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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第2章】神聖アルディア魔法学校編

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【第89話】水面の月

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト・マルマロン

ハキマ・クォーツ

スピネル

ゾイ

アイカ

アクロ・アイト

イト

「んで? ゲームって何をするんだ?」

 体育祭の準備期間、ある日。

 夕暮れの実習棟、その廊下でアイカに狙いを定めていたコーラルの前に現れたのは、間違いなく『女』のアクロ。

 ゲームをしようと提案されたコーラルが聞き直す。

「じゃあ説明するわ、特段難しい訳じゃない、ただ一つ、"未来"を賭けて勝負するの」

「未来?」

「えぇ、『次あなたを殴る相手は、透明人間のメイトである』、私は真に賭けるから、あなたは偽に賭けるの」

 提案に、コーラルは一瞬固まる。暫し考えるコーラル、その隣を関係ない生徒が歓談しながら歩いて行った。

 え?

「それお前勝てると思ってんのか? クソ難しいだろ」

 コーラルが至極当然の返答をすると、アクロは生々しく微笑む。

「私って意地っ張りだからさぁ……ね?」

 脈絡のない言葉をアクロは呟いた、なんのことやらと悩んだコーラルは、ふと気がつく。

「それって、負けたら俺と――」

 ちょん、とアクロはコーラルの唇に人差し指を当てる。

「……」

 その微笑が、正解と物語っていた。コーラルは理解して一歩下がり手を払う。

 そうと決まればもはや取り繕う必要もなかろう、とコーラルは深呼吸しながら言う。

「ふぅ……はいはい理解したよ、あくまで"俺から"ってことね……いいね」

 ニヤ〜と醜悪に笑うコーラルは、再びアクロの魅力的な身体を舐めるように見る。

「それよりあなた、アイカを狙っているんでしょ?」

「なんで分かるの? 顔に出る? 俺」

「まぁ分かるのよ私……それでさ、よかったら使ってほしい魔具(まぐ)があるの」

 魔具(まぐ)とは、魔法の術式を組み、それを自動化した機械である。この世界にあるテレビやマイク、時計も魔具の一種である。

「なに?」

「はい、魔法が干渉しないロープと一定の空間のみ一時的に別世界にすることができ、誰も立ち入ることができなくなる札」

 いきなりすんごい物出てきた。

「な、なんだそれ、そんな魔具聞いたことないぞ、嘘か?」

 いらっと、理想的すぎる魔具にあり得ないと一笑して窓の外を見る。

「嘘じゃないわ、本当よ、信じて――」

 窓の外では、アイカとゾイが木の下で話しているのが見えた。なんの話をしているのか分からない。

 ふと、アクロはコーラルの肩に触れる。

「私は、あなたの味方」

「……――」

 その言葉に、コーラルはニヤと笑った。なぜか信じられる言葉の重みを感じた。

「クハハッ、楽しくなってきたな」

「あと一応あり得ないけど、もしあなたが負けたらあなたは『あなたから生殖機能を無くさなければならない』でいいわよね」

「……いいよなんでも、負けないんだから」

 透明人間に殴られるなんて、あり得る訳ないんだから。

「えぇ、その通り――あなたは勝つわ」

 コーラルには聞こえない小声で囁いたアクロは、自分の"思い通り"と笑う。

 ――――視線の先の若葉の一つが、落ちた。


――――――――――――――――――――


「――ッ!」

 目が覚めると、そこはベットの上だった。医務室である。

 貫かれたはずの心臓は正常に鼓動を打っている。まだ頭痛が酷い、魔力の枯渇だろう。

 静かだ。

 医務室に誰もいなかった。自分一人で寝ていたようだ。

 アレから何日経ったのか分からない、あの後どうなったのだろうか。

 アクロは自分の喉に触れ、口を開く。

「聞こえる? ――アレからどうなったの?」

 マイクと同じ両々で要領で、通話である。

「聞こえます、まずことの顛末(てんまつ)から」

 声の先にいるのは、女生徒。物静かで冷静な声音は言葉を続ける。

「まずアレから二日経過しました、アリーテールは死にました、建物は教師により撤去されました」

「そう、それで――あの男はどうなったの?」

 核心に迫る、低い声音で問う。


 相手側の生徒は、大きな窓から、アクロがいる医務室の方向を見ながら答える。

「"退学"と考えていいでしょう、アレ以来、千里眼で探しましたが、何処にもいませんでした」


 聞いたアクロは暫しフワッとした高揚感に呑まれつつ、確信する。


 ――勝った……!!!!


