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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第2章】神聖アルディア魔法学校編

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【第70話】只の人ごとき

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト・マルマロン

ハキマ・クォーツ

スピネル

ゾイ

アイカ

アリーテール

イト

「メイトさぁ、魔法勝負の練習とかしなくていいの?」

「ん?」

 ある日、教室で適当な席に座り授業を受けていた時、後ろに座っていたハキマが話しかけてきた。

「大丈夫だ、問題ない」

「えぇ〜、でも流石に少し勘を戻しといたほうがいいんじゃない?」

「大丈夫、どうせ俺ができる魔法は一つしかないんだから」

「尚更心配なんだけど……」

 メイトは授業中、全く参考にならない授業を聞きながら、ボーとしているだけだった。

「それに……――いや、これは言わないほうがいいか……とにかく俺の心配はすんな」

「そう……? あ、ちなみにスピネルも出るからね、『魔法勝負トーナメント』」

「あ、そうなん? なら安心だな」

 スピネルがいるなら、俺のフォローもしてくれるだろう。

 と、その時。

 キーンコーンカーンコーン。

 と、鐘の音が響く。

「ではこの復習しとけよー」

 そう言って先生は教室を出て行った。

「ふい〜ー、やっと終わったぁ……」

 ハキマは机にペタッと倒れ込み、溶ける。

「ハキマ、意識をしっかり、溶けてるわ」

「ハッ! いけないいけない……人じゃない何かになるとこだった……」

 ハキマはバッと体を起こし、人間の形に戻る。

「こわ〜……人が溶けるとこ初めて見た」

「いやー暑いからさぁ? 夏だし?」

 暑くても溶けないのが人間だけど。

 そういえば、いくら夏と言ってもローブを部屋以外で脱ぐことは許されていないので、この厚手のローブをずっと着ないといけないのは相当大変そうだ。

 俺は熱を感じないからどうってことないけど。

 ハキマとスピネル、その他の人間は大体腕まくりをしている。

「私は常に風魔法で涼んでるわ、ほら」

 スピネルが背中をハキマに見せる。

 フワッと浮くらんでおり、靡いている。

「風魔法を背中と服の間に使ってか……魔法って便利だなぁ――」

「おーい! 運動会についての紙が来たぞ!」

 いきなり、クラスの誰か、リーダー的な一軍的な奴が声を出して、紙を掲げている。

「お、待ってましたぁ!」

「見して見して!!」

 ザワザワとその男子生徒の周りに人が集まっていく。

 うわー、人に群がるゾンビみたい……。

「私たちも見に行こ!!」

 ハキマは立ち上がり、スピネルの腕を掴む。

「えぇ? もう少し人が少なくなってからにしましょうよ、ただでさえこんな暑いのに……」

「ダメ! 早く早く〜!」

 顔を顰めるスピネルに、ハキマは腕をガシカジ引っ張るハキマ。

「ちょちょ、はいはい分かったわよ」

 して、二人は教室の前に向かった。ガヤガヤしている人混みに入っていく。

「……あ、そういや『魔法勝負トーナメント』の相手とか分かるのか……誰だろ」

 メイトは思い出し、重い腰を上げる。

 うぅ、人混みはやだなぁ、熱いなぁ、熱感じない俺でも何故か熱いよぉ……ふぇぇぇぇ。(溶けた)

 溶けたメイトはズルズル移動すると、黒板に貼られた紙が人の隙間から見える。

 『魔法勝負トーナメント表』

 お、あるじゃん、どれどれ……。

 メイトは人間に戻り、遠目から覗く。

「えーと? 通常魔法科は……あぁ、四人交代制で戦う感じか、で、俺たちの相手は、最初は自然魔法科のやつらか……」

 自然魔法って言や、雷とか水とか火とか使う奴らか。確か隣のクラスだっけ?

「なるほど、それぞれ特化した魔法で戦い合うのか……」

「そうだよ、全部で九科、それでトップを決めるの」

 となると、どの魔法も同じバランスで伸ばすこの通常魔法科は不利になる可能性もあるな……。

「しっかし、『科』とかあんの初めて知ったわ」

「何を見て生きてきたの」

 こんな情報知らないぞ、もっと事前に説明してほしいもんだ、この世界についてといい、なぁ女神様(めがみん)

