【第86話】アリーテールの消失
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
アクロ・アイト
イト
砕け散る氷塊は遅れて到来する熱波で蒸発する。
気体が流れ込むよりも速く移動したアリーテール、無を埋めるため空気が流れ込む。
それにより、爆発のような風と音が辺りに発生する。
精霊が生み出した閃光が尾を引いてアリーテールを追った。
あの広範囲の火事を起こすモノではない。
一点集中型、悪魔の首を切るためだけの一撃、それでも悪魔の周りの地面が溶岩になるほど熱い。
――アリーテールは、視力聴覚など、五感を全て捧げた、記憶も血肉も魔力も、生命として存在する為のエネルギー全てを費やした。
悪魔の斬られた首が落ちる。
――まさに、アリーテールの人生の最後を飾るに値するほどの、『世界の理』すら斬り開く、人智を超えた神の一撃だった。
「名も知らぬ若者よ」
しかし、首を切られ、死んだはずの悪魔が平然と立っていた。首は何事もなかったように繋がっている。
既にやることを遂げたアリーテールは、生気のない陰が被る瞳でただ、空を仰いでいた。
「汝の覚悟、実に見事でありました。私は永遠に、汝の一撃をこの首に焼き続けるでしょう」
鼓動が止まり血液が回らなくなったアリーテール。冷たくなっていく世界に、人知れず別れを告げていた。
「名も知らぬ少年よ――世界は惜しい人を無くした――」
悪魔は、そう、天に召されるアリーテールを追うように、讃美を送った――。
「――そう思うなら、助ける行為をしろよぉ!!」
次の瞬間、悪魔の首は再び落とされた。
息を殺し、背後に寄っていたアクロが、今まで抜いてこなかった自分の剣で、悪魔を斬った。
「――」
悪魔は急に天地がひっくり返り、真顔で固まる。
「はぁ、はぁ、カハ……はぁ――おい、てめぇがこれで死なないのも分かってる……だから、もう帰れ」
地面に転がった悪魔の頭に、剣を向ける。
「その剣は――」
「これは、世界の理すら斬る剣、『エクスカリバー』……これなら、"死ぬことがない"てめぇも殺すことができる、そして、次は殺す」
触れてしまう寸前のところまで剣の刃先を近づける。
「盗まれたと聞いてましたが……あなただったんですか」
「そうだ、今回の作戦にも必要だったので――それより、逃げないのか? それともここで死ぬのか?」
暫しの沈黙の中睨み合う二人、すると悪魔がため息と共に折れる。
「それを出されては敵いませんね……分かりました、ここは引きましょう」
「賢明だ、そして二度と来ないで」
「えぇ、そこは約束します……しかし、あなたが"帰ってきた時"、確実に殺します」
また心を掌握するような声音で言う。アクロは沈黙を返す。
「……では」
すると、悪魔の頭と体の下の地面に渦が生まれて、その中に落ちていった。
「……はぁ」
アクロは我慢していた血反吐を吐き、床に手をつく。烈火の如く燃える地面は自分の手を焼いていく、が気にする力は残っていない。
「ゲホッ、ゲボ――アリーテール君……」
霞む視界で、なんとかアリーテールに近づく。回復魔法を使えば間に合うかもしれない。
アクロ自身、魔力はこれまでの戦いとエクスカリバーを一度使った時点でほぼ尽きていた。
よって、触れなければ魔法が届かなかった。
大丈夫、助ける。誰も悲しませない、そのために私は――。
――しかし触れようとした瞬間、アリーテールは姿を消した。
「――」
間に合わなかった。消えてしまった。
「うぐっ、ぐぶぅ……」
助けられなかった人がいる、その事実が、アクロの心を捻る。
そして、後悔に満ちた心の中、ゆっくり、死ぬように気絶した。
――――――――――――――――――――
あり得ないだろ、彼氏とか。
先刻、メイトが先生と別れた後のこと。
アイカ!
