【第79話】降臨
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
イト
「守るだけで勝てるとでも思ってるの?」
ゾイは爆風により靡く小紫色の髪を押さえることもせず、ジッと視線の先の女を見る。
「……」
この魔法試合にて、一切攻撃せず防御に徹している相手。
服や顔が汚されても構うことなく、ただ攻撃自体を防御するだけに尽力するアイカである。
その勝敗の傾き方は、誰がどう見てもゾイが優勢であった。
波打つように変形した地形や、燃える芝生に巨大な氷塊、その全てが、アイカに向けられたものだった。
その試合を観戦する生徒たちは、一方的すぎる試合に、絶句していた。
……。
「反撃しないの? 少しは頑張ってたんじゃないの練習、魔法で勝つんでしょ?」
ゾイは茶化すようにニヤニヤ微笑みながら、下から見る。
「何言ってるのかしら? あなたは今負けてるのよ?」
さも当然のように答えるアイカは、これまでとは確実に変わった自身に満ち溢れた顔で笑った。
「負けてる?」
「えぇ、『ゾイはアイカに攻撃を試みたが、一切攻撃が当たらず魔力が尽き、負けた』……ってこと」
「――へ〜……つまり、守りだけで勝つと? そんな頑張ってでも勝ちたいんだ、迷惑かけたくないの? それもと承認欲求?」
「そんなことないわ、あんな人達のために勝つとか運動会がどうとか、どうでもいいもの……それより、今はあなたに負けたくない気分なの」
迷いのない、曇りなき目で、ゾイを睨んだ。
「あ〜、そう……ならいいよ、ノってあげる」
ゾイは指を振ると、ボッとアイカの周囲の芝生が燃え始める。
「私は火炎魔法しか使わないであげる、どっちが先に折れるか、勝負だね?」
ゾイが手に力を込めると、燃える芝生はだんだんと昇る高さや火の粉を増していく。
パラパラと、草が燃える音がアイカの耳に入る。息をするだけでも肺が焼けるように痛い。
すぐ対熱防御魔法を張る。
「いいわよ、言っとくけど『死なせない程度』なんて考えなくていいからね……よし――」
アイカは意気込み、全てを、防御魔法の端から端、極細部に至るまで、その精度を洗礼させてゆく。
「……」
あっま。
ゾイは、真剣な顔つきを意識しながら、"緩む頬を耐えていた"。
私の魔法が、火炎魔法だけ、と信じてる時点であなたの負けなのよ。
魔法なんて、組み合わせでなんとでもなる。
風魔法で風圧を作ったり、熱魔法を組み合わせて熱風を出したり、「防御しないとヤバい」なんて思わせるのは簡単なのよ。
そして、こっちの多種類の魔法を使う方が、私的に省エネ、それに私は魔法の威力を緩めたりできる。それに対してあっちは常に精度の高い防御魔法を張り続けないといけない。
分はこっちにある――――。
一方、アイカは。
……本当にこの炎が熱いという証拠はない。でも、ほんの少しでも魔法を緩めればそこから綻びが生まれて、負けるなんてこともある。
もしあっちが複数の魔法で、効率的に使っているとしたら……私が不利。
今、『耐える』のゲームに変わったことにより、私は『守る』以外のことをしたらプライドとして負け……でもあっちも火炎魔法しか使わないと言ってたし……。
「ねぇ、ちゃんとやってよ、"火炎魔法"」
「やってるよ?」
……"揺れ"は見えない。嘘をつくなら少しぐらい心が揺れるはずなのに、全くそんな様子はない。
あいついつもヘラヘラしてるからなぁ……。
そう考えている間にも、どんどん炎は大きくなっていき、もうゾイが見え隠れするほどに、周囲を覆っていた。
まぁいいか、私はやっぱり、耐えるだけだ!
アイカは雑念を捨てて、顔を下げ瞑目した。
ゾイは、そんな見えなっていくアイカに神経を尖らせる。
防御魔法の精度が上がった……隙がない。でも、雑念は消えたっぽいな〜、なら多少大雑把に魔法を使ってもバレないだろうな。
ゾイは、圧倒的魔法の細部センスで、最高効率の魔法変換構成を作り出し、繰り返す。
勝てるんだよなぁ……。
天使がいた。
――――――――――――――――――――
……?
