【第75話】爆轟魔法
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
アリーテール
イト
「あなたの敗因は、自然を舐めたことです」
空中に極小の氷が漂う試合会場。一つ一つが太陽光を反射して、なんとも芸術的な光景である。
「はい?」
互いに距離を保つエルフィアとリリアン。
エルフィアは、肌に薄く張り付く氷を溶かしながら、聞き返す。
すると、リリアンはバッ!と腕を広げ、天を見る。
「"自然"こそ全て!!!!」
魔法試合中にも関わらず、互いに攻撃しない二人に、客人は憤りを覚える――。
「……」
――ことはない。
たったの数十秒で、戦況は決まった。もう見るべきものもない。
負けは、通常魔法科のやつで決まりだ。
そう、ほぼ全員が内心でぼんやりと、だが確実に察していた。
「はい?」
エルフィアは先ほどより、高く、驚いた返事をする。
「"自然"がなければ我らあらず! 我らなくても"自然"あり!! 自然こそ神の形!! さぁ、自然を讃えましょう!!!!」
なんともぶっ飛んだ布教だが、勝ち負けで言えば、あっちが正しいことになる。
『勝者こそが正義』とか糸出す人も言ってたし。
「……そう、自然がね」
「あなたがもっと自然を知っていればあなたは負けていなかったでしょう。自然を愛しなさい、自然だけを信じなさい」
すごい宗教、ただの石もパワーストーンとか言って売ってきそうな勢いだな、なんならウイルスに効くとか言うレベル。
「別に、あんたのそういう考え方否定する訳じゃないけど……」
エルフィアは、全身の氷を溶かし終えたようで、リリアンを見据える。
「人に信仰を強制しないでもらえるかしら?」
その瞬間、エルフィアは走り出し、一直線にリリアンに向かう。
リリアンはバッと反応して、手を向ける。
いや? これは、揺動……本命はこっちね……。
リリアンが、足元から伸ばした"極細の木の根"で、"本物のエルフィア"がどこにいるのかは察知できる。
「バレバレよ!」
その場に向かって、小さい水の塊を高速で放つ。
「――ッ!」
壁沿いを走るエルフィアが、無から姿を現われる。透明魔法である。
エルフィアは全身にバフをかけて、身体能力を上げる。それにより、凡人離れした身のこなしで、攻撃を避ける――。
――が、それでも、無数の水の弾丸を避けることは至難の業で、身体に小さく掠り、血が垂れる。
"勝ち"には、相手の攻撃不能か敗北宣言だけ……足でも撃ってしまえば。
「ほら! たったの小石ほどの水でも人を撃てるんですよ!? これが自然の力!」
自然要素少ねー……結局はお前が撃ってるじゃねぇか。
「アクアジェネシス!!」
次の瞬間、リリアンの頭上に巨大な水の塊が生まれる。
「な、なに?」
影すらできるその水の塊を、エルフィアに攻撃を続けながら見上げる。
「そんなに水が好きなら、溺れるがいいわ!!」
水弾を避けながら、指をスッと下げる。すると水は支えをなくしたように落下し始める。
「――――!」
その時、エルフィアの魔法感知が察知する、否、察知が消える。
バッシャーン、と、頭から水を被ったリリアン、全身濡れたがお構いなしにすぐ攻撃を続ける。
「あなたに''自然"を使いこなせる訳ないです!」
「……!」
エルフィアはその言葉にイラッとした顔をリリアンに向ける。
自然自然、うるさいなぁ!
「テレポート!!!!」
ずっと走っていたエルフィアがそう叫ぶ。すると、目の前に黒い渦が生まれる。
その中に、入った。
「なッ――!?」
そして、また黒い渦が発生した場所は、リリアンの伸ばされた腕よりも近い、懐の中。
「こんちわ」
「――ッ!」
「――おぉーとっ!テレポートによる急接近!!!」
実況遅いなおい、普通に見入ってんじゃねぇか。まぁこの魔法試合に解説なんていらないのは分かるけど。
「自然魔法の弱点は、近距離攻撃がしにくいことよ!」
テレポートなんて、一介の生徒が持つような魔法ではない。認識が甘かった、アルディアの生徒なのだから、異質の魔法の一つくらい持ってるものだ。
リリアンは咄嗟に後ろに下がる。
「終わりよ!!」
エルフィアは、リリアンに逃がさないために手を伸ばす。
「おぉーと、エルフィア反撃の始まりかぁ!?」
その時、リリアンは醜悪に口角を上げる。
言っているでしょう、自然を舐めるなと――。
次の瞬間、エルフィアの手がリリアンのローブを掴み、そのままグッと引き寄せる。
「……!?」
リリアンは理解不能な事態に顔を強張らせる。エルフィアの手を睨む。
確かに触れている、なんで!?
