【第76話】気づきのアイカ
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
イト
この試合、メイトのクラス対アリーテールのクラスの試合が終われば、次は私の番だ。
アイカは沈んだ黒い瞳で周りを見渡す。
現在、支援魔法科控え室で会議が行われていた。
「一回戦、相手は前回の試合で三番目の有力候補を出してきた、おそらく学年九位のゾイは四回戦目に出すと思われるが……そうなると、残り二人に対抗できる魔法をできるやつが出るべきだけど」
赤髪の男、リベルトが三人の前で考える。
「アイカはまだ残しておきたいから、実際僕かリベルトのどっちかだね」
もう一人の男がまとめる。
「となると……ここは俺か……」
「いや、そこの裏をかいてレンが出た方が――」
一回戦目で勝利したサランも入り、三人で話し合いを始める。
そんな三人を横目に、アイカはボーと床を見つめる。
なんで私はここにいるんだろう――。
なんで私は嘘を吐くんだろう――。
なんで誰も分かってくれないんだろう――。
一言だけなのに。
魔法が使えないことをバレたくない。バレたら居場所がなくなる、学年五位の立場も揺らぐ。
いつも、口は私の裏のことを言う。
『私が怖い? ふざけんな、そんな訳ないけど――』
『私は、ちゃんと"私"があるから――』
『――お互い、頑張ろ――』
自分の過去の言動に、はらわたが煮えくり返る。
なんで素直になれないのか、どうして強がってしまうのか、自分でも分からない。
きっと怖いんだろう、仲間も敵も、作りたくないんだろう。
分からないのは、なんで怖いのか……。
人に嫌われてもいいなんて、心の底から思っているはずだ、こんな人を半強制的に参加させる奴らに好かれようが忌まれようが、どうでもいいはずだ、――なのに。
アイカはチラッと三人を見る。
あんなに楽しそうにいられると、何も言えなくなる。
たった一言、今思ったことをまとめて覆す、一言が言えれば――。
と、その時。
「こんにちわ〜♡」
扉を開けて入ってきたのは、敵チームであり、因縁の相手でもある、ゾイだった。
「あ、あなたは……ゾイさん」
「どうも〜、いやーなんだか頑張って作戦練ってるところ悪いんだけどさぁ、伝えようと思って」
ゾイは頭をかきながら、小紫色の瞳で四人を見る。
「二回戦、私が出るから♡」
それを聞いた三人は、驚きで固まる。アイカは怒りを超えてため息が出る。
「じゃあ〜ね〜、アイカちゃん、試合楽しみにしてるね」
そう言い残すと、ゾイは部屋を出て行った。
「……なんという人だ……けどこれで決まりだな」
「そうだね、二回戦は、"アイカ"で決まりだな」
「そうだね、アイカちゃん! ガンバ!!」
サランがアイカの手を握る。アイカは握られた手に力は込めずに、ただサランを見つめる。
分かって、理解して、そう切願する瞳は、サランに伝わることを信じて、濁っている。
「……?」
サランはそんなアイカに首を捻る。
すると、ハッとアイカは息を吸い込み、手を払う。
――どうせまた、裏のことを言う。
「はいはい、やってきますよ」
――ほら。
――――――――――――――――――――
時は過ぎ、二回戦が始まろうとしていた。
「それでは! 通常魔法科対生活魔法科による試合がまもなく開始します!」
ドームにそんなアナウンスがかかる頃、客席の通常魔法科の奴らは話をしていた。
「いや、まさか生活魔法科の奴らが一回戦突破してくるとはな……誰を出してくるか」
「ここで強いやつを出すのは勿体無いからな、順当に強いスピネルじゃねぇか?」
「去年まではそうだった……だが、お前も知ってるだろ、あの噂」
「噂って……あの学年一位の? ま、まさか……」
「そう、その例の男がいるところこそが、生活魔法科なんだ」
「マジか……てなると、一番強いやつ……"メイト"…」
「あぁ、学年九位のゾイを負かし、その事実を恒久的に永続させているメイト、あいつしかいない」
メイトは自覚はないが、透明人間で九位に勝ったことにより、だいぶ名前が広まっていた。
「あいつ、ほんとに大丈夫か? 練習にろくに参加しなかったんだろ?」