逆光のような神々しい光が発生する。
半眼から覗かれる、幾何学的な模様が刻まれる琥珀の瞳に、同じくその模様を切り取り、着色したように、頬に模様を浮かべている。
「なんだ、あれ……」
隣のやつが、無意識に呟いた。
会場の全員が呆然とそれを眺めた後、思い出す。
これは夢でも妄想でもない、紛れもなく現実であり人生であり事実であることを。
それでもなにを言うわけでもなく、ただ脳がショートしたように動けなかった。
そんな中メイトだけは階段を駆け下り、一番下の柵から身を乗り出し、そいつを見た。
頭上には、天使の輪っかである光輪が浮遊していて、なにより服を突き破り背中から生えた大きな純白の翼。肩ほどまでだったアクア色の髪も、腰ほどまで伸びている。
散々アニメやら漫画やらで見てきた、天使そのものであった。
「……」
「――――」
アイカの変化についていけないゾイは、すっかり魔法のことなんてすっかり忘れて、ただ硬直していた。
と、その時。
「――」
メイトと目が合った。
確実に透明な目がどこにあるのか分かるっているように、メイトに視線を合わせた。ゾッと、不覚にも畏怖してしまったメイトは小さく固唾を飲む。
天使は暫しメイトの目を見つめた後、視線を外し、ゾイを見る。
ゾイはその生物的に感じる危機感に、足が震える。
「あなたと戦う……という解釈でよろしいのでしょうか」
その瞬間、アイカは掠れたか細い声音で、囁いた。そして、手を出す。
光が集まっていき、それは形になっていく。
剣だ。アイカと同様に神々しく煌めく剣が、アイカの手に現れた。
ゾイは反射的に手を構え、魔法を使おうとする。それに、メイトは叫ぶ。
「"待て"!!!!」
すると、ゾイはビクッと反応して魔法を止める。
――その瞬間、アイカのその剣は、ゾイの首筋を撫でていた。
「………」
「――……は、ぁ……」
息を呑んだゾイは、恐怖で動けず、細い喉を通る空気が漏れる音が聞こえる。
「戦わなくていいから――敗北宣言しろ」
確証もない、誰なのか、これがなんなのかも分からない――が、ただ言えることは、異世界物定番の予想外の事態であって、異世界物の定石で、つまりは命は簡単に切り捨てられることだけだ。
「"戦うな"」
その言葉にアイカはピクっと肩を揺らす。震えるゾイの首に刃筋を当てながら、葛藤する。
そして。
「――まぁ、そっちですよね……」
まるで諦めたように目を伏せた後、剣を下ろす。
アイカは暫し周りを見る。メイトを一瞥して、後方を振り返る。
「……」
そのアイカの視線の先を、メイトは追うようにそちらに目を凝らす。
そこには、赤髪の、一人の男が立っていた。
「……」
その男はアイカを恨む様な殺気を孕んだ視線を向けていた。アイカはその視線を受けながら、メイトを見た。
「……」
なんだよ、あいつは俺になにを求めてんだよ……喋ってくれ……。
とその時、アイカはフッと身体を跳ねさせる。すると、光輪や翼は消えていて、剣も光へと飛散した。
なんだったんだ……俺と、関係があるのか……あいつは、なんなんだ?
メイトが、漠然と考えていると、会場がまた、メイトの時とは異なる静寂に包まれていることに気がつく。
予想外の事態が起こったことを、理解できない感じだ。
と、その時アイカが、力をなくしたように倒れた。硬直が解けたゾイがそれを受け止め、地面に寝かせる。
「ちょ、ちょっと……生きてる?」
まるで生気を無くした、ボーとした顔で、天を見る。
「な……な、なんだっ――け……?」
体の自由が効かないアイカは、ボソボソ掠れた声で呟く。
「アイカ……」
「どうやら、戦える状態ではありませんね」
ふと、気がつくと、開始の合図をした女生徒が、ゾイの横に立っていた。
「そう、ね」
ゾイの返事を聞いて、女生徒は司会人に向かって手を挙げる。
司会人はそれを見て、ため息を吐いてからマイクを持ち、スイッチを入れる。
「えーと……アイカ選手の戦闘不能により、勝者、治療魔法科、ゾイー!!!」
シーン。
なんで今年の試合はこんな問題あるのぉ!?
司会人はメイトのことと言い、今のアイカと言い、会場を凍らせるハプニングに、思わず嘆いた。
――――――――――――――――――――
「どうした? いきなり立ち上がって」
生徒寮、八階、ある部屋にて。
窓に手をついて、建設されたドームを睨む、一人の女子生徒。
「おーい、何してるのかね? やはり君も参加すればよかったなんて思っておるのかね?」
「冗談を……それより黙っていてください今考えているんです」
「君は私が校長だということを忘れていないかね……」
同室で暇を持て余していたのは、メイトの言うロリ校長である。よって、ドームを睨む生徒は、メイトの言う因縁の相手、"イト"である。
「……まさか……いや、そんなわけ……」
「……君、別にゲームのために引きこもるのはいいんだが、たまには運動したらどうだね」
そんな言葉もイトには届かない。
――これは『神』が放つ、特有の魔力だ。なぜこのアルディアでそんなものを感じた……それも数十秒で消えた……。
「……まぁ、今はいいでしょう」
疑問は残るが、別に危惧すべき問題でもない。今は保留で十分だ。
にしても。
「――こんな暑いのに、よくやりますね……」
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