「ま、別にこれといった情報は得れなそうだし、俺帰るわ」

「え? まだ授業あるよ?」

 ハキマが振り返るメイトを呼び止めるが、メイトは顔を半分ハキマを見る。

「いや、俺はちょっとパスで、流石に疲れたわ」

「疲れることあったかなぁ」

 首を傾げるハキマを置いて、メイトは軽く手を振って、教室を後にし――。

「あ、メイトメイト! 今日は魔法勝負の会議するから残って!」

 ――たいところだったが、昨日のキューちゃんと呼ばれる女の子に手を掴まれた。

「は、はぁ……分かりました……」

「勝手に帰んないでね! メイトいつもこないし、信頼はないけど期待はされてるから! じゃ放課後!」

「はい……」

 そして、キューちゃんは手刀の手をメイトに向けた後、人混みに戻って行った。

 チラッと、視界の端にハキマが映る。

 ――ニヤ。

 ハキマに「いつもサボってるから」(笑)と、小馬鹿にする嘲笑を向けられた後、ハキマはスピネルと話し始める。

 なんだか最近、俺に対する対応が適当になってきた気がする……。

「『社会』、めんどくせー」

 メイトは喧騒から逃れるように、教室から出て行った。


――――――――――――――――――――


 別に逃げたわけじゃないんだからね! ただ喉が渇いたから飲み物を買いに行くだけなんだからね!

 なんてつまらないツンデレごっこをしている間に、自販機の前に辿り着く。

 階段の横、インフラも整った、生徒が行き交う場所の自販機。

 だからなんだという話だし、そもそも金がかかんないから自『販』機でもないし。

 メイトはピッとボタンを押す。

 ガゴン、と、木製の物にガラス製の物が打つかる音がする。

 メイトは腰を折り、取り出し口から瓶を取り出す。

「まだプラスチックはないんだよなぁ、色々見てても、鉄とかステンレスもまだそこまで主流じゃないみたいだし……工業革命はまだなのかね」

 確かに、コップとか皿はアルミ製やセラミックス製の物があったが、それはアルディアに来てからだ。あの村じゃ木製の皿を使っていた。

 やはり、木製がまだ主流で、身分が高い奴がそういういい皿を使うのだろう。

 ま、そもそも工業革命とか言ってるけど、魔法がある時点で蒸気機関とかいらないのかも知れないけどな。

 この世界、やけに魔法便利だし――――。

「で、なんで今更こんな時代背景について語ってんだよ! そういうのは一話目で終わらせとけ!」

 なんて、お得意の独り言をしながら瓶の蓋を開ける。

 オレンジジュースだろうか、オレンジ色の飲み物にメイトは喉をコクっと鳴らす。

 てか別にいいんだよ、そういうのを楽しむのも異世界の楽しみなんだから――でも。

 メイトはその一見甘美に思えるそれを、口に含む。

「……やっぱ、苦いな」


――――――――――――――――――――

 

