【第77話】人生、宣言
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
イト
「はぁー……」
「メイト、そんな大きなため息吐いてどしたの?」
「お、おぉゾイ。いやぁ、なんでも」
ドーム内、自動販売機や椅子などがある内部廊下で、後ろからゾイに話しかけられたメイト。
「一回戦無事通過したねー」
「だな、まぁ勝てなさそうだったら最悪、俺が透明人間で……」
メイトは自分の透明の手を見て、沈黙した後。
「――なんてな、勝てると信じてたから良かったよ」
「……ふーん。あ、そういや伝えに来たんだった」
「……?」
ゾイは走って来たので暑く、ローブをバサバサしながらフッと微笑む。
「頼まれてたからね、アイカ、次出るよ」
メイトはドキッと、緊張した後、深呼吸して前を見る。
「……ありがとう、助かった」
「別にいいよこれくらい、でもめんどくさいよねーメイト、こんなことせずに普通に言えばいいのに」
「……俺が人生において大切にしてることがあるんだよ」
メイトは指を立てて考えながら言う。ゾイは興味ありの沈黙を返す。
「『何かを伝える時、何を言うかじゃなくて、何をしてる人が言うか、それが大切だ』ってね」
単純だけど、真理である。
「だからこんなこと……よっぽど好きなんだねー」
「は? 何が?」
メイトが聞き返すと、キョトンと、ゾイは沈黙しメイトを見つめる。
「いや、何その視線……俺はただ「俺はこれくらい本気だぞ」って示すためにやってるだけだぞ? 他になんか意味あるか?」
メイトが問うと、ゾイは口を尖らせながら沈黙した後、理解する。
「あぁ〜、まぁ"そういうこと"にしといてあげる――じゃ私は伝えたからこれで」
立ち止まり、横の階段を指すゾイ。
「お、おう、マジでありがとう」
「いいよ〜」
そして、ゾイは階段を上がり、炎天下にさらされる客席へ向かった。
「……さて」
メイトは意気込み、廊下を一人で歩き出す。
ガチャ。
「おう、遅かったな」
「すまん、トイレ混んでてな」(嘘)
通常魔法科、控え室。スピネルとエルフィア、そして名前がわからない男。
メイトはコクっと小さく唾を飲んで、口を開く。
「なぁ、耳寄りの情報を手に入れたぜ」
「へぇ本当か? どんな?」
「聞いて驚くな……」
メイトは耳打ちするように三人に近づき、囁いた。
「次、アリーテールが出るらしいぜ」
もちろん、出任せである。
男とエルフィアは口をぽっかり開けて固まる、スピネルは椅子に座ったまま、横目でメイトに視線を向ける。
「だから俺が出る、いいか?」
先に提案する、三人は異論はないと、沈黙を返した――。
――――――――――――――――――――
アリーテールは何かの魔法で学年一位と噂されている。なら、それを利用するしかない、アリーテールが誰かは知らんけど。
とにかく、相手は最強とされている人間なら、こちらも最も強い奴が出るしかない。
メイトは廊下を走り、あるところへ向かう。
『それでは、選手に入場していただきます!』
コンクリートの廊下を反響して、外から聞こえてくるアナウンスを聞いて、メイトはニヤーと誤魔化すように笑う。
これまで十位の奴と、ゾイ、そして内密だけどアイカに勝った俺が……なんか自画自賛みたいで恥ずかしいけど……一番強いことになるのは自明。
メイトは階段を上がり、青空の下――外に出る。
それに、この日の為にクラスの奴らに仲良く接して来た。口下手で陰キャで人間性が終わってる俺だけど、頑張った方だ。村で行われたメアリーの対人訓練の賜物だろう。
メイトが出たところは、先輩、つまり三年の人たちが座っている観覧席だった。もちろん周りに知り合いはいない。他学年とは、寮も学習棟も違うので、普段から関わりはない。
「おい、例の透明人間はどこだよ!」
「見たかったのにー」
うわー、先輩の間でも噂になってるー。
メイトは、前だけ見て自分の存在に気が付かない三年生を睨みながら、ある場所を見つける。
はぁ、やべー嫌われるだろうなぁ……でも、まぁ、やりたいことをやる! やってやる!
