【第78話】快楽主義
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
イト
あんなこと言われたら、反応せざるを得ない。
理性ではなく、本能で――感化されたのだろう。
「……好きなように、か」
アイカは、控え室に向かっている。数分前とは打って変わって、光を取り戻した瞳で前を見ている。
「私の好きなように……メイトはあんなことしてまで私に伝えようとしてくれた」
試合を任され信頼され、あんなに楽しそうだったのに、見捨てたのだ。
全く、私と同じなんかじゃない。
私は信頼されて、それを失うのが怖くて、だらだら引きずっていただけだったのに、メイトは信頼を失ってでも自分を貫き通した。
浅ましい自分に反吐が出る。
だが、そういう話でもないんだろう。ここで私がまた絶望したら、メイトがやった意味がない。
そう言うことを伝えたかったんじゃない。
「もっと自由に生きろってことでしょ」
『社会』に制圧されるな、『社会』が悪いと信じろ。『自分』のやりたいことをやれってこと。
「分かったメイト、楽しんであげる……絶対『社会』の害悪さに屈しないんだから!!」
―――――――――――――――――――――
衝撃が冷めるまで、暫しの休憩タイムを設けた後、アナウンスが流れる。
「えぇー! それでは! 支援魔法科対治療魔法科の試合を、開始します! 両選手入場!!」
「うぉーーー!!!!」
東、支援魔法科、アイカ。
西、治療魔法科、ゾイ。
学年五位と九位と試合に、全員が釘付けになっている。
そして、フィールドである芝生の会場に、二人はゆっくり歩きながら入場する。
「来たんだ――感動しちゃった?」
中央、一度礼儀で握手する際、囁かれた。
「あんた、ホントうざいわね」
「自覚ある〜♡」
ゾイは前と変わらず、戯けながら首を傾ける。
人間そうそう簡単に変わらない。楽観的な思考、メイトは本当にアイカが変わると思っていたのか?
そう疑うゾイは細く目を開ける――しかし杞憂であった。
「楽しみましょうね」
霞が晴れ、太陽のように明るい微笑を、アイカが浮かべていた。
ゾイは目を丸くして固まる。予想外の顔つきに思わず素で驚いてしまった。
「――ふーん、あなた、あっち側だったんだ」
「は?」
「楽観主義で、刹那的快楽主義。その場その場で楽しいことをしたい人、ちょうど、メイトかな」
「あっそ、あんたは劫的快楽主義なの? つまんなそうねー」
「あはは、そういう人の特徴教えてあげる――悲観的にならない自分がすごいと思ってるけど、それはただ危機が予測できない馬鹿ってだけだからね?」
メイトは異例だけど……。
「あんたにも教えてあげる、あんたは今は我慢すれば快楽を得れるって思ってるけど、それ意味ないから、ソースは私」
「うわー、ソースが信頼ありすぎるんですけど〜♡」
そんな煽り合いを交わした後、二人は満足そうに微笑んだ後、振り返り、離れる。
「……さぁ! ではこれより、アルディア対抗魔法試合、二回戦、支援魔法科対治療魔法科の試合を開始します!」
――――――――――――――――――――
「メイトを探せーー!!!!」
「吊るせ!! 処せ!! せっ! セッ!!」
「あのバッカどこにいるよの!!」
その頃、メイトのクラスメイトたちは廊下を走り回っていた。メイトを問い詰める為に。
「あいつマジで……――なんとか言えやー!!」
なんとも言えない苛立ちは全員共通だった。そして姿を出さないメイトにさらにむかつく。
「ま、まぁまぁ、ほらメイトもなにか意味があるのかも……」
「ハキマぁ、まさかメイトの味方すんのかぁ? あいつのせいで俺たちは終わったんだぞ? ――これで負けた!! もう試合もない」
「あんたはどうでもいいからいいよね、運動会ガチで参加してないから……私たちはみんな本気でやってたのよ!?」
「そ、それはそうだけど……」
男女二人に怒られるハキマ、愛想笑いしながら後ずさる。
「大体あんたはいつも――!!」
「おいやめてくれ、関係ない奴に当たんないでくれ」
その時、二人の後ろから当然現れたのは、メイトだった。