「――ッ」
一つ目の可能性を潰すため、特設された医務室まで走ってきたメイト。
道中崩れ乱れた廊下を渡るのに、だいぶ時間を食ってしまった。
――そこに、だれもいなかった。
「……アイカはいない、そりゃ外だろうけど一応な……――」
メイトが歩き、アイカが寝ていたベット見る。
コーラル? だったか、そいつがアイカを連れ出したのは確定で、襲うかは半々か。
だがそれでも心配だ、彼氏がなんであれ、心配するのは当たり前。
なにより、嫌な感じがする。
「ここにいないなら、校舎の方の医務室……もし襲うなら人気のない安全な寮の自室か?」
――アイカは正直、『いい女』である。傍から見れば軽く惚れてしまうほど可愛いし、肉体が良い。
俺も理性を保つのにどれだけ頑張ったことか……いや今はどうでもよくて、もしコーラルがアイカをレ○プしようとしているのなら、止めなければいけない。
考えろ、あの一瞬の邂逅で見抜けた裏から、そいつの思考を読め。
メイトは顎に手をやり、目を細く上げ、脳みそが千切れるほど回転させる。
寮……静か……性癖……この状況、混乱――。
が、その時。
がーん!! と横の壁が壊された。メイトはなにか防ぐわけでもなくゆっくり、ギロッとそちらを睨む。
そこには外で戦っているはずの悪魔が浮かんでいた。どうやらこの部屋に用があるようだ。
思考の邪魔をされたメイトは、イラっとする。
なんだよこいつ、ここに用があるってことはアイカに用があるってことだよな。
はぁ!? まず誰だよこのおっさん、悪魔みたいだけど……てか悪魔か? アイカは天使みたいだったし、因果があるのか。
まぁどうでもいいや。
メイトは、自分の存在に気がつかない悪魔に、拳を握る。
「うるせぇよ」
過去最高に憤怒が混ざった声音で呟いた後、拳を出す。それに合わせて想像した透明人間が悪魔の顔面を殴る。
悪魔はそのまま後ろに吹っ飛んでいった。さらに上から肘でぶん殴る。
全て、ライカから吸収した戦術である。
「邪魔するじゃねぇよ……。とりあえず、寮に行こう」
そして、殴った悪魔に一切構わずに振り返り、医務室から出ていった。
――――――――――――――――――――
「外に結構人いるなぁ、避難してないんかい」
ドームの外には、たくさんの生徒が屯していた。
何やってんだこいつら、助けるならしろよ。
メイトは嫌そうな視線を向けながら、生徒の隙間を走っていく。
「あ! め、メイト!!」
と、その時後ろから声がかけられた。咄嗟に振り返ると、そこには焦るハキマがいた。
「ハキマ! 良かった! スピネルは無事か? 他のみんなは?」
「うん、みんな大丈夫、ゾイゾイも大丈夫、今ネルネルと一緒にいるから」
「そうか! 俺はやることがあるからもう行く!」
「やることって?」
メイトは振り返りながら片手を上げて別れる。それにハキマは手を掴み止める。
「――アイカを助ける、もしかしたら危機にあるかもしれないから、そうだ、アイカどこにいるか知らね?」
「あ、アイカ? えーと、分かんないや」
「そか、悪いありがとう!!」
「え、ちょ――――」
ハキマの言葉を聞かずに、メイトはバッと走り出す。
とりあえず寮に行けば、誰か見ているかもしれない――。と、考えた時。
「――ぎゃあ!!!!」
「うわぁ!?」
「キャーーーー!!!!」
背後から落雷のような閃光と轟音がした、耳鳴りが酷い、地面が揺れる、何かがあった。
周りの生徒たちを慌てふためいている。
「――アッツ、なにこれアッツ!! 暑い暑い!」
「なんか温度上がった? なんか暑い!」
暑いらしい。
暑い? 炎? なにがあったんだ? あの悪魔か?
