【第81話】静寂と書いて恐怖
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
アクロ・アイト
イト
「さぁ! 決勝戦じゃー!!」
司会人の大きな声がドームに響く。それに合わせて、席に座っている生徒たちの拍手が飛び交う。
「決勝戦の選手はこいつらだ!」
バーン! と、光と煙と紙吹雪の演出があり、登場したのは支援魔法科、アリーテール。
「支援魔法科! アリーーーテールッ!!」
氷河のような蒼白い刀を手をする、キノコ頭の男。
真っ黒な眼から、静かなる闘志が伺える。
「えー彼はすでに一度試合に出たのですが、その試合は不戦勝となったので、運動会規約によりノーカウントとなります」
アルディア対抗魔法試合は、最大四回戦う、そのためクラスで四人選考する。そして一度試合に出た者はもう試合に出ることはできない。
「不戦勝? なんだそれ」
「お前知らねぇのか? 二回戦だよ、アリーテールが出た時、相手の……ホラ、例の透明人間が試合を棄権したから戦わずして勝ったんだよ」
「あー、俺トイレ行ってたわ、そんなことあったのか」
「な、あーあ! 透明人間対学年一位、見たかったなぁ」
……すみません。
こそこそ会話を盗み聞きしていた、隣の例の透明人間、メイト。
「そして! 特異魔法科――"アクロ・アイト"!!!!」
その名前が読まれた時、メイトは目を開いた。
アクロ……アイト、"フルネーム"……なのか――。
そいつは、アリーテールと同じような演出の中、煙を割ってで出てきた。
浄血のような紅が光を反射して、緑にも青にも見える爽やかね短髪。
鋭い目つきで、金色の瞳。畏怖を覚えるほど静かで爽やかな顔。
所作全てから、並の人間でないことが察することができる。
「なんだ、あのイケメンは……」
「うざいな……」
ボソボソ話す、先ほどの男子生徒たちの声は、もうメイトには届かない。
メイトは顎に手をやり、アクロを睨んでいた。
アイツ、確か天使を心底睨んでたやつ、だったよな、なにか天使について知っているんだろうか。
そしてその腰には、紐で固定され抜くことができないようにされた、鞘に収められた剣。
「決勝戦は、この二人による試合になります!!」
アナウンスが台本を読み進んでいく。
「では!! このアルディア対抗魔法試合、けっしょ――――」
「――すみません、少しだけ、俺に話させてください」
司会の声はかき消され、誰かの声がマイクを乗っ取る。
「失礼、俺は今みんなの下にいる、アクロだ、この場を借りて少し誤解を解いておきたくてね」
アリーテールは自分の首元を触って、一年の席を見上げながら喋る。それは、澄んで優しくありつつ、力強い声だった。
「今、学園でアリーテール君が一位、と噂が流れているのは、みんな知ってるよね……誤解だ」
アクロは刀に手をかけて、力強く答える。
「俺が"本当の学年一位"だ、だから、彼に変なことはしないでくれ」
優しく微笑むアクロを置いて、一年は反応に戸惑う。アクロはそんなみんなを横目に、振り返る。
「会長、失礼しました、お返しします」
「え、あ、あーー、戻ってきた……」
会長というのは、司会人のことである。
「ちょ、ちょっと待って、どうやってマイクを……?」
マイク本体は確実に司会人が持っている。なのにアクロは声をマイクに乗せていた。
「そのマイクと呼ばれる"魔具"、仕組みは十三個ぐらいの魔法の組み合わせた物ですよね、同じような魔法を使えば、自分だけでも再現できますよ」
サラッと簡単に言うアクロ、しかしそれはものすごく高等技術だった。
司会人は絶句して、目の前の男を尊敬する。自分よりも若いのに、格別に差がある。
この事実には、教師たちでさえ目を疑っていた。こんなことができる生徒、類を見ない。
「そうですか……では、試合を始めます、か」
ぎこちない言葉に反応して、いつもの審判役の女生徒が出てくる。
その人が見えて、二人も歩き出し近づく。
「では、試合前の握手を」
「はい」
「……」
審判に促され、アリーテールとアクロは握手する。
「悪かったね、被害を被らなかったか?」
「い、いえ、特になにもなかったです……それにしても本当に一位なんですか?」
アリーテールは下から、覗くように見上げながら訊く。アクロは一瞬沈黙した後、フッと微笑む。
「そうだよ」
アリーテールは、固唾を飲む。
これから戦うのは、世界最高峰の魔法学校、そこに入試最高得点で入学した人。その事実がアリーテールの足を震わせる。
「お互い、ベストを尽くそう……実は俺楽しみだったんだよ、君と戦うの」
「そ、そうなんですか……」
「うん、あの透明人間の戦うのも興味あったけど……君の"精霊"にも興味がある」
「――――知ってるんですか」
"精霊"、世界中に存在しているが、アリーテールしか干渉できない存在。
彼女たちのことを知っていたのは、これで二人目だ。
「うん、普通の人は分からないと思うけどね」
「あ、メイトも知っていましたよ」
それを言われ、アクロはピクッと肩を跳ねさせた。
「知っているのか、彼も――」
アクロは、チラッと白い八重歯を見せながら微笑んだ。
「え、あぁうん、前知っていたんだ」
「それはどこで知ったか分かるかな?」
「……いや、ただ"信じてた"ってだけで……なんで信じてたのか分からないけど」
「そうか……まぁいいや、さ、戦おうか」
「は、はぁ……」
アクロはキラっと八重歯を見せながら、振り返る。アリーテールは首を捻らせながら離れる。
「では、腕を振り下ろした瞬間、開始です」
審判女生徒は、ピシッと腕を掲げて見せる。二人は刀に手を置く。
二人とも、刀と剣。前世でアニメで死ぬほど見てきた構図だが、実際見ることなんてないし、ありえない状況なのだ――。
――しっかし!!!!