メイトは駆け出し、大きな階段を駆け降りていく。両隣には三年の群が鎮座していて、みんなその、階段を走る浮くローブに視線がいく。
「え、えーと……メイト選手は来ないので不戦しょ――」
「とぅ!!!!」
メイトは階段の途中で叫び、ダン! と机に乗る。
「………」
「あぅ………」
不戦勝を宣言しようとしてた、司会の女生徒が、当然の反応を見せる。
意味不明。
浮くローブが突然目の前に現れて、書類やマイクなどが置いてある机に飛び乗った。
ここが客席に紛れる司会人や実行委員の席なことは、先ほど見つけていた。
「失礼」
「え」
メイトは唖然とする司会人からマイクを取り上げ、口元に寄せる。
前を見ると、なんとも絶景である。全校全ての生徒、教諭も含めた全員が、自分を凝視していた。
「あー――ちょっと話を聞いてくれ」
メイトの声は、これだけの人間がいるとは思えない畏怖を覚えるほどの静寂の中、響く。
「まず俺は、運動会なんて好きじゃねぇんだよ、こんな暑い中馬鹿騒ぎして、正直嫌」
メイトは、震える足を我慢して、胸を張る。
「特に嫌いなのは、体育会系のお前らだ、なにがリレーだ綱引きだぁ? 俺には一切合切興味がねぇんだよそんなこと!!」
メイトは事前の緊張に対して、本番の発散により、アドレナリンが出て、ヒートアップする。
「けどな、別に良いんだぜ? お前らが勝手にやってりゃ良いと思うぜ? そういうのを楽しむ人がいるのは当たり前だしそれを楽しむのも権利の一つだからな。でもな、忘れてんじゃねぇぞ」
メイトの脳裏に、アイカが浮かぶ。
『社会』なんて、一言で言い切れないだろう理不尽に、耐える為にわざと言語化して。
どうせ自分にはこれしかないと、諦観して、失望して。
なのに、ちゃんと頑張っていた。成果を残そうと魔法を練習していたのを、俺は見ていた。
それがどうにもイライラする。
『社会』に対してじゃない、アイカにでもじゃない。
この、言いたいことが言えない『世界』に対してだ。
「忘れるなよ――気乗りじゃねぇやつもいんだよ――言いたいこと言っていいんだよ!!!!」
メイトの怒号は、音割れするほど、天高く轟いた。
「無責任な責任押し付けんな!! 無駄な我慢してんじゃねぇ!! 周りの視線なんて気にすんな! 少しは相手のことを知れ!!」
誰かに言っている訳じゃない、だが、"その人"は、自分だと、理解できる。
「俺は正直こんな試合興味がねぇ! だから棄権してやるよ! 最近で築いた信頼とか期待とか全部をかなぐり捨てて逃げてやるよ!! 俺はそれを実行するだけの理由があるんだぜ!? なんだか分かるか? 分かるだろお前なら!! たった"一言"だ!!」
その時、メイトの視線の先、ちょうどど真ん中――アイカが、目を見開いて今にも泣きそうな顔をして、自分を見ていることに気がつく。
「お前が言えねぇなら――俺が言ってやるよ!!」
メイトは思いっきり息を吸い込み、喉を切らす勢いで叫ぶ。
「『めんどくせぇーーーーー!!!!!!!!』」
めんどくさい、ただそれだけの理由だ。そんなくだらなく怠惰な理由で、全てを捨てたのだ。
仲間の期待も信頼も結果も。
「たっっったそれだけだ! くだらないと思うか? けどな!? こんなことも許してくれないなら――――『社会』が悪い!!!」
言い終えたメイトは、静寂の中跳ねる心臓に触れた後、ふと思い出す。
「そうだ、これも言っとこう」
メイトは遠く反対側にいるアイカを見つめる。
「俺は……正直こんな『世界』だとは思ってなかった。もっと自由で、みんな楽しい世界だと思ってた――でも違う、みんな必死に生きてる、『社会』とかいうモノもある」
こんな、"苦い"世界で、どう生きるのか。
「俺は透明人間だから、周りの視線とか気にしないけど……例えお前が何者でもなくても、例えお前が何もできなくても……お前が透明じゃなくても!」
ザワっと、マイクで拡散しているはずの声が、なぜか自分に向けられていると、理解できる。
「『この世界唯一の"お前"は、好き放題生きていいんだよ』」
言い終えると、最初とは違う静寂がメイトに刺さる。
困惑、動揺、驚愕、唖然、失望、高揚――色々な感情が混ざる静寂の中、メイトは透明となったマイクを司会人に返した。
「あ、え……」
「すみません、勝手に……じゃこれで」
「あ! ちょ、ちょっと!!」
メイトが机を降りようとしたところに、司会人が止める。
「あの、結局試合は放棄するということですか?」
司会人が下から、見えない顔を見上げながら問う。
「はいそうです」
メイトは軽く答えた。
「……本当ですか……?」
「本当ですが」
司会人は暫し絶句した後、散々迷った挙句、おずおずとマイクを持つ。
「えぇー……と、この試合は、メイト選手の棄権により――アリーテール選手の勝利ー!!」
変わらず、明るい声で宣言する。
しかし会場は盛り上がるわけもなく、気まずい静寂が流れるだけだ。
「あ、あぁー……と――」
凍る生徒たちを一瞥して、言葉を詰まらす司会人。
この空気どうしろと〜!!
完全に運動会をぶっ壊していった透明人間に、そう心の中で叫んだ。
メイトは机を降り、周りの三年の視線に気づく。
「フッ――」
みな見ているものは、ローブであり、メイトではない。その視線が、滑稽だった。
「さて、と……」
メイトは、チラッと振り返り、クラスメイトたちを見る。表情は伺えないが、きっと失望しているだろう。
「よし――――逃げよ」
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




