【第84話】死ぬ理由
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
アクロ・アイト
イト
アクロの攻撃に一切の澱みはない。完璧と言わんばかりの剣戟である。一般人が挑もうものなら、それはもう軽々しくモブのようにあしらわれるだろう。
しかし、そんなアクロの唯一の非合理的な部分としては、剣を紐で結び、抜けないようにして戦っていることである。
「……はぁ、こんなこと予想してなかったなぁ、せめて他の剣でもあれば……」
吹っ飛ばさせたアクロは、めり込んだ岩から降りながら呟く。
ガラガラと音を立てて岩から脱出する。
「この剣は最後の時にしか使わないようにしてたけど……仕方ない、一撃で仕留めるしか――」
「アクロ君!」
アクロが剣の紐を解こうと触れた時、後ろから声がした。
紐から手を離し、振り返る。
「アリーテール君、なんでここに……」
「審判の人は僕が外に連れて行ったから安心して、それと、助けに来た」
アリーテールの手には、幾千年の歴史の全て凍て付かせる極寒の厳冬の如く凛と冷気を放っている氷剣が、構えられていた。
「その刀は……」
「こ、これは僕の――友達の刀で、今日のために貸してくれたんです」
「そうなのか、いや、なんだか凄そうな刀だったから」
「は、はい、この剣にいる精霊はとても優しくて、僕の魔力を少しづつもらっていくんです、だから何度も使えるんです……――大体の精霊は一回だけで全部持っていきますから……」
アリーテールが精霊の力を使う時に対価に差し出すものは、自分の魔力である。
精霊は普段は空間に存在する自然発生した、もしくは生物から漏れた魔力を吸って生きている。
しかし、やはり直接濃い魔力を生物から摂取するほうが効率が良いし美味い。
特段、アリーテールの魔力は精霊を惹きつける魅力があることは、本人に自覚がない。
「精霊……なるほど、まぁ分かった、助力感謝するよ」
「それであの、勝てる算段とかあるの?」
「んー、ないことはないけど……できればやりたくないことなんだよ――アリーテール君はなんかないかな」
アクロは自分の剣を焦ったそうに微笑んだ後、アリーテールに問う。
「あります――僕の一撃で、倒せます……!」
アリーテールは覚悟に満ちた表情で答える。アクロは少し驚いた後、微笑を浮かべながら剣を腰に戻す。
「よし、ならそっちでいこう、俺はどうすればいい?」
「はい、僕のこの一撃は"溜め"が必要です、でもそれをすると魔力が出で敵に位置がバレます」
ふんふん、と相槌を打ちながら聞くアクロ。
「その間、敵と戦って欲しいです、僕に近づけないように」
「どれくらいかかる?」
アクロは顎に手をやり、自信に溢れた表情で、片目でアリーテールを見る。
「三分は……欲しいです」
「ふむ、その間あいつを食い止め続ける、か」
実際、アクロは攻撃が効かないだけで、何度も吹っ飛んでいる。それは悪魔が放つ例の黒い斬撃の被害を最小限に留めようと、流したり受けたりしているからであった。
事実、周りへの被害の考慮を無視すれば、アクロはもっと対等に戦える。
「まぁ、やってみるよ――その代わり……」
アクロは爽やかな笑顔を浮かべながら答え、アリーテールの剣を指す。
「その氷剣貸してくれないかな、俺の剣はちょっとアレだから」
「え、この剣ですか? いいですけど……」
「ありがとう」
アクロは氷剣を受け取ると、今まで発していた冷気がなくなる。
「あ、ちょっと精霊に頼んで力あげてもらいますね、普通の人が使うよりも強くなりますよ」
こういう特別な剣は使用時に特殊な効果が伴う。
氷剣は周りが凍ったり、火剣は燃えたりと、それぞれの力がある。それはその剣に憑く精霊のお陰である。
ならば、精霊と話せるアリーテールが直接お願いすることにより、その効力を増してくれるのだ。
しかしアクロは近寄るアリーテールを無視して剣を振る。風が切れる高い音がして、アリーテールは一歩下がる。
「ふむ……いいよ、多分無理だから、俺、精霊に嫌われてるし」
ヘラっと八重歯を見せて笑うアクロは、満足したように剣を片方で振り回して相性を確かめる。
「軽いな、まぁこんなもんか――じゃあ行ってくるよ、しっかり溜めておいてくれな!」
アクロはボソボソ呟いた後、岩から飛び出した。
「――うん!!」
