【第80話】同類だから
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
イト
医務室に運ばれたアイカ。
薬品の匂いが漂う特設された医務室の、大きなベットに寝かされるアイカを囲み、アイカのクラスメイトの女子一人と、医療関係の先生がいた。
「先生、アイカちゃん大丈夫ですか?」
「えぇ、今の所は、呼吸も安定しているわ、血脈も安定……命に別状はないから安心して?」
「そ、そうですか……よかった」
試合中、突如天使のような何かに取り憑かれたアイカは、あの後目が覚めることはなく、静かに眠っていた。
「アイカ、何があったんですか?」
女子が訊くと、先生は神妙な顔つきで、アイカのおでこを撫でる。
「……こんなこと、教師として情けないんだけど……分からない、としか言いようがないわ……呪いの類なのか、召喚魔法の一種なのか、それとも他の何かなのか……前例がないからなにも言えないの……ごめんなさい」
「い、いえ、いいんです!」
女子は教師の落ち込み具合に、手を胸元で振って頭を下げる。
「――実は、これが最初じゃないの」
「え?」
教師がふと、呟く。女子はパッと顔を向ける。
「アイカちゃんの入学試験のとき、今回と同じようになることがあったの。当時はほんの一瞬で、アイカちゃんも倒れたりなんかしなかったから危険視されないで、『五位』という位置付けになったの」
あの数十秒の天使化でもその強さは全ての生徒の脳裏に焼き付けた。そこを考慮すれば妥当な評価である。
「そう、だったんですか……」
暫し沈黙した後、女子の耳に外からアナウンスが聞こえる。
「――あ、試合始まる……すみません、私はこれで」
「えぇ、アイカちゃんはこっちで見ておくから安心して」
「ありがとうございます、では」
女子はパタパタ頭を下げながら、教室を後にした。
残った教師は掛け布団をアイカの首ほどまで優しく上げてから、心配そうに見下ろした後、自分の席に戻り、事務作業に再開する。
「………」
――そして、ずっとこっそり横から見ていた、完全透明化したメイトはすやすや眠るアイカを見る。
天使、としか言えない。
仮に天使でなくとも、天使と呼ぼう。
アイカに天使が扱える、ということは自覚していないのだろう。そんな隠し球があるなら最初から運動会にあんなに不快感を出さないはず。
なら外部からの攻撃、乗っ取りなんて線もある……けど。
メイトはあの時、天使と合った視線を思い出す。
冷静に思い返すと、あの瞬間、俺と繋がっていた。ただ見ただけじゃなくて、確かに俺からなにかを受け取った。
つまり天使は俺目的で現れた可能性もある。
……でも、それが何が分からない、こういうのに詳しそうなやつって言やー…。
メイトは顎に手をやり、眉を寄せる。
あ、あの精霊とか詳しそうだな……いつか訊いてみるか。
と、アリーテールの助力で話したことのある、傲慢お嬢様手乗り精霊を思い出す。
と、その時。
こんこん。
「どうぞー」
「――すみません、アイカが倒れて来たんですけど……今大丈夫ですか?」
入ってきたのは、頭の後ろをかき、愛想笑いを浮かべる男。
……クラスメイトか? まぁ、アイカの安静も確認したし、これに乗じて出よう。
「え、えぇ大丈夫ですけど、あなたは?」
メイトは足音と気配を出さないように、ゆっくり移動して、男が開けたドアに近づく。
「俺は……まぁ、アイカの彼氏と言いますか……」
メイトはその言葉を聞いて、廊下に出た瞬間に固まる。
か、カレ? ――彼氏?
「あら〜そうなの? 今は安静にしているから――」
教師はそれを聞いて、頬を染めて、初々しいカップルを見る大人的な視線を向けながら、立ち上がる。
「はい、すみません」
男は逆手で、ピシャッ、と扉を閉めた。
廊下で立ち呆けるメイトは、ハッと、我に帰り、歩き出す。
かか、彼氏、ねぇ〜……――。
――――――――――――――――――――
廊下を進んだ先、隠れるように曲がり角にいたのは天使と戦った、誰よりも近くにいたゾイだった。
「お、ゾイ……大丈夫? 怪我とかしてねぇよな?」
「まぁ……」
ゾイは浮かない顔で、俯いて答えた。
「……まぁ、そんな責任負うなよ? ゾイは何も悪いことしてねぇよ」
「え?」
メイトはゾイの隣に並び、壁に寄りかかる。
「自分が煽ったからアイカはああなった、なんて考えるなよって、ゾイは悪くないから」
「……知ってたんだ」
「俺を誰だと心得る、透明人間だぞ? そこらへんちゃんとしてる」
アイカが運動会の練習に強制参加した時、ゾイがアイカに言った『チェック』のくだりの会話を、メイトは陰で聞いていた。
「――……なんか、イラついてさぁ」
「ん?」
ふと、自分のつま先を見ながら呟いたゾイ。メイトはゾイを見ないように、窓の外を眺めながら聞く。
「アイカ、自分の意見を言えないガキみたいだし……ウジウジしてたから……――ごめん」
ゾイは少なくとも、アイカが倒れたことに自分が関係してるのではないかという罪悪感から、謝罪する。
場にはなんとも言えない、気まずい静寂が流れる――。