 醜悪にしかし楽しそうに細く上げられた口角、覗かれる八重歯は確実に獲物を狩る野生生物のようだった。

 未だ高揚感に浸っていると、向こうから声がする。

「これで殺しても良いと言うことですね、アクロ」

「……あんた、散々言っているでしょ? それはダメだつて、まだ"ゲーム"に勝ってないじゃない」

「"ゲーム"って……『お前がそうだと証拠を先にあげたほうが勝ちゲーム』のことですか? そんなの"対象"が先に言い出した戯言でしょう? 無視しましょうよ」


「バカ! それじゃつまんないでしょ!」


 アクロは少し強めに言う。向こう側は呆れた沈黙を返してくる。

「……」

「あんたは"今まで通り八階以降を占領"してればいいの、あとは私が指示するからしたがって」

「……はぁ、分かりました、私はあくまでもあなたの助っ人ですからね」

「えぇ、お願いしますね」

 そして、アクロは通話を切った。


――――――――――――――――――――


 ――まだフラフラする頭に、額を抑えながらベットから降りる。

「透明人間はやっぱり、"そう"だったね」

 アクロは思考をまとめる。

 最初の最初、まだ学校に入学する前に文字で交信した時、メイトは『通信した相手は一人で、そいつがここにきた』と錯覚している。

 偽、である。

 真は、この学校に来たのは"二人"であった。八階以降を立ち入り禁止にした女とアクロ。

 二人が見つけるべきものは二つ。

 メイトが"対象"である証拠、メイトが通信した相手である証拠。

 前者こそ、アクロがコーラルとアイカを利用して掴み出した証拠。

 あのコーラルに渡した例の札、"一定の空間を別世界にし、立ち入りをさせないという札"、それは偽だ、"特定の存在しか立ち入りを許さない結界を作る札"こそ、真である。

 そこに、メイトは入った。ならば真で確定。

 ならば、次に見つけるべきは通信をした人間である証拠。

 まぁあっちはそんなのいらないからさっさと殺してしまいたい派らしいけど、そんなつまらないこと、嫌だ。

 絶対、圧倒的に勝つ。

 負ける心配など微塵もない、相手をぶっ潰す自信に溢れた未来に笑う。

 にしても、やはり『ラプラスの悪魔』も衰えていない。コーラル・リーフの名前と顔があればそいつの未来は見える。故にコーラルが殴られることは分かっていた。

 やはり、透明人間であったとしても、確定の未来に進む運命の道をただ辿ることしかできないのだと、実感も湧いた。

 ここから始まる。今から取りに行く、メイトの尊厳と首を。


――――――――――――――――――――


 無事終わった運動会、いや何一つ無事では無かった。アリーテールは消えた、死んだんだろう。コーラルも勝ち逃げされた。アイカは恐怖を植え付けられた。

 アリーテールの消失と同時に、段々と、その暑さを和らげていく太陽が囁いているような気がする。

 お前のボロ負けだ、と。

 ――――理解できない。分からない。できない。

 夜月が静かに自分を照らしている、湖沿いをテキトーにぶらぶらして考えるメイト。

 コーラルが消えた、なのに校則にそんな校則は追加されていない。

 あの場にいたのは俺とアイカだけ、コーラルを殺す隙もなかった。

 どれだけ過去に戻っても、コーラルが消えることに繋がる校則はない。

 それに、アクロが女だっというのも謎。アクロは男なはずだ。見れば分かる。てことはコーラルの記憶を改竄かいざんか、その時だけ女として行った……なぜ?

 ……女ならゲームを受けるからか、色仕掛けでいけばゲームにノると読んだのか。

 じゃ、なんでゲームなんか仕掛けた? 単なる順位争い? いやアクロが一位ならそんなことする意味はない。なら仕返し? 今まで被害にあった女の子の恨みを晴らそうと?

 結局、なにも分からない。

 矛盾点と不明点が多すぎて頭が痛くなる。

 メイトは木製の柵に肘をつき、水面みなもを眺める。水面に映る美しい満月を見て、ため息を吐く。

「はぁ……まぁわかんないこと考えても意味はないか、ならこれからのことを考えた方が建設的……」

 メイトは気まぐれに、透明人間で水面の満月を揺らしてみた。

 しかし、どんなに揺れて崩れて乱れても、最後はゆっくり静かな満月に戻る。

 結局、メイトが何しようと、月はそこに写り続けるのだった。

ご精読ありがとうございました!

毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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