【第83話】君かみんなか
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
アクロ・アイト
イト
「んで? 控え室には何しに来たんだ? 忘れ物とか言ってたが」
ここは生活魔法科の控え室、アリーテールの控え室である。
「う、うん……まぁ」
アリーテールはメイトの質問に茶を濁しながら、あるロッカーを開ける。
「やべぇな、おい……」
外、窓から見える光景を見て言葉を無くす。
アクロと悪魔によって剣戟を繰り広げられていた。
華麗なる、秀麗な剣捌きに目が惹かれる。別に危機感がないわけではない。だがその絶世の動きに、場違いにも感嘆してしまったのは事実である。
「こ、これです」
ほんの数秒見惚れていると、後ろから声がかけられる。メイトが振り返ると、そこには一本の短刀があった。
「それが忘れ物?」
「…….これは、僕の友達の刀なんですけど、その……使わせてもらおうって、思いまして」
「使う?」
アリーテールが鞘から抜くと、唐草模様のような黒い線が刻まれた紅く光る刀身が、姿を表す。
「おぉ、なんかかっこいい」
「この子で、僕は前、広場を焼いたんだ……」
アリーテールはツツ……と刃を指で撫でる、我が子を見るような優しい瞳で。
「あぁ、そうだったのか」
「だから、今もやろっかなーって、はは」
「……え?」
アリーテールは誤魔化すように無理矢理口角を上げながら剣を構える。
「僕が、あいつを倒す……!」
不安に苛ままれる精神に、理性で押し勝つ。
「……すげぇな、お前」
「だからメイトは逃げていい、僕はこれからアクロに参戦するから」
「そう、か……まぁ妥当だな……――でも、俺だけ逃げるなんてできない、お前が戦うなら残る」
ドン! とメイトは胸を張る。
「いいんだよ、無理しなくて」
「無理してるのはお前だろ、さっきから視線が惑いまくってるぞ?」
「――ッ、いやそれでも!」
アリーテールは一歩、メイトに踏み寄る。眉を顰めた心配そうな表情で剣を強く握る。
「みんながこんなに大切にしていた運動会を壊したことは許せない」
ザワ、とメイトは罪悪感があった。
まるで純情熱血主人公で、他者のために頑張れる凄い人。俺と大違い、俺は大切な人のためにしか頑張りたくないタチだ。
悪魔がなんなのか、戦うことで何か分かるかもしれなかったけど、ここは。
メイトは悩んだ挙句、手を挙げる。
「――分かった、あの広範囲の攻撃なら一般人の俺が邪魔なんだろ? ……大丈夫、俺は逃げるから思いっきりぶっ放してやれ」
「え、あ、うんそうだけど……ありがとう」
「そういう"正義"は、性分じゃないんでね」
メイトはそう言って、振り返り悪魔を見る。
今では大きな黒い剣で戦っている。一切り一切りの斬撃に雷のような黒い衝撃が走っている。
今ではドームの痕跡なんてないほどに会場は崩壊している、ここが崩れるのも時間の問題である。
「じゃ、僕は行ってくる……メイトは早く離れてて!」
「おう、死ぬなよ本気で無理すんなよやばかったら逃げろよ? 俺が許すから」
「そんな覚悟が揺らぐことを……分かったよ、行ってくる」
そして、アリーテールは腰に携えている氷剣と、今手に入れた小刀の二つを持って、走っていった。
「さて、避難しとくか……ハキマたち外にいればいいけど」
メイトも廊下に出て、ぐちゃぐちゃになった廊下を見て、安全そうな道を探す。
と、その時。
「あら? あれは……?」
バッと振り返ると、そこには医務室で見た治療関係を任せられた先生がいる。
「あ、ども」
「ウワッ――あ、透明……メイト君か」
「そうです、先生はまだ逃げてなかったんですか」
「え、えぇ、ほら、アイカちゃんが倒れたじゃない? だから私だけ逃げるものアレかなーって」
「そうですか」
となると、アイカも外に運ばれたのだろう。寄ろうかなーなんて思ってたくらいだから良かった。
「俺も今から逃げるとこですよ」
「そう、なら私と――――」
と、先生がメイトに手を伸ばした瞬間、大きな揺れと轟音が近くにくる。
近いな、ここも崩れるぞ――。
メイトの予測通り、揺れに耐えかねた天井が二人に落下する。
「キャッ!?」
――――……?