「僕は大丈夫だからぁ!」

「多分一番大丈夫じゃないから言ってんの!」

 雄大な緑地が広がる校庭、その中程にて、ある四人が揉めていた。

「大丈夫だって! 僕はいいからみんなが練習しててよ!」

「それじゃチーム練習じゃないでしょ、絶対勝つためにも、互いのことを知っとくのが一番なの!」

 活発そうな女の子に腕を引かれるのは、自分を変えるためにクラス代表に立候補した、アリーテール。

 精霊と話せる少年である。

 やっぱ僕に誰かと関わるなんて無理だよぉ。

 すでに弱気になっていた。

「とにかく、一回だけでいいから! 得意な魔法見せて! 色々決めないといけないから」

「――……分かった……」

 こんなことになるなら、立候補なんてしなきゃ良かった……。

「あの、その前に一つ……言わなきゃならないことがあるだけど」

「なに?」

 女の子は首を傾ける。後ろの二人の女子もこちらに近寄ってくる。


「あの僕……魔法使えないんだ」


 アリーテールは手をイジイジしながら言うと、三人の顔は眉を寄せたり衝撃で驚く、最初の女の子が口をガクガクさせた後、喋る。


「なぁーんだ、そんなことか」


「え?」

「大丈夫、うちらもそんなすごい魔法使える訳じゃないし、心配しなくていいよ〜」

 んー優しい。しかし、そうじゃないんだよ、僕は本当に一つの魔法も使えないんだ。

「で、でも……」

「いいからいいから、ほらほら早く見せて」

 女の子はアリーテールの背中をぐいぐい押す。それでアリーテールは諦め、前に出る。

「分かったよ……じゃあ、その剣貸してくれない?」

 アリーテールは、女の子の一人が背中に携えていた小刀を指す。

「え、いいけど……アリーテール君も纏わせる系の魔法使い?」

「いいや、正確には少し違うけど……」

 女の子から剣を受け取り、日光の反射する輝く刀身を見る。

「精霊さん、頼みがあります」

 精霊は、自然界に存在する者や、人の想いから生まれる者などがいる。よってたいてい刀には、持ち主の想いから生まれる精霊がいる。

 アリーテールは、その刀に宿る精霊に話しかける。

「はい? なんですか?」

 パッと現れたのは、手乗りサイズの小さな少女。蝶のような美しい羽をはためかせながら、刀に座る。

「精霊さんの力を使わせてください」

 言うと、精霊は首を巡らせ、刀の持ち主を見る。

「……いいでしょう、彼女の幸せに繋がるのなら」

「はい、確実に」

 そして、たいていの想いから生まれる精霊は、持ち主、その想いの源の人間に忠誠を誓う。

「アリーテール君、急に何を一人で……」

 女の子の一人が、一人でブツブツ言いだしたアリーテールに若干顔を引き攣らせながら呟く。

「精霊じゃない? もしかして……」

「精霊なんて本当にいるの? 絵本の中だけじゃなくて?」

「それぐらいしかなくない?」

 そんな会話はアリーテールには届かず、精霊との会話を続行している。

「でも、タダではありません、あなたの魔力を頂きます」

「はい、お願いしますありがとうございます」

 魔力を奪われること、それは想像を絶する痛みと苦しみに襲われる、非常に危険な行為だ。

 でも、それは僕に取って……"ご褒美"だ!!

「では、貸しましょう」

 すると精霊は消えた。その代わりに、小刀が淡く光を放つ。

「す、凄い……」

 刀の持ち主が感嘆の息を漏らす。

 アリーテールは小刀を腰の横に構え、腰を落とす。

 抜刀の、構えである。

 ――精霊が忠誠を誓っても、持ち主に自覚がなければその力を最大限に発揮することはできない――。

 すると、あたりに風が吹き始め、草が靡く。次第にその風も強さを増し、草は根本から倒れる程までになる。

「きぁっ、なにこれ!」

 そして地響きのような揺れが三人を襲う。どれもこれも、精霊の力が溢れ出た物である。

 ――そして、精霊は人間と比べられないほど、強い――。

 そして、アリーテールは刀で空を斬る。その瞬間、刀を纏う光は赫色に変化した。


「――」


 刹那の静寂の後、無から湧き上がる進撃が、全てを飲み込む。

「ぐぅあああああああ!!!!」

 爆音と莫大な振動と熱と共に"攻撃"は真価を見せる。

 空を斬ったはずなのに、前方全ての草は燃えていて、土埃が天高く舞い、その業火は、遠くの山にすら届いていた。

 ――精霊の力は、地を穿ち、天を裂く、まさに天下無敵の一撃である――。


「な、何これ……」

 ヘタっと腰が抜けて座り込む女の子。その視線の先には、腕を下ろし、"火を纏う小刀"を優しく撫でるアリーテールの背中がある。

 何故か、とても大きく、離れて見えた。

 アリーテールは振り返り、持ち主に刀の持ち手を向ける。

「ありがとうございました……あの、いい人ですね、あ、別に変な意味はないんですけど……こんなに愛されている精霊は初めてだったので」

 ――精霊は、想いが強いほど、強くなる――。

「は、はぁ……」

 持ち主は、目の前で起きたことに脳の処理が追いつかず、呆然としたまま刀を受け取る。

「てか、火やばい!」

 女の子の一人がハッと気がつき、声を上げる。

「大丈夫です、精霊が消したので」

 アリーテールが振り返ると、火は消えていて、焦げすらも残っていない。

「……嘘でしょ……」

 たった一撃で、あんな凄いことを……?!

「あなた、一体何者?」

 問われ、アリーテールは回答に困り、髪をいじる。

「ま、まぁ……精霊と話せるだけの、只の人です」

 アリーテールの反応に些か疑問はあるが、女の子三人は見つめ合う。

 そして。

「すっごーーい!!!」

「かっこいい!!」

「強いよアリーテール!!」

「え、へ?」

 三人に近寄られて、たじろぐアリーテール。

「勝てるよこれなら!!」

「絶対こんなの誰も敵わないよー!」

「うんうん!」

 その時、アリーテールは初めて気がついた。

 僕は、誰かに必要とされる人間だったんだ――。

 アリーテールは、過去の自分を思い出した後、フッと微笑む。

「ありがとうございます、嬉しいです」

 ここから始めよう、今までできなかったことを、これから、いろんな人と関わっていこう。

 その時、初めてアリーテールは女の子たちの顔を、ちゃんと見た。

 ――輝くほど綺麗な三人は、とても美しかった。

ご精読ありがとうございました!

毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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