アリーテールは霊気を纏う小刀を抜き、顔に近づける。
集中、僕の全てをこの刀に――――。
――――――――――――――――――――
「――ッ」
莫大な魔力を感じた悪魔は振り返る。
そこには神速に到達するほどの速さで間合いに入るアクロがいた。低姿勢でバランスを崩した構え、しかし、反撃の猶予がないほど速い。
ピン。と空気が切れる音すら置いてきぼりにするほど速い『斬』。
しかしあと少しのところで悪魔は消えるように避ける。
「流石に避けるか……まぁ気長に行こう」
すぐに体勢を立ち直し、悪魔に再び斬りかかる。
しかし悪魔は、二メートルはある、蛇のようにひしゃげて曲がった悪霊に煌めく漆黒の刀を、振る。
また、黒い雷撃が飛び、アクロに勝る神速でアクロに向かう。
避けるのは簡単、けど、もし避けたら多分ドームなんか越えてどこまでも飛んでいって全てを斬り壊すだろう。
避けずに流す。極力被害のない空もしくは地面に――。
アクロは氷剣で黒雷撃を受け、剣技で流し空に飛ばす。
黒雷撃はそのまま加速、膨張していき、雲を切り、やがて薄くなり消える。
今は上手くいったけど、絶対流せないような攻撃は来る。そうなると剣で上手いこと掻き消すしかなくて、そうなると後ろに吹っ飛ばされる。
「なかなかキツい任務だなー」
アクロはたははと嘆きながら、キッと悪魔を睨む。既に次の黒雷撃は来ている。
まだ十秒……残り二分五十秒……頼んだよアリーテール。
――僕は、卑怯者だ。
精霊の力がなければ何もできない。
昔からそうだった、学校で虐められたときも、精霊のせいにしていた。
精霊と話す、キモいと虐められる。
精霊と話さない、キモくないと虐められない。
なら、僕が虐められるのは精霊のせい?
試すのが怖かった。精霊が悪いと、確定させてしまうのか嫌だった。だから、僕は精霊と関わり続けていた。
でもホントは分かっていた、これこそ僕の最低最悪の性根。
――精霊と話さなくても虐められれば、一体誰のせいにすればいいんだろう――。
確定させなかったのは、『精霊のせい』じゃなくて、『自分が嫌われていること』だった。
むしろ確定させないことで、『精霊が悪いかもしれない』ということで精霊をどこかで悪にして、それを僕がさせないと、偽善者の気分だったのかもしれない。
僕が守っていたのは精霊じゃなくて、僕自身、それだけだった。
こんな自分が反吐が出るほど憎くて、殺したくなるほど浅ましくて――それでも誰かに認めて欲しくて、そうも思うことも最悪で。
――そんな時に、彼女たちが僕に話しかけてきて、僕を認めてくれた。
『――嫌いじゃないわよ、あなた――』
今でも鮮明に覚えている言葉。ゾイにかけてもらった言葉。
理解している、僕を利用するために言った嘘なんだろう――でも、救われた。
罪悪感に囚われ、苛まられていた僕の心に光が差した。
それから、変わろうと思うようになった。メイトの役に立って、メイトがあの後お礼に来た時、嬉しかった。
こんな人間でも、誰かの役に立つことができて、それは許されている。そう信じるようなった。
だからこの運動会に参加しても、過去の自分が否定してくる。逃げろ、関わるな、不幸になる――こんな自分が誰かと楽しくしちゃダメだ――そんな呪縛がいつも脳裏にあった。
でも、僕は今ここにいて、アクロ君と戦っている。
その事実が、僕に勇気と覚悟をくれる。
神様、こんな命で足りるか分かりませんが、捧げます――――だからこの僕に、あいつを倒せるだけの力をください――。
その時、剣に棲む精霊との波長が噛み合う。
――今だけ、みんなを守れる、力をください!!!
その瞬間、アリーテールは感覚で理解する。到達した、自分と精霊が噛み合い、共鳴していることに。
今なら、僕の全てが刀に流れて、全力が――。
アリーテールは立ち上がり、岩から出る。
そこには、頭から血を流す、全身傷だらけのアクロが敢然と悪魔と戦っていた。
「うぉあ!!」
悪魔は一切怯むことなく、直立不動でアクロの剣を捌いている。
その時、悪魔がアリーテールを見る。規格外の魔力量の漏れに、目を丸くする。
ここで死んでもいい、だから今――!
一世一代、天下無敵の一撃を!!!!
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




