぉ、まさか一年全員の出欠名簿か!?」

 そこには、一年生と思わしき名前と、なにやら数字が羅列していた。

「うん、名前は公表されている限りで確かな情報だよ、数字はその人が何日学校を休んだか」

「なるほど」

 相槌を打ちながら我がクラスを見つける。

 俺は……。

 メイト……20。

 ふむ、入学してからはや五ヶ月、どうやら俺は20回しか授業に出てないらしい。

 なんともまぁ、やはり準引きこもりの称号と名乗っていいようなデータである。(ドヤ)

「それで、"いた"のか?」

 口調が変わり、メイトは紙を机に置き訊く。ゾイはフッと微笑んだ後、一枚の紙を見つけ、メイトに渡す。

「いたよ、入学してから一度も授業に顔を出さず名前も分からない人、運動会にも出てなかった」

「そうか」

「私の友達に協力してもらって、寮の各階の入り口に張り込んでもらって、出てこない人を数えて、そのデータと照らし合わせたら、あらびっくり」

 ゾイは手を挙げておどけて笑う。

「七階より下で部屋から出てこなかった人はいなかった、つまりその人は八階より上にいる……確定だよ」

「なるほど、で、そいつはどこのクラスなんだ?」

「『特異魔法化』だよ、確定ね」

「特異……」

 アクロと同じクラスか……何が繋がりが……いや、深読みしすぎか?

「ちょっと、なんの話?」

 すると、今まで黙って聞いていたスピネルがジーと見つめてくる。

「俺の"ゲーム"の話だよ、イトが誰なのか、そろそろ確定させたいと思ってさ……――」

 そう説明するメイトの言葉は心ここに在らずという感じで軽いものであった。

「あぁ、その話ね……そういえば私を学年一位にする代わりに協力しろとか言われたわね――」

 スピネルが随分昔に思えるゾイと出会った時を思い出す。それを気にせずメイトは考える。

 イトはロリ校長と八階にいる。イトは未来を読める。

 ゾイのデータを信じるなら、イトは八階から出てきていない。

 ――ならば、アクロはイトではない。

 でもなぁ、コーラルが言っていたゲームが真実なら、そのゲーム内容はまるで未来予知レベルの先読みである。

「なぁ、"未来を読める魔法"ってあるのか?」

「え、未来? んー、ないんじゃないかな、聞いたことない」

「私も知らないわね、未来なんて、何がどうなっても分かるものではないわ」

「そうか、まぁだよな……」

 なら、なぜアクロはそんな神技をできたのか……――。

「メイト? どうかしたの?」

「ん、いやなんでもない……」

 ゾイに問われ、思考の渦から現実に帰る。

 まぁでも、次にすべきことは変わらないか。

「……よし、さてお前ら、次は一気にすっ飛ぶぞ」

「え?」

「……?」

 首を捻るゾイと、めんどくさそうに真顔で見つめてくるスピネル、そんな二人にメイトは立ち上がり答える。

「一位、アクロから一位の座を剥奪する……!!」

 二人の返答はなかった。考えもしないぶっ飛んだ宣言だったからか、ただ感動して言葉にならなかったのか。間違いなく前者である。

 と、その時なんの前触れもなく世界が揺れるような違和感を感じた。誰もが一度は経験する既視感、いわゆるデジャヴである。

 しかし、ただのデジャヴではない。

 何か大切なものが欠けた、非完成の既視感。何かが足りない、しかしその何かをそのデジャヴを感じた刹那の瞬間に思い出すことは、できなかった。

「メイト? どうしたの? またボーとしてるけど」

 たまゾイに言われてしまった。我に帰ったメイトは「おう」と、これまた生半可な返事を返した。

 あれ? なんだっけ――。

 感じた既視感も、そこに欠けた何かも、すでに単なる夢だったの如く、明確には思い出せなくなっていた。

 ただ、『"大切な何かを忘れた"』、その違和感だけが、心に残っていた。

ご精読ありがとうございました!

毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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