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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第2章】神聖アルディア魔法学校編

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【第85話】死ねる理由

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト・マルマロン

ハキマ・クォーツ

スピネル

ゾイ

アイカ

アリーテール

アクロ・アイト

イト

 アリーテール君、君は凄い人だな。

 頭を斬られ、血を流すアクロの脳内は、鋭い痛みにより更に冴え渡っていた。

 なぜ君がこの世界に生まれたのか、私はやはり神を恨むよ。

「はぁぁッ!!」

 刃こぼれが目立つようになってきた氷剣で、悪魔の首を斬りかかる。

「……邪魔です」

 しかし片手で軽々しく捌かれる。悪魔は一切アクロを見ないで、アリーテールを警戒する。

「心配か? いくらてめぇでもあれを食らったら死ぬよな」

「ハッ、『死』なぞ、私から最もかけ離れた存在でしょうが……まぁでも、血は出るかも知れませんね」

「プッ――イキがんなよ強がり、ハハ」

 アクロと悪魔はお互い斬り合いながら話す。しかしアクロは本心では懸念はあった。

 この魔力量……本当に一撃でやれるのだろうか。

 確かにアリーテールの魔力量は多い、しかし、こいつを殺せるほどとは思えない。

 マズいな……。

 アクロの脳裏に、薄く黒いモヤがかかり始める。

「そろそろ遊ぶのもいいでしょうか? 私も急いでますので……殺しますか」

 その瞬間、悪魔が剣を人間の神経を伝う電気信号をの速さを超える、神速で剣を振る。

 そして、アクロが気がついた時には、既に剣は振り終わっていて、目の前に黒雷撃(こくらいげき)が迫っていた。

「――ッ!」

 なんとかギリギリのとこで避けたアクロ、頬に擦り血が出る。

「アリーテール君!!!!」

 と、その時アクロは叫んだ。同時に悪魔の足を全身全霊で斬った。断つことできない硬い足、しかし少しくらいは足掻きになるはずだ。

 アクロの叫びを聞いたアリーテールは、身を屈め、抜刀の構えになる。

「……」

 息をするのも忘れるほど集中したアリーテールは、停止する世界の中、悪魔の首元へと一直線に繋がる光の線を、感じた。

 斬る!