「――メイト!」
すると手を掴んだのは頬に汗をかくゾイだった。
「あ、ゾイ……な? やっぱ生きてただろ? 大丈夫だ!!」
「う、うんそれは良かったけど――あそこで何が起こってるの? あの、一つ質問があるんだけど……」
ゾイは嫌な予感がするように、視線を逸らしながら訊く。
「アリーテールはどこにいる?」
あ、アリーテール……こいつ。
「ごめん分かんない、でも多分、いや分かんないけど、あーアレだな、いや、うん」
「は?」
メイトは顔を逸らして顔を顰める。
くそー、なんとか誤魔化さないと……落ち着けバカ、冷静に語れば誤魔化せるッ!
「多分、部屋とか?」
「嘘だッ!!!!」
「うおっ!! びっくり!?」
俯いて叫んだゾイに、メイトは肩を跳ねさせて驚く。メイトは、何かが鳴く頃に聞こえそうな叫びに、答える。
「なぜバレた!?」
「メイト嘘下手すぎ! アリーテールはどこにいるの? もしかして、"戦ってたり"なんかないよね?」
察しがいいゾイに、メイトはウヤー…と唸った後、答える。
「ま、まぁそう……」
「――――そんな! 助けに行かないとッ!」
……俺を止めた時の「自己犠牲はなんたら」というのをそっくり返したいくらいだ。
「待て待て、お前が行っても何も変わらん、ここは待機するのが適切だ」
「そのセリフ、あの時のメイトにそっくりそのまま返したいね」
思考の揚げ足取られてしまった……なにお前メンタリスト? すごいな。
「あぁ〜悪い――じゃあ、死なないでくれよ? 本気で」
メイトはこれ以上止めたとしても無駄だろうし、それに止めれば止めるほど自分に特大ブーメランが飛んでくるような気がするので、止めるのをやめた。
「うん、死なないよ、それに私はメイトとは違うから」
ニヤと、冷静さを取り戻したゾイは笑い、周りを見る。
「ねぇ聞いて!! アリーテールが今あそこで戦ってるの! だから私は助け行こうと思う!! 誰か助けに着いてこない?」
そう叫んだゾイに、周りの人間はざわめきをやめ、ゾイに注目する。
えぇ……コミュ障の俺にはどだい無理なことを簡単にやってのけるッ、そこに痺れる憧。
「ねぇ、私たちも行っていい?」
有名なセリフを阻まれ、喉の途中で食べ物が詰まったような不快感を感じていると、横ではゾイに話しかけている。特に面識があるわけではない女生徒たちがいた。
「あなたたちは?」
「私たちはアリーテールと同クラ、アリーテールは友達だから助けに行っていいよね」
その女生徒三人は、アリーテールと同様にアルディア対抗魔法試合の選手と選ばれた人たちである。
なん、だと……アリーテールあいつ、俺を差し置いてハーレムをやっていたのか……?! まさか主人公か?
すると。
「俺もいくぜ!!」
「僕も行く! 任せとけ!」
「私も、な!!!!」
さらに後ろから知らない男子生徒たちが来た。
「……」
「………?」
当然というように、誰も全く知らない。
「誰ですか?」
ゾイが戸惑いながら訊くと、一人の男がフッと笑った――。
「しがない……HEROです――」
誰だよ。
「あ、そう……あ、ありがとう助かるよ」
「うん、俺に任せて」
「いや僕に」
「私にな?」
どうやら、こいつらはゾイにいいとこ見せたい輩のようだ。
ゾイ、面いいからなぁ……そしてあの愛嬌もプラス効果を生み出しているのだろう……分かるぞ、兄弟よ。
「すごいな、一声で三十人くらい集まったんじゃないか? これが、『可愛い』の特権なのですか?」
「まぁね、これならメイトも心配ないでしょ?」
「あぁ、特にあの男たちは信頼してるな」
「え? あ、まぁ……じゃあ行ってくる!!」
ゾイは愛想笑いで誤魔化した後、グッと親指を立てて、ぞろぞろ引き連れて走っていった。
とりあえず男子諸君に敬礼を送った後、振り返る。
……てかこんなことしてる場合じゃねぇ、アイカだよ。
思い出したメイトは、少しアイカに謝罪した後、走り出した。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




