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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第2章】神聖アルディア魔法学校編

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71/264

【第71話】チェック

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト・マルマロン

ハキマ・クォーツ

スピネル

ゾイ

アイカ

アリーテール

イト

 ヤバい奴がいる。

 そんな噂が広まるのに、大した時間は掛からなかった。

 たった一撃で、校庭の三分の一程を火炎で包んだ男の名は、アリーテール。

 大した功績もなく、知名度もない。名前は広まっておらず、学年全員の名前を覚えたと言うある人物に聞いても、「アリーテール? 誰?」と聞き返させるレベルほどに影が薄い人間である。

 昨日までは。

 昨日の放課後、誰もが見たであろう、学校中を閃光に包んだ男の一撃を。

 剣を一振りしたたけで辺り一面を火の海、遠くの山でさえ小規模の火事を起こさせた。さらに、気がつくとその火炎は消えていて、蟻ほどの焦げすら残さずに鎮火した。

 この噂、いや、もはや逸話とも言える話は、校内で数日の間この話題で持ちきりなる程、盛んに飛び交った。

 故に、情報が渡るときに生まれる機微たる変換、脚色、誇張が大きな差異を生む。

 結論、アリーテールは学年一位とされた。


――――――――――――――――――――


「はぁ……どうしよ……」

 昨日騒ぎがあった校庭ほどではない広さの中庭にて。

 アイカと、そのクラスメイト三人がいた。

「アイカちゃーん早く早く!」

「はいはい……」

 呼ばれたアイカは、なんとかしないといけない、しかしどうにもならない問題に悩みながら、ドボドボ三人の元に寄る。

「よし! じゃあまずは互いの得意な魔法を伝え合おう!」

 爽やかな雰囲気が醸し出る赤髪の青年が、並ぶ三人の前で手を広げる。

「俺の名はリバルトだ、主に火炎魔法と剣技を合わせた攻撃が得意だ」

「となると……『自然魔法:生物系統植物類』の魔法使いには対抗できるな……温度はどれくらいまで上がるんだ?」

「最近は『オーバーライン』は超えるようになってきた、多分『自然魔法:水系統』全般には対応できると思う、あと氷が心配だけど……そこは臨機応変に対応しよう」

 ヤバい、この人たち意外と本気で作戦立ててる。このままじゃ――!