 その瞬間、ただ光を辿り跳んだアリーテール。空気を切り裂く音が響き、刀の赫色の霊気は一段と濃さを増し、情熱の炎を尾を引かせながら悪魔の喉元にその殺意を向ける。

「『先入観』、だから負ける」

 その瞬間(とき)、悪魔が後ろに避けるアクロを見下す。

 その悍ましく冷酷無惨な声音が、アクロの背中の"何か"を悟らせた。

「――ッ!」

 "それ"は、先刻、悪魔が放った黒雷撃である。

 そいつは意思を持ったように曲射して、的確にアクロの背中に向かい――。

「――」

 アクロの背中から腹に、貫通した。

「ぐふぁ!!」

 アクロの口からドス黒い血が吐き出される。背中から完全に斬られた体から血が吹き出す。

「放ったモノは操作できない、なんて先入観が命取り……」

 アクロは血を吐いたまま転がり落ちる。

 わずか、二秒にも満たない時間で行われた、全てをひっくり返す"一撃"。

 アリーテールの目の前に、アクロが落ちてくる。

「――ア――」

 その光景に、脚の力が揺らぐ。昂った感情が一気に沈んで冷めていく。

 覚悟が揺らいだ。

「ウワッ!!?」

 本能的に急停止してしまった。しかしもちろん急には止まれないので、土煙を立てながら進んでいく。

 精霊との波長もズレ、せっかく交わした魔力も大量に外に漏れた。

 やっと止まった頃には、眼前に立つのは自分の二倍ほどある、ツノが生え、まごうことなき悪魔。アリーテールは絶句した。

 怖い。

「……先ほど一瞬、私を殺せる、確実な殺意を感じました、しかし、あなたにはどうやら"なかった"ようですね」

 そう上からゴミを見る視線でアリーテールを見る悪魔は、腕を振るった。

 なぜこの時、魔法を使わなかったのか、分からないが、ただ純粋な力で、対抗したかったのかも知れない。

 アリーテールの顔面に悪魔の拳が繰り出された。骨が砕ける音を立てながら、遥か方向の岩に飛んでいった。

「……では、私は私の任務を遂行しますかね」

 そして悪魔は振り返り、上を見る。

 そこは、医務室であった。

「……ま、待て……行かせない、アイカは殺させない……!」

 刀を支えにフラフラ立ち上がるアクロが、悪魔に嫌悪の視線を向ける。

「……満身創痍でしょう? 動かないほうがいいですよ?」

「もともと殺す気だったんだろうが……この野郎……カハッ――」

 ぼたぼたと口から垂れる血と、滝のように流れる血が地面に血溜まりを作る。

「はぁ、では死んでください」

 悪魔が呆れたように剣を振る。そして黒雷撃は、避けることのできないアクロに向かって、無情にも、斬りかかる――。

 ――土煙が舞う。

「あの様子じゃ回避は無理でしょう、……それより早く処理しますか」

 悪魔はフワッと浮かび、医務室の壁に近寄り、剣を振る。

 壁は簡単に壊れ、穴が開いた――。


 ――吹っ飛んでいたアリーテールは、痛みで何も考えられないほど、精神が崩壊していた。

 しかし、その中、ただ一つの目的だけは完遂しようと、本能が動いていていた。

 ぶっ殺す……――!!

 激怒(さつい)が、溢れ出る。

 それはあの悪魔にではなく、自分の浅ましさの愚かさにである。

 あの時、覚悟が折れたんだ、だから失敗した。情けない自分がウザくてキモくて仕方ない――!!

 忘れるな、この怒りを。

 もう曲げるな、人間が一番奮い立つのは怒りなんだから。

「精霊……もう俺の全てを貰ってくれ――だから、さっきの一撃に勝る魔力を今僕にくれぇッ!!!」

 憎悪に満ちた、醜悪な顔で悪魔を睨む。

「……"全て"ですか、それは確実に命を落とすという意味ですが、良いのですか?」

「はぃ! いいので今すぐ、あいつを殺させてください!!」

 歯を割れんばかりにギリギリと擦る。


「あなたは、透明人間の言葉をなにも理解してませんね」

 

「――ッ」

 その言葉に、アリーテールはハッと我に帰る。

「あの透明人間は、あなたに、『辛かったら逃げろ』と伝えましたよね、なのにあなたは自分を犠牲にするほど追い詰められているのに、なぜ逃げないんですか」

「……」

「どうしても殺したいからですか? 違いますよね、忘れてますよね――――あなたは私になんて言いましたから?」

 精霊は少し怒った様子でアリーテールを諭す。

 殺意に満たされた思考に、刹那、綻びが生まれる。そして、その希望は、大きくなっていく。


「みんなを、助けたいから……」


 一時(ひととき)の怒りで忘れてしまった、自分が命を張る理由。

「誰にも、傷ついて欲しくないから……! だから僕は、ここにいるんだ!」

「そうでしょう――刀に宿る精霊の立場から言わせてもらいます――――」

 精霊は自分の胸に手を当てて、力強く続ける。

「『誰かを殺すために振るう剣』と『誰かを守るために振るう剣』は、力が全く違います」

 精霊は、ギロっと下から睨んだ後、フッと微笑む。

「聞きます――あなたは、何のために剣を振るのですか?」

「僕は――」

 その答えに、自分で辿り着いたアリーテールは、覚悟だけではなくその覚悟を揺らがせない核たる理由が、脳に刻みつけられる。

「みんな助ける!!」

「はい、その希望に満ちた魔力を私は食べたい、力をあげます」

 殺意に満ちた魔力なんて、マズいに決まっている。なら、希望と慈愛と自信に溢れた魔力の方が、美味しいに決まっている。

「では、僕の全てを」

「はい、ならば、私の全身全霊で――」

 精霊は再び瞬きする瞬間に消えた。刀身は赤黒い霊気(オーラ)を纏う。

「必ず、助ける」

 アリーテールは、剣刀を顔に近づけて、反射する自分を見る。

 みんな、あんなに準備して、あんなに楽しんで、それを壊したことは許されない。会場をぐちゃぐちゃにして。なによりアクロ君を斬った。

 でも、忌んではない……でも、罪は無くならない。

 だから、誰かを助けるために、"あなた"を斬ります。

 アリーテールはバッ! と腰を落として、抜刀の構えをする。

 今までとは違う、格段に"何か"が変わった風貌である。

 視線の先には、最後に抵抗するアクロに斬撃を喰らわせる悪魔がいる。悪魔は浮き上がり、ある場所の壁を壊している。

 ……怒りはない、大丈夫。――大丈夫、僕が助ける。

 カタカタと、近くの小石が波を打つように揺れ始める。大地がアリーテールの代わりに怒りに震えるように、揺れ始める。

 

