【第58話】モテ期到来
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
イト
ある日、メイトは部屋にて正座していた。
「えー〜と、あとはコレを入れて...」
デカいシンクやIHコンロなど、最先端をいくキッチンでは二人の女の子、ハキマとスピネルが汗水垂らし何かに勤しんでいた。
ハキマは鍋にチョコを放り込み、手をかざし熱をつける。
スピネルはすでにトロトロに溶かしたチョコを綺麗に型に入れ、冷蔵庫に入れていた。
何故今はこうなったのか、それはほんの数分前に遡る――。
「――メイト、お菓子好き?」
「え」
今日は休日、部屋でダラダラしていたメイトはハキマに話しかけられた。
普段はスピネルとどっかに行くのに、なぜかこの日は二人とも部屋にいた。ちなみにゾイは下の階にゲームしに行った。
「ま、好きってほどじゃないな、あんま軽食食わないタイプだし」
「そうなんだ、チョコとか好き?」
メイトは体を起こし、ハキマと向き合う。
「チョコは、まぁ好きだな、つってもあんま甘くないやつな、かと言って苦くもないやつ」
「へ〜...分かった!」
「そうか、良かった」
なにが分かったのか、そして何が良いのか分からんが、ハキマは納得したようなので気にすることはしない。
するとハキマはスススーと移動し、エプロンをつける。
メイトは一瞬なんなのか理解できなかったが、察する。
「あ、飯作んの?すげぇな料理できるなんて」
「え、いや違う」
ハキマはムッと頬を膨らませてメイトを睨む。
「え、じゃなんでエプロンつけた?」
「チョコ作る」
ハキマは冷蔵庫からチョコらしき黒い物体を取り出す。
「あ〜、理解理解、頑張って」
なるほど、まぁなんだ、たまにあるよな、なんか料理したくなるヤツ。
俺も前世の時なぁ...うん、まぁ俺は無かったけど多分ある気がする。
「うん!頑張るから期待しといて!」
ハキマはグッと親指を立てて笑う。
「期待?あーまぁしとくよ」
何故俺が期待するだろう、俺が食べるのか?
「ねぇ、ちょっといいかしら」
すると、今まで黙って聞いていたスピネルが口を開く。そして、エプロンをつけていた。
「私も参加していいかしら」
腕を捲るスピネルに、ハキマはにっこり笑う。
「いいよ〜ネルネル、じゃ勝負しよ〜!」
「いいわ、私は『メイトを一日自由にしていい権利』を賭けるわ」
サラッと言うスピネル、メイトは固まる。
「おい、流れるように勝手に人を賭物にするな...」
「いいよ、じゃ私も同じ物を賭ける」
「え」
メイトの言葉は届かないようで、ハキマとスピネルは火花を散らす。
「えぇ...」
メイトはそう、言葉を漏らした。
――と言うことがあり、今二人のチョコのお菓子を待っているわけだ。
てかチョコって鍋で溶かすもんじゃないだろ、湯煎だろ。
「うわっ焦げてる!」
ハキマは急いで熱を止める。一方スピネルはすでに固まったチョコを取り出し、飾り付けをしていた。
もう、勝ち決まってんだろ...。
数分後――。
「ど、どうぞ...」
「どうぞ」
机に出されたのは二つの皿。
一つは三つ星シェフが作ったようなスポンジやチョコソース、金粉などが綺麗に輝くとても美味しそうな見た目である。
一方は、まるでボロボロの木炭のような固形物がコロコロと硬い音を立てて皿を転がる。
全く美味しそうではない。
「...じゃいただきます」
メイトはフォークを掴み、先にスピネル特製のチョコお菓子を食べる。
「はむ、んむんむ...美味しい」
さて、お次は...。
メイトはフォークを置いて、木炭を近くに持ってくる。
「どれ、パク、ゴリゴリボリボリ...、...」