「調子に乗らないでくれるかしら、『撃型雷纏魔法』、近寄る敵や攻撃に自動的に攻撃を出してくれる魔法ね」
狼狽えるリリアンに、エルフィアは傷だらけの顔を近づけて言う。
「な、なぜそれを――」
ハッと気がつく。
さっきの水!! 意味がわかんない攻撃だったけど、私が雷纏を消すと見越して――。
「あなたが水を被る瞬間、魔法の感知がなくなった、最初から何かを纏ってたのは分かってたからね、あんな大きな"水の攻撃"、そのままにしてたら可視できるほどの雷の自動攻撃が出てしまう、だから隠すために一度解除する必要があった」
なんとか手から逃れようと暴れるリリアンだが、バフをかけ、筋力が上がったエルフィアの手から逃れられない。
「なんであなたは私に触れていられるの!? 今だって雷は纏っているのに!」
「あなたの敗因は、自然を過信したことよ!」
その時、エルフィアは掴んでいない片方の手のひらをバッと見せる。ひらの部分に、薄く張り付いているのは、木片である。
「木は電気を通さないのよ!!」
雷纏が反応するのは、電気が通るもののみ、金属や人間に対してだけである。
「自然魔法を使えるのが自分だけと、思っていたのかしら」
すると、手から木の根のようなものが伸び、リリアンの体に巻き付いていく。
「ッ! この!」
「逃す訳ないでしょ?」
強固な根に絡まれたリリアンは、燃やしてしまおうと火魔法を使う準備をする。
が。
「見なさいよ、これが自然魔法の最骨頂、私が"新しく"編み出した魔法……『爆轟魔法』、回避防御不可、周囲1メートル内に超エネルギーを爆発させる魔法……!」
エルフィアは根が出る片手を離さずに、もう一方の手に力を込める。
すると、人差し指の先から赫色の球が出てくる。
指先に乗るサイズの、遠くからは目視できないほど小さいそれは、眩い光を発している。
「……ッ! そ、そんなことしたら、あたなも巻き添えになるわよ!!」
「私は特性の防御魔法があるから大丈夫、それより自分の心配したようがいいよ」
「――ッそんなことしたら! 私が死ぬかも知らないわ、そうなったらあなたは反則負けよ!?」
「死なないよね、だってさ」
エルフィアは、火魔法を使い、根を燃やすリリアンの肩に手を乗せる。
「自然はすごいんでしょ?」
「――そんなこと――」
その言葉の後、指先の赫い球が回転し始めて、さらにその光度を増していく。
薄い赤から濃い赤へ、そして純血のように赤く染める光はやがて白くなり、二人を包んだ。
会場全員が、そこに注目する。
止めに入ろうとする教授や生徒を置いて、それは爆発した――。
「――は?」
マイクを持つ司会の生徒が、無意識に握りしめていたマイクにより、予想外という声が会場に響く。
視線の先には、何も変わらず、木により拘束されたリリアンと、目を閉じるエルフィア。
スッと、確認するようにゆっくり目を開けるエルフィア。
「――良かったー、成功したぁ……」
エルフィアは安堵の息を吐きつつ、木の根を解く。すると、リリアンは芝生の上に倒れる。
「――な、なんッ、で?」
脳をやられたリリアンが、歪む世界と霞む視界に耐えながら問う。
「実は『爆轟魔法』なんて嘘、私が使ったのはただの光魔法だよ、熱もない、ただの目眩しとして使われるね」
「そ、そんな……」
ただしあんな近距離で光魔法を見たのなら、網膜が焼き切れても仕方ないレベル。そこは運任せだった。
自分の優勢に調子に乗り、相手の狙いを見誤ってしまった。
これで終い、私たちのクラスは終わった。
今、みんなどんな顔してるかなぁ。と、リリアンは掠れゆく世界の中考える。
どんな顔で会えばいいのか分からない、ただ今は、揺れる脳に抗えず、眠るように気絶した。
会場に暫しの沈黙、すると、手を振り下ろした最初の女生徒が近寄ってくる。
客も皆、その光景を見て理解しているが、その言葉を待つ。
女生徒はしゃがみ、リリアンを上から覗く。乱れ、顔に垂れた髪を優しく整える。
「………」
暫し観察した後、立ち上がり、司会の人を見て頷く。受け取った司会はマイクを持ち、立ち上がる。
「アルディア対抗魔法試合、第一回戦は、リリアン選手の気絶により――」
バッと、フィールドに唯一立っているエルフィアを、大ぶりに腕を振り、示す。
「勝者! 通常魔法科! エルフィア選手ー!!」
その宣言を聞いた瞬間、ドーム中の人間から拍手が飛び交った。
呆然とするエルフィアは、ふと自分のクラスメイトたちを見つける。
「――!」
「――――!!」
「――!」
ちょっと何を言っているのが聞こえないが、めちゃめちゃ笑顔で手を振っている。
「……」
とりあえず手を振り返しといた。
「それでは、エルフィアさんは控え室に戻ってください」
すると、後ろから先ほどの女生徒に話しかけられる。
「あ、分かりました」
振り返ると、背中にリリアンが背負られていた。
あ、あなたが持っていくんだ……。
なんて考えながら、最初登場した場所から、フィールドを去って行った。
――――――――――――――――――――
控え室に戻ってきたエルフィアは、三人(主にリーダー的な男)から労いと感謝の声をかけられた。
それからも、試合は滞りなく順調に進んだ。だが、そこに不安や苛立ちを覚える人が一人いた。
なにかハプニングでも起きないかと、願う人がいる。
しかし、そんな思いも届かず、二回戦が始まろうとしていた。
運命か、因果か、それとも異世界物特有のご都合主義なのか、まるで神が操作したように、二回戦に進んだクラスは繋がっていた。
メイトのクラスVSアリーテールのクラス、アイカのクラスVSゾイのクラス、残りはシードとなっていた。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