「失礼、僕はレン。剣技はできないけど魔法は人並みには使えるよ、遠距離からの衝撃魔法とか斬撃魔法とかなら得意と言えるかな」

「てことは、相手は近距離型の剣士って感じか……距離詰められたらどうなる?」

「一応、纏わせる型の自動反撃魔法は雷水火とかは全部会得しといたから、その点は問題ないかな。まぁ僕自身も少しなら近距離攻撃の手段はあるし」

「そう、なら安心ね。あ、私はサラン、得意な魔法は――」

 それからも、四人の会議は続いた――アイカは終始頷いてるだけだった。

「アイカちゃんは、得意な魔法とかある?」

 ふと、一人の女の子、サランが、冷や汗をかいていたアイカに振る。

「え? いや、私は……」

 正直、この三人に並べるほどの魔法なんて持ち合わせていない。

「別にない、わよ……」

 アイカは三人を(うかが)うように上目遣いで言う。三人は一瞬の沈黙の後、理解する。

「アイカちゃんなら全部いけるってことか! すごい!」

 違うんだよなぁー。

「さすが五位、僕が人生で習得したものを軽く凌駕するとは、感服します」

「あ、あぁ、魔法だけかと思ってたけど、まさか剣技に関しても問題ないとは……」

 誰もそんな話してないけど……なにを勘違いしてるんだこの人たちは。

 どれもこれも、アイカが入学してからこれまでで築いた、『アイカは強い』という像による偏見による物だ。

「これなら、例の学年一位のやつにも勝てるんじゃないか?」

 リバルトが腕を組みながら、可能性に瞳を輝かせる。

「かもしれないな、よし、俺たちは全力でアイカさんをサポートしよう」

「うん!」

 なんか私が一番強いことになってるし……。

「そ、そんなことないわよ、私よりあなたたちのほうが強いわ」

「うぅ、強い上に謙虚な方だ……なんて凄い人なんだ……」

「尊敬しますアイカさん……」

「うん、ありがとうねアイカちゃん、全力でサポートするから……」

 だめだこいつら全然伝わってない。

「はぁ……そう……ちょっと疲れたから、あっちで休んでるわね」

「どうぞ! 存分に休んでください!」

 アイカは三人の期待から逃げるように、中庭の隅にある、日陰のベンチに腰を下ろす。

 遠くで三人が魔法を見せ合っている。火や水、氷なんて生成している。

「ついていけないわ……」

 路頭に迷ったアイカは、自分の手のひらを見る。

 なんで私は……ここに入ったんだろう……てかなんで『五位』なんだろう。

 私は、そんな凄い人じゃないのに……。

「あら、あらあらあら……アイカさんじゃないですかー♡」

「……」

 その口調だけでも、後ろに立つのが誰か分かる。

「なんの用よ」

「用なんてないよ、でも――なんだか寂しそうにしてたからさぁ……」

 その人は、アイカの肩に手を置き、耳元で囁く。それにアイカはピキッの血管を鳴らして立ち上がる。

「いちいちめんどくさいのよあんた! 耳元で!」

 振り返ると、そこにはベンチの背もたれに手をつく、ゾイがいる。

「こめんなさいね……私、自分より弱い人がいると虐めたくなっちゃうの」

「とんだ悪女ね、私のことを性悪女と言ったことを撤回してほしいわね。どこ口が言ってるのかしら」

 アイカはジリと、砂利を鳴らしながら距離を取る。

「あなたが性悪だったのは事実でしょう?」

 ゾイはおもちゃで遊ぶような、色がない瞳で、アイカを見つめながらベンチに座る。

「……チッ、用がないならもう行くわ、あなたといたら肺が死ぬわ、あなた常に毒素放ってるみたいな雰囲気あるし」

 アイカは眉間に皺寄せしながら、それだけ言い残し、去ろうと振り返る。

「あっ、待って、話をしましょ? それにそんな怒らないで」

 それを、ゾイが留める。ゾイに言われると断れない、そんな力がゾイの声音にはある。

 伊達に九位名乗ってるだけではない。

「なによ」

「あなた、『魔法勝負トーナメント』……『アルディア対抗魔法試合』に出るんだね……」

「それ正式名称とかあったんだ」

「あるんだよ実は」

 そんなこと初めて聞いたけど、まぁいい。

「それで……出るけどなにか?」

 アイカは本心が悟られないよう、上から見下す。それに、対抗するように、ゾイは下から舐めるように見上げる。

「あなた、魔法使えないよね?」

「……だからぁ、そんなことないって何回言えばわかるの? 私は五位なのよ?」

「はは、私も適当言ってるわけじゃないよ、ちゃんと考えてる」

 ゾイは指一本立てて、アイカに見せる。

「だってさ、私たちにゲームを挑んできた理由は、『威厳を強くするため』って言ってたよね」

「……そうね」

「そこはいいんだよ、ならなんで私の時みたいに中継せず、内密に、しかも単純な魔法勝負にしなかったのかなぁ?」

「はっ、そんなの私の得意分野で戦うと、どうしても客は邪魔になるからよ」

「ううん、得意分野じゃないよね、消去法の方法だよね」

「……なに?」

 アイカは組んでいた腕を下げて、ゾイを睨む。

「あなたは魔法が使えない、でも『九位を負かした男』に勝てばより威厳は高まって今の地位は安心になる、だから攻めてでもあんなまどろっこしいゲームにしたんでしょ」

 ――ただ、勝ったという事実だけが必要だから。

 アイカは夏だと言うのに、背中に冷や汗をかく。本当に、伊達に九位ではない。

「……それで? 確かにあんたの言う通りだわ、でもそれがなに? 私が魔法使えないのに試合に出ることを茶化しにしたの?」

 アイカは奥歯を噛み締めて、悔しさを紛らわせる。しかしゾイはお構いなしに言う。

「私さぁ、結構根に持つタイプなんだよねぇー……例えば、"勝ち逃げ"されると結構さぁー」

 ゾイは、アイカを試す蠱惑(こわく)的な瞳で、腕を前に出す。

 その手元の動作は、何かを摘み、移動させ、置いた。


()()()()……頑張って逃げてみてね♡」


 それは、"チェス"だと、幼少期からプレイし続けてきたアイカだからこそ、すぐに察した。チェスと言えば、いつだかゾイをチェスで負かしたことがあった。

「私も『アルディア対抗魔法試合』にエントリーするから……それに、あなたと当たるようにね」

 ゾイは立ち上がり、アイカの前に立つ。

「お互い、ベストを尽くしましょうね……――」

 ゾイはアイカの肩に手を置いて、また耳元で囁いた。しかし、それを咎める気力は、アイカにはなかった。

「じゃあね〜」

 そして、ゾイは去っていった。

 残ったアイカは、誰もいなくなったベンチを見つめて、ただ――。

「………」

 沈黙と共に、歯噛みすることしかできなかった。

ご精読ありがとうございました!

毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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