「うわっ! め、メイト! おま、お前何してくれてんだ!! お前自分がしたこと分かってんのコラァ!」
ガッと、激昂した男がメイトのローブの胸ぐらを掴む。
「……あー……言ったろ、俺はめんどくさいからやんないって」
「じゃあなんで試合に出るって言ったんだよ! 最初から参加しないって言っとけばよかっただろ!」
正論である。
胸ぐらを掴まれたメイトは、ライカの方が強いな……なんて関係ないことを考えていた。
そして、男の腕を掴む。
「悪かった、俺の事情があった」
その曇りなき澄んだ声音を聞いた途端、なぜか怒りが消える。否、それ以上の別の感情が生まれる。
生物的生存本能なのだろうか、『こいつに深く関わってはいけない』と、脳裏に浮かんだのだ。
「そ、そうか……」
男はメイトを刺激しないように、ゆっくり胸ぐらを放し、離れる。
「ちょ、ちょっと! それだけ!?」
後ろの女が男の肩を引っ張り咎める。しかし、男はメイトの顔を見て、戦慄していた。
全く見えない。しかし、感じる――怒りを。
『見えない恐怖』とでも、言うのだろうか。
「――……こっちも、熱くなって悪かった……」
「あ? え、あぁ、まぁ……」
なぜ謝罪されたのか少々疑問だが、まぁいいや。
「じゃ、俺はこれで――」
「いたぞぉ!!!!」
その時、メイトの姿が違うクラスメイトにバレる。
「みんなー!!」
クラスメイトは仲間を呼んだ!
やっば……謝罪するべきなんだけど、今は忙しい!
「悪い、謝ってたって言っといて!」
「え」
男にお願いしてから立ち去ろうとするが、クラスメイトたちが両方の廊下から来ており、仕方なく。
壁を魔法でぶん殴った。
その場の全員驚愕して足を止める。即席で作った建物とは言え、コンクリート製、その事実に皆、目を疑う。
吹っ飛んでいった瓦礫は、外にある。
壁の向こうは外。
壁はメイトにより瓦解して、壁に大きな穴が空いた。
「わり、逃げるわ! ハキマ、助けてくれてありがとうな!」
その瞬間、メイトは外へ飛び降りた。
「なッ!?」
高さで言えば、ビルの三階ほど。いち早くハキマが、遅れて他の生徒が飛び降りた壁穴へ駆け寄る。
鍛えてる人なら余裕の高さだろう。しかしメイトにそんな素振りはなかった。間違いなく怪我では済まない。
「メイト――!」
――そこには、壁を破壊した時の瓦礫が、階段状に浮かんでおり、そこをメイトが降りていた。
「来ない方がいいぜ、流石に後ろのやつ浮かせるのは無理だわ」
メイトの脳内。
透明人間三十人ほど。下が肩車し、そいつがさらに肩車して、連なって、瓦礫を持ち上げる。それが地面まで。
足場も不安定で、気を抜けば透明人間は消えて、瓦礫ごと落下する。
しかしメイトは一切の焦りなく、スラスラ降りていく。
地面に到着すると、全ての瓦礫がゆっくり地面に落下した。
だいぶ高所から降りてきたメイトは、まだ呆然と自分を見ていたクラスメイトやハキマを見て。
「じゃあな!」
そう元気に言って、逃走した。
「……マジか」
もはや、誰もメイトを捕まえる気にはなっていなかった。
――――――――――――――――――――
「さぁて、試合どうなったかなぁ」
せっかくクラスメイト達を巻いたのにも関わらず、再び試合を見に来たメイト。
バレないように周囲を警戒しながら階段を上がり、中央下の会場を見る。
だか、"見る"なんてものではなかった。
「なんじゃこりゃ……」
抗ってでも、視界に入るほど巨大な氷塊と、燃える芝生。抉れた地面や、人工的に尖った地面に、幾何学的な模様が刻まれている。
修羅場、である。
「え、えーと……」
その圧倒的な差に、司会人の女生徒も言葉を詰まらせる。
「ふぅーー……――」
白い息を吐き、前を睨むゾイ。その髪は雷魔法により、逆立っている。
視線の先には、氷塊に埋もれていた、"これまで防御魔法のみ使っていた"アイカが、氷塊が崩れたことにより姿を現す。
土まみれで、着崩れした服を直す余裕がないほど、防御に徹底していた。
息を切らし、汗が滲んでいる。
「……」
気がつくとメイトは、手すりを握りしめていた。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




