【第63話】神の一手
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
アイカ
イト
目の前に、花弁に乗るほど小さな女の子がいる。
名は『サン・アレク・ライト』。
年は十代半ばほどだろうか、小柄で細身の体。
赤青黄色、その他のあらゆる色が混ざる虹色の髪に、宝のように輝き、そして石のように硬い、射殺さんとする瞳。
黒い、露出の多い服を着ている精霊は、恥じらうことは全くなく、丈の短いスカートで足を組み寝っ転がる。
「して、余に訊きたいこととはなんぞ? 雑種」
あからまさに人間を侮辱しているが、この際どうでも良い。
「三日前、ここで女の子二人がゲームをしたはずなんだ、知ってるだろ? そのゲームについて知りたいんだ」
「……」
しかし、アレクは興味なしと言うように、頭の後ろで手を組み、目を閉じている。
「あの……アレクちゃん?」
「その名で呼ぶなと言っているだろう"不快害虫"、それに、この愚人は不愉快だ、余と話す時なぜ姿を見せない?」
「お、ぐ、グフゥ……」
精霊に罵倒され、気持ち悪い笑みを溢すのは精霊と唯一干渉できる人間である。補足、少年は罵られるのが好きな、いわゆるMである。
精霊はどうやらメイトが透明人間であることに不服らしい、しかしメイトも、できれば透明じゃない状態でいたいとは常々思っている。
そこを突かれると、些か苛立ちを覚えてしまう。
「そうか、まぁ仕方ね、ゾイ頼んだ」
メイトが交渉することは諦め、後ろにいたゾイに任せた。
「分かった……――クレア様」
ゾイは精霊の前に膝をつき、頭を下げる。
「貴女様が我らのために善処してくださること、誠に遺憾であります……無礼も承知でお願い事がございます。先日、この場で桃色の髪の少女と紫色の髪の女の子が、ゲームをしたと思われるのですが、そのゲームについてお教え頂けないでしょうか?」
普段の彼女からは想像もできない慇懃な態度に、メイトは少し驚愕した。
「ふむ……確かに余の記憶では、そのような生娘がゲームをしていたな」
精霊は相変わらず寝転んだまま、上から目線でゾイを見る。
「僭越ながらお聞きするのですが、そのゲームの勝利条件はご存知ですか?」
ゾイの言葉に、精霊は冷たい視線をゾイに向ける。
「なぜ、そのようなことをに汝ら伝えなければならんのだ、余にとってのメリットは?」
メリットね……打算的なお嬢様だこと、しかしそう言われればどうしようも無い、ここは正直に――。
「ないです」
メイトはゾイの横から割り込む。
言うのそれ!? ここは嘘でもメリット言っとかないとダメじゃない!?
「ならば論外だ、去ね」
ほら〜……。
精霊は、完全に興味なしと判断して、姿を消し始める。
「ですが、良いことじゃないですか!? "手伝う"って」
薄くなり始めていた精霊に、メイトは地面に手をついて叫ぶ。
「良いこと……」
精霊は、メイトの言葉に既視感があり、目を開く。そのまま威圧的な視線のまま、メイトを見る。
「…………汝、その言葉にどこで……?」
「……?」
メイトはなんのことか分からず、一瞬戸惑うが、答える。
「えと、これは別に誰の言葉とかではなくて、自分の言葉です」
「……」
精霊は足を組み直し、顎に手をやる。その瞳は畜生を見る瞳でなく、考え込み、仮定を辿る瞳だった。
「汝、目覚めた場所はどこだ?」
寝覚めた場所、その言い方を使う奴なんて、俺が普通ではないことを知っている人だけだ。
なら、伝わるのか?
「……超大きな木の下で」
メイトが瞳を細めて精霊を睨みながら答えると、精霊の顔は瓦解する。
「フッ――フハハハハハハ!!!!」
「……」
突如の爆笑。腹を抱えて、花弁の上を転げる精霊の目尻に涙がたまる。
ゾイと少年も、ポカーンと呆ける。
「はぁ、はぁ――そうかそうか……ほんと面白いこと考えるなぁ……」
精霊はひとしきり笑った後、指で涙を拭いながら呟く。
なんのことだか分からんが、なんかご満悦のようだしいいや。
すると、精霊は上から目線でメイトを見て、口角を上げる。
「気に入ったぞ、メイトやら」
「そ、そうですか、それはありがとうございます」
何を気に入られたんだ……俺が木の下で目覚めたこと?