 アリーテール君……やっぱり本当に凄いな……。

 血が止まらないアクロ、既に視界が霞み何を見えないほどになってきた。

 それでも、まだ立つ。

「ッ――あ"ぁ"!! 待て、待っでよ"ぉ!!! ガボっ――」

 そう血で溺れそうになりながら叫んだアクロは、氷剣を構える。内臓のズレで更に激痛が駆け巡る。

 その静止も虚しく、悪魔は開いた壁に入っていく。

 ダメ、だ。アイカを殺させない……――なぜ。

 その時、疑問が一つ浮かぶ。根本にある、質問。なぜアイカを殺させたくないのか。

 一つ。

「計画の、邪魔だがら"ぁッ!!!!」

 違う、ほんとは正確に支障はない。しかし、プライドが許さない。



「うるせぇよ」



 その時、悪魔が入った医務室から、低くて恐怖心を煽る声音で、言葉が聞こえてきた。

 あいつの声じゃない。この声は――。

 アクロは目を疑った。

 宙を舞って跳んできたのは、先ほど一切の隙がなかったはずの悪魔だったから。

「――」

 悪魔自身も理解不能そうに、眉を歪めて医務室の中を睨んでいる。

 と、更に悪魔は上から何かに押されて、地面に叩きつけられた。

 地震と疑うほどに地響きが鳴るほどの勢いで叩きつけられた悪魔は、地面に手をついて項垂れる。

「……?」

 理解不能。一言に尽きる。

 ――ねぇ、精霊。今だけ、これまでやってきたこと、今やっていること、許してください。私たちは、あなたたちに不利益にはなりません。協力してください。

 でも、それでも無理なら。

 今だけでいいです。お願いします。

 全く、意味の分からない申し出だと、自分でも理解している。しかし、そんな余裕がないほど千載一遇の好機。

 "奇跡"は起こる。

「分かりました、力を貸します」


 ――何が、あったんだ、私に。

 未だ理解不能の悪魔は、頭を触りながら顔を上げる。目を丸くして痛む鼻に触れる。

 私が、殴られたとでもいうのか。

 その時、ザワと殺意を感じた。避けながらな振り返ると、そこにはアクロがいた。

 あの傷でまだ……いや、なんだあれ。

 アクロの傷は薄く光っていた。アクロも動きにくそうに剣を振るう。

「――まだ、だ」

 また、アクロは斬りかかってくる。悪魔はもはや避けるのも面倒くさく、もう確実に殺してしまおうと、剣を構える。

 はい、終わり――。

 ドン!! と、体を揺らす魔力を感じる。

 この気配ッ、あの子供か……しかしこの魔力量、まさかあのような子供が私に勝るとでもいうのか。

 アクロは見逃さない、悪魔の精神がアリーテールを畏怖したことに。

 まるで、悪魔と通じ合っているかのように、悪魔がアクロへの意識が最小になったとき、剣を振った。

 脚に当たった剣、そこから氷が現れ、抵抗する間もなく悪魔は天を貫く氷塊で、氷漬けにされた。

 な、これは……氷魔法? いや違う、そんな優しいモノではない、私に魔法が効かないことも理解しているはず、ならば、これは。

 悪魔はアクロが持っていた氷剣を思い出す。

 精霊……――!?

「あ"、アリーテール君!!」

 そう叫びながら後ろに避けるアクロ、凍らして出血を止めた身体から、血が出てくる。

 

 僕の全て、魔力とは根本――『生命力』。

 暗闇で何も感じない、見えない聞こえない。それでも、あいつの首だけは解る。

 そして、アリーテールは踏み込んだ。

 それは、『世界』すら認識できないような神速をも超越した速さで、爆熱も轟音も光すら置き去りにして――――悪魔の首を斬っていた。

ご精読ありがとうございました!

毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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