「――大丈夫だよ!! メイトは変人だけど、締めるところはちゃんとするから!」
話していた男子生徒二人の後ろから、ハキマが割り込む。
「お、おぉそれならいいんだけど……」
「それにほら、いつだが十位と戦った時も圧勝したし、大丈夫!」
「あー、そういえばそうだったな……でも――」
あの時、メイトは指定されていた魔法ではないものを使ったし、実際、本気で十位と戦って勝てるのかは分からない。
まずメイトは何の魔法を使ったのか、不明であった。
「そういや、ハキマはメイトと一緒に生活してるんだってな」
「え? あ、うん」
「ならメイトがどんな魔法を使ってるのか分かんないの?」
ハキマは「んー」と顎に手をやり、唸る。
しかし、思い出してもメイトが使った魔法は、基礎で誰もが使える全く強くない『動かす魔法』しかない。メイト自身もそれしか使えないと言っていた。
「『動かす魔法』だけだったけど……」
「『動かす魔法』……それで勝てるか? 心配だなぁ」
確かに、そう言われてしまうと、心配になるのは仕方ないこと。
ジッと沈黙してフィールドを見つめる二人を見て、ハキマも若干心配になってきた。
勝てるよね、メイト……。
――――――――――――――――――――
「それでは、選手に入場していただきます!」
東、通常魔法科、メイト。
西、生活魔法科、アリーテール。
「――ほんとに出してきやがった……"学年一位"」
男は腕を組み、遠くにいるアリーテールを見る。
マッシュルームのような髪に若干隠れた目元。
腰に携えられた、氷のように蒼白い刀。
そして、堂々した、しかしどこかぎこちない立ち振る舞いで、中央に向かっていく。
「あいつが、学年一位……」
実在は学年一位ではないが、誰もがそう信じており、先入観で強者だと、錯覚する。
「私たちのクラスからメイト……ナイス選択、頼むぞ……!」
視線を移し、東側の入り口を見る。
が。
誰もいない。
「……え、透明人間は?」
ボソッと誰かが呟いた。
そう、透明人間だから見えない、とかじゃなく、そこに誰かがいる気配はなく、出てくる気もしない。
「め、メイト……?」
ハキマは動揺しながら立ち上がる。
ザワザワと、客席の生徒たちが騒ぎ出す。相手はどこだ、なんで一人しかいないんだ、そんな声が、だんだん大きくなっていく。
「おいおい! 透明人間は何してんだ!」
どこかから、ヤジが飛ぶ。そこから波紋のように運営に向けたヤジが広まっていく。
「早くしろー」
「これ不戦勝になんのー?」
ザワ、と通常魔法科の全員の心にざわめきが走る。
『不戦勝』。
メイトが来なければ、戦わずして負けて終わる――。
「お願い……メイト来て……!」
ハキマはどうしようもなく、ただ両手を握って祈るだけだ。
――――――――――――――――――――
「おいおい、なんか変なことになってるなぁ」
支援魔法科、控え室。その窓から現状を覗いていた四人。
メイトが……来ない……。
アイカは、生気の失くした、濁った目で窓の外を覗く。
……。
メイトが来ない、だからなんだ、どうせ来るだろう……だってあんなに楽しそうにしてたんだから。
仲間を裏切る訳ない、メイトはそういう人だ。
例え怠くても、誰かのために我慢できて、ちゃんと成果を残せる人なんだ。
アイカはなんとなく、ピンで止めていた前髪を垂らす。視界はあの時と同じ、前髪で隠れてほとんど何も見えない。
だが、今はこれが心地いい。
私は勝手に願望を押し付けていただけだ。メイトは私と同じだ、って。
同じような醜い人がいるなら、安心できるから。
私は、本当に私が嫌いだ。
ハキマもスピネルもゾイも……メイトも誰もがもうどうでもいい。
誰も、私を見なければいいのに……――あぁそうか。
アイカは、醜悪で怠惰で傲慢な、そんな自分の願いに気がつく。
そうだ、私はメイトが羨ましかったんだ。
誰にも見られない、誰にも見られてない"ように"生きれるメイトに嫉妬していた。
アイカは、ボロボロになった心の拠り所を探して、再びフードに手をかけた。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