「して、その生娘のゲームの勝利条件だったな? それは――」
バッと、精霊の言葉にメイトとゾイが近寄り、聞き入る。
「セッ――」
その時。
「あ、あれ……メイトさん何してるんですか」
「――」
突然、後ろから声が聞こえる。その声音には心当たりがある。
メイトがおおよそ算段をつけて振り返ると、そこにはアクア色の髪で、前髪で瞳が隠れた女の子。
「アイカ……いや、なんでもねぇよ」
メイトはローブで精霊を隠しながら身体をアイカに向ける。
「アイカはどうしたんだ?」
「私はこれから授業ですので、移動しようかと……メイトさんは――」
その時、アイカは隣の男に気がつく。
「あれ? この方って確か……"せ"――」
ピクッと、ゾイとメイトの眉が動く。
「……先日変なことしてた方じゃないですか、なんだか道の隅でうずくまって」
…………。
「そうだよ、まぁ変な奴だ、気にすんな、それより急いだほうがいいぜ、あの先生少し遅れただけで入室禁止にするから」
「そ、そうなんですか!? で、ではこれで!」
アイカはハッとして、パタパタ走って行った。
「……"せ"、か」
メイトは振り返り、精霊に被せていたローブを避ける。
「メイト、余に薄汚い布切れを被せるとは随分の狼藉だな……」
「わ、悪かった……それより続きを」
「……」
すると、精霊は目を細め、メイトを見定める。
「気が変わった」
「ん?」
精霊はフッと消えた。
メイトとゾイは固まる。
「え、ちょ……なに? ……分かったよクレアちゃ――ごめごめごめんなさい」
唯一、精霊のお力添えなしに精霊とコミュニケーションを取れる人間の少年が、ボソボソ話す。
「あの、二人とも……もう話すことはないってさ」
「な、なんだそりゃー……」
メイトはガックリ地面に腰をつく。
「なんで? なにが気に食わなかったの? あの、サン・クレアなんとかさんは」
「いや、そうじゃなくて……本人曰く、『メイトがそうなら、これでいいだろう』だって……」
……俺が、"そう"なら――。
「な、なにそれ……」
ゾイは意味不明と呟き、メイトをチラッと見る。
相変わらず透明で表情は伺えない。
「……まぁ仕方ねぇなぁ、な」
メイトは一切後に引かず、納得し立ち上がる。
「さて……帰るか」
「え、帰るの? まだ答え聞いてないよ?」
「……大丈夫、精霊からちゃんと聞けたから、俺たちが勝てるさ」
そう、当たり前のように言うメイトに、ゾイは苦笑する。
「あ、はは……メイトほんとに意味不明……どこで言ってたの?」
多分答えてくれないと、知っていながら質問する。
「……ちゃんと思い出せば分かるさ」
ほら、やっぱり。
メイトは楽しそうな声音だ。
きっと、分かったのだろう。
ならば、メイトを信じよう。
「そっか〜、思い出せばね〜……あ、ありがとね、助かったよ」
ゾイはポカーンとしていた少年の肩をポンと叩いた。少年はなんと返答して良いか分からず、固まったまま、ゾイを見る。
「またね」
そう言って、ゾイはその場を離れた。メイトもその場を「じゃまたな」と言い残し去る。
少年は、初めて人の頼りになることができて、達成感に満たされており、しばらくその心地よさに浸っていた――。
――――――――――――――――――――
夜、いつも通り風呂へ行き、帰ってきた。
扉の前で止まり、浅く深呼吸してから、ゆっくり音を立てないように部屋に入る。
暗い廊下を進むと、部屋に電気は灯っていなかった。
寝てんのか……?
メイトは電気ゆっくり歩き、部屋の間接照明をつけようと、ランプに手を伸ばす。
その時。
「ウワッ!」
誰かに押し倒された、正確には足を掛けられしっかり技で倒された。
「いった……」
床に打った頭を摩りながら、前を見る。
暗がりでよく見えない。が、人が自分の上に乗っていることは分かる。
「……誰?」
メイトが抵抗を諦め、声をかけると、暫しの沈黙の後、声がする。
「だ、だーれだ?」
メイトは耳を疑う。
いや、アイカじゃねぇか……。
「あーそういうことね、確かにこの部屋は立ち入り禁止ルールを別に作ってなかったからなぁ……」
「う、うん、ごめんねメイト――だから、さ……」
すると、アイカは身体を倒し、メイトの上で寝っ転がる。
メイトは胸の辺りに柔らかい感覚がある。
「私、もうッ、我慢の限界ッ……!」
アイカはそう言って、メイトの身体に抱きついてきた。
メイトはチラッと顔を見ようとすると、だんだん暗闇に目が慣れてきて、顔が見える。
「メイト――私と、シよ?」
とろけるような、熱った顔で、アイカはそう言った。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