先生が身を伏せ頭を守るが、岩は落ちてこない。恐る恐る顔を上げる。
「大丈夫ですか? ここも早く逃げないと崩れますね」
片手を上げて、平然とするメイトが先生に手を差し出していた。
「――あ、ありがとう……すごいね」
先生は驚きながら透明の手を掴み立ち上がる。
「いえ、これくらいは……それより早く」
「う、うん」
先生とメイトはサササと岩の下から避ける。メイトは力を抜き、岩を落とす。
ふぅ……危なかった……とにかく早くここから逃げよう。
「じゃ行きましょうか、出口はあっちです」
「分かった」
壁をぶっ壊して出てもいいけど、また崩れればカバーできるか分からないし、ここは変に壊さないほうがいいだろう。
瓦礫が散乱する廊下を歩くメイトと先生、すでに天井が落ちたり床が抜けたりしていて、ただ歩くのも困難であった。
うわー、ここも抜けてる……迂回するほうが安全か……クソ、こんなとき魔法でも使えればなぁ。
メイトが引き返そうと振り返った時、先生が浮かない顔をしていた。
「どうかしました?」
「え、あぁううん……ちょっと心配でさ」
「心配? 誰か気になる人でも?」
「うん……」
先生は窓の外を眺めて、ある部屋を見る。
「"コーラル君"、無事アイカちゃん守れてるかな……って」
メイトは聞いたことのない人に眉を寄せる。誰か先生の一人だろうか、しかし『君』って……とズレた予測をする。
「コーラルさんって、そんな先生いましたっけ?」
「え、あぁ違うよ、コーラル君は生徒だよ、まぁアイカちゃんの大切な人ね? あぁアイカちゃんは、ほら試合中大変なことになって倒れた――」
コーラルは、先生でなく、生徒。
メイトは目を丸くする。
大切な人=彼氏だろう、ならあの時、俺が医務室に忍び込んだ時、入って来た男か。
「……それって、どんな感じで任されたんですか?」
「え? えーと、ほら私は治療魔法に全部を捧げてきたからアイカちゃんを運ぶ魔法がなくてさ、そしたらコーラル君が背負ってくれたんだよ、私は持っていくものがあったから少し遅れて、先に運んでくれたんだよ」
「運ぶって、どこに……」
深刻そうな声音のメイトに戸惑いながら、先生は思い出し答える。
「……多分医務室かな、怪我人を運ぶんだったらそこしかないだろうし」
信じられるかそんなこと。
「すみません、用事を思い出しました、先に逃げてください」
「――え!? ちょっと――」
メイトは先生の横を駆け抜け、走り出した。先生の静止を聞かずに進んできた道を走る。
あの男、まず彼氏なんて有り得るわけない。
一体いつ彼氏彼女の関係になる時間があったのか。俺とゲームした時は間違いなく彼氏なんていないだろう。
その後も俺の従者となっていて離れた時間はない。
なら、運動会の話が出てきたあたりの、従者を解放された後から今日までになるが、運動会のプレッシャーでそんな余裕があるようにも見えなかった。
なら『嘘』である。
彼氏と嘘を吐いて接触しようとした理由は、天使の件なのか知らんが、間違いなく危惧すべきことなのは確実。
なら、助けなければ。
メイトは医務室を目指して走った。
――――――――――――――――――――
数刻前、メイトと別れた後のアリーテール。
ごめんね、勝手に刀使わせてもらう……。
「精霊さん! また力を貸して!!」
するとパッと手乗りサイズの少女が出てくる。しかし普段は華麗に煌めいている蝶のような羽も、今はシュン……と萎んでいた。
「私の主人は私を置いて逃げてしまったのですか……」
なんかすごい落ち込んでいた。
「今は緊急事態だから仕方ないよ……それより力を――」
「は、ははは、まぁいいんですけどね……――それで力を貸すとは何故でしょう?」
アリーテールは外につながる隙間を見つけて外に出る。
辺りは修羅場で、抉れた地面や瓦解した会場。光景に思わず絶句する。
大きな瓦礫の裏に隠れて、アクロと悪魔を見ながら唖然とする。
「……無視しないでくださらないかしら?」
「あ、すみません……あいつです、あいつを倒したいんです」
「――……へぇ、なんだかすごいことになってますねー」
「そうなんです、だから止めないと」
刀に座ったままの精霊は、口を手で隠して微笑む。
「あいつを止めたいのなら、相当の力が必要ですけど? いいんですか? 悪ければあなた、"死にますよ"」
精霊は相手を試す、鬼胎を誘うような声音で問う。それでも、アリーテールは自信を持って答える。
「僕は、"みんな''がいてくれればいいんです」
誰も不幸にならない、そんな幸せな世界に。
「――……そうですか……まぁいいでしょう、その覚悟に免じて、力を貸します」
「……! ありがとうございます!!」
「ただし、想像を絶する痛みが伴います、生半可な精神なら、簡単に折れますからね」
「覚悟の上です!」
すると、精霊はフッと消える。そして短刀は赤黒い霊気を放出し始める。
アリーテールは一度、短刀を鞘に戻し、腰に携え、岩の裏から出る。
「ふぅ……覚悟を決めて――断つ!!」
アリーテールはずっと腰に携えていた、もう一本の氷剣を抜く。
「アクロ、今、助太刀します」
アリーテールは深く呼吸してから、走り出した。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