「それだと、俺が一番大人ってことになるけど!」
しかし、メイトは気にすることなく、殊更に明るく振る舞う。
「メイトは……メイトも子供みたいって思う、自分のやりたいことしかしたくない、傲慢な子供」
「んー、正解だな! 自分でも結構難ある性格だなって思うわ」
メイトは全く悪びれる様子なく、頭をかく。
「それで私が嫌らしいやりかたでしか人と関われない、一番の小根の腐ったガキ」
「…………………」
ゾイは自分自身を失笑する。そんなゾイに、メイトはつい息をするのを忘れてしまった。
だが、すぐ我に帰り、ゾイを見据える。
「なんでゾイは、あんなこと言ったんだ? ホントは根に持つようなやつじゃないだろ?」
「ホントはどうでもよかったんだよね、アイカなんて、でも……逃げて欲しかった、だから嫌なやつ演じて、戦いたくない! って心から思わせたかった……けど、それ以上にアイカは我慢強かった――のと」
ゾイは壁から離れ、窓枠に手をかける。遠く昔の、セピア色となった思い出が淡く浮かぶ。
「私と同じだったから」
強がって、平気なふりをする。我慢すればいいと言う思考が共通していた。
ただ違いは、"魔法の才"があったか、なかったか。
「私はこんな振る舞いをすることで、"我慢しなければいけない状況"を作らないようにしてきた、アイカも同じだと思う……でも神は非情で、アイカには才能を与えなかったから、アイカだけ今回、あんなに追い詰めたられた」
お互いキャラを演じてきた『同類』であるから、助けたかった、と。
「……優しいな、お前」
「――でも、私は結局なにもできなかった、助けるなんて、私には無理だった……でも」
ゾイは振り返り、メイトに微笑みかける。普段の彼女から一転、感謝に満ちた笑みである。
「メイトが"してくれた"とき、すごい嬉しかった。ゾイもあれで変われたみたいだったから――ほんと、感謝してる」
逃げていい、とか、戦え、とかじゃなくて『好きなように生きていい』なんて、言われるとは思っていなかった。
「――あー、いや、正面切って言われると恥ずかしいな……お、俺は別に誰かに向けて言ったわけじゃないし……ま、まぁ元気になったんならよかったよ」
「はは、まぁ――"そういうこと"にしといてあげる」
それは、普段の彼女が浮かべる、相手を冷やかすような、ニヤニヤとした笑みだった。
逆に、安心する。
と、その時、微かにアナウンスと音声が、コンクリートに反響して聞こえる。
「――治療魔法科オルレアナの降参により――勝者、特異魔法科ルシフィアーー!!!」
どうやら知らないうちに試合が始まっていたらしい。
「あーあ、負けちゃった……まぁ、今となってはどうでもいいけどね」
「特異魔法科……?」
「シードの奴らだよ、空間魔法とか時空魔法とか呪怨魔法とか、高レベルの魔法を使う奴ら……変人が多いって噂だよ」
「へー……」
なにその主人公がいそうな学科……正直ちょっとかっこいい。
「そういや、なんで治療科に入ったの? ゾイって治療とか興味あんの?」
ゾイなら攻撃魔法関係だと思っていたメイト。ゾイは顔を巡らせてから、照れ笑いしながら答える。
「私、治療魔法だけは不得意なんだよね……だから」
だから得意になるために入った、と……――。
「すごくね!? 普通得意のとこ入るけど逆に!? 向上心高ー」
「ま、まぁ簡単だよ」
さすが九位と言ったところか……でもゾイの他に、アイカ抜かして残り上位が七人いるってことだろ? すげぇな。
「あ、次アリーテールのクラスじゃん」
「あぁ、あのキノコの……あいつめちゃ可哀想だったよ、メイトが来ないし、来たら不戦勝だし、ずっと棒立ちしてただけだったから」
「そりゃ悪いことしたな……謝っとかないとな」
「ホントに、あ、てか次が決勝じゃん!」
気がつけば、『アルディア対抗魔法試合』も、問題は多少合ったものの、決勝戦まで進んだ。
残ったのは、アリーテールのクラスと、特異魔法科、メイトもゾイもアイカも落ちてしまった。
「残ったのはアリーテールのクラスかー、こうなりゃ勝って欲しいな」
「だね、メイトの数少ない知り合いだもんね」
「ま、まぁな……なんならクラスメイトからは嫌われてるからな……たはは」
「はっ! 確かに!」
なんて、くだらない話をしながら階段を登り、客席に出た――。
青空の下、入場のアナウンスを流す、散々な目にあった司会人の女生徒。
これで決勝……やっと終わる……あの透明人間、メイトだって? あの子から色々ズレてさぁ? そしたらアイカちゃんがすごいことになって……会場の雰囲気が浮ついてるんだよなぁ……。
机に突っ伏して、落ち込む女生徒。そこに、気弱そうな男子が近寄る。
「あの先輩、そろそろ入場のアナウンスお願いします」
「え! あ、あぁごめんごめん――……よし!」
司会人は頬をパチっと叩いて気分を入れ直す。口角を上げて、マイクのスイッチを入れる。
「それでは! ついについに!! 決勝戦だぁーー!!!!」
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