「異世界なら、不思議じゃないんだなぁ!!」
「――びっくりしたぁ……」
メイトは腕をビシッと掲げて、瞳を輝かせていた。デカい声に隣にいたゾイが耳を塞いだ。
日本の魂とは、『SAMURAI』に帰結すると、どこぞで拝聴したことがある。
勇敢で賢明、命を張れるほどの精神、練りに練り上げられた秀美秀麗な剣技の数々が編み出す太刀筋。
日本男児として生を成したのなら、その漢気溢れる生き様に胸を躍らせ、腕を震わせたことがあるのは、皆が通る道であることは周知の事実の筈。
そう、言わば『真剣勝負』――みなそれに憧れを抱くのだ。
――『ジャパニーズSAMURAI Soul』こそ、日本の魂と、呼んでも良いのではないだろうか……。
そんなこんなで。
「かませー!!!!」
要は剣戟って、めっちゃカッコ良くね?
「では!! アルディア対抗魔法試合決勝戦、開始です!!」
そして、アナウンスと共に、腕が振り下ろされた――。
――――――――――――――――――――
黒い渦が生まれた。
審判女生徒のすぐ後ろに、縦二メートルほどの面的な渦が生まれる。
アリーテールとアクロは、その渦を眺めたまま固まり、同じように試合会場全体も固まる。
メイトが棄権した時の静寂が『驚愕』といい、アイカが天使になった時の静寂を『不明』というならば。
今、全てを飲み込まんとする静寂は、『恐怖』であろう。
その瞬間、渦の中から人が出てきた。しかし人とは言い難い、大きな黒いマントにウネウネと曲がったツノに、射殺さんとする目つき。
――悪魔だ。
次の刹那、悪魔が腕を振るった。
アクロは反応して剣を抜き、誰にも追うことができない速さで審判女子生徒の前に立つ。
目視できる、謎の黒い斬撃が飛ぶ。
轟音と共に、地面が抉れる。
「ぐあぁあああぁぁ!!!」
その斬撃は地面を切り上げながら、客席に届く。複数の生徒が攻撃に当たってしまった。
煙で被害の様子が見えないが、ただ事ではない。そんなのことをやっと理解した全員。
「――うぁぁああああああア!?」
「キャーーー!!!!」
「ぎゃーーー!!」
「ああぁーー!!!」
阿鼻叫喚、逃げ惑う生徒たち。メイトはそいつらに当たらないよう既に走り出していた。
「メイト! 逃げないと!!」
「俺はいいから! ゾイは先に逃げてくれ!」
「なんで!?」
「ハキマたちだよ! もし最初の攻撃に当たってたら、助けに行かないと!!」
メイトが生徒を掻き分け向かう先は土埃が舞う場所。
もしあいつらがまだ俺を探して会場に散らばっていたのなら、可能性はある。
「危険だよ!」
「それでも――――!!」
「――みなさん! 避難してください!! 危険ですから避難して!!」
と、アナウンスが流れる。
ちゃんと責務を全うする、司会人の鏡である。
「ゾイは外でハキマたちを探してくれ! こっちにいなかったら俺もすぐ逃げる!!」
「自己犠牲はダメだよ!!」
と、そう怒りを込めて叫んだゾイに、腕を掴まれる。
「……」
「……」
メイトは足を止めて、振り返らずに固まる。ゾイは顔を巡らせた後、メイトを睨む。
「行かせない、二次被害に合うかもしれない、落ち着いて、こんな時こそ合理的に――」
「――すげぇ冷静だな……俺自身、多分今熱くなってるのは分かる……――でも、ここで逃げて『ハキマたちは巻き添えになっていて助からなかった』になったら……」
メイトは振り返り、ゾイの腕を触る。
「――俺が一番望まない世界なんだよ、それは」
ゾイは、つい、手が緩んでしまった。メイトはそれに合わせて手を引っ張り、走り出す。
「あ――」
ゾイは何も言えない。多分分かっているから、ああなったメイトは、もう止まらないんだろう。
「大丈夫!! 死んでも生きるから!! ――ゾイは外を頼んだ!!」
メイトはそう言って、全速力で客席の間を走っていった。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