食べものからしちゃいけない音も味がするが、メイトは口を開く。
「美味しいな」
ハキマは今まで沈んでいた顔がパァーと明るくなった後、頬を赤く染め顔を逸らす。
「...ほ、ホント...!?」
「マジで、正直勝敗つけられんわ俺、どっちも美味しいもん」
そういってメイトはスピネルのチョコお菓子を食べ、木炭を食べ、比べる。
「ねぇ公正な判断をしてよ、変に気遣いとかいらないから、ね?」
スピネルは木炭をゴミを見る目で見下しながら言う。
「...んなこと言ったてマジでどっちもうまいぞ、それに美味しいというものは人の感性で、それに勝敗をつけること自体無理ってもんだ、俺がジャッジマンとしてある以上俺が正しい、ので、この試合はドロー」
ハキマはそれを聞いて、メイトの隣に座りメイトの腕を掴む。
「だよね〜、メイト〜」
「ん、そうだね、あとあまり近づかないで?照れちゃうから」
「え、あ、ぁあ!ご、ごごごめん!」
バッと腰を浮かしてスライドし、横にずれ離れるハキマ、メイトはふぅ〜と深呼吸する。
チラッとハキマを見る。
頬を赤くして視線を惑わせながらニマニマ笑っている。
洗脳させられているとは言え、ものすごく可愛い。
メイトが若干見惚れていると、スピネルが呟いた。
「――もっと私を見てよ――」
昔からの癖で、どんな小さいことも感知するメイトがその言葉を逃さない。
「なんか言った?」
聞くと、スピネルはハッとして取り繕った顔をして。
「いえ、なんでもないわ」
そう、いつも通り答えた。
...スピネルも洗脳させられているはずだけど、全くそう言う気配はないか。
「まぁつーことで、このゲームはドロー...てかゲームがドローの場合どうなるの?」
「ん〜、大体両方の賭物はなし...になるかな?」
ハキマは顎に手をやり、考え答える。メイトは神妙な顔つきで呟く。
「無効試合か、まぁ妥当だよな」
それは、確認するように、どこか遠くを見ているように、気の抜けた返事だった。
「違うわ、ドロー、引き分けの場合は、両者の賭けたのもが適応されるのよ」
その瞬間、メイトは目を見開く。
今、メイトの脳内を埋め尽くすのは"可能性"。
それにより、最も合理的な解に辿り着く。
しかしメイトはそれを表に出さずに、平然を務める。
「なんだそりゃ...誰が作ったんだよそんなルール...」
呆れて項垂れるメイト、しかしその顔はしっかり楽しそうに笑ってるのは、誰にも見えない。
しかし、メイトはふと気がつく。
「え、てことは俺今日一日お前らの自由にさせられるってこと?」
メイトは汗を垂らし自分を指差す。
ハキマはニマーと微笑み、スピネルは醜悪にメイトを上から見る。
女の子の好きにさせられる、字面だけはいいものだが、実際そんなことはない――。
と、強がるメイトですが、実際ニヤーとほくそ笑んでいます。
ククク、計画通り...嘘だけど、一体どんな要求させられるのやら...そ、それは我々の業界ではご褒美ですブビィ!とか言うか。
そんなこんなで、部屋にはニヤニヤ気持ち悪く笑う三人が爆誕である。
――――――――――――――――――――――――
ゾイは二階にあるゲームコーナーにいた。
「はい、チェックメイト〜」
「なっ!?ぐぬぬ〜...」
「おお、これで八人抜き...マジでゾイに勝てる奴いないのか!?」
周りの野次がざわざわ騒ぐ。
今、チェス盤のあたりでゾイとそのクラスメイトによるチェスゲームが行われていた。
『ゾイに好きなことを要求できる権利』を賭けた男子vsゾイによるゲームは、現状ゾイが八連勝していた。
「さてさて〜次は誰かしら〜?」
ゾイは辺りの平々凡々の男子どもから虐める相手を探す。
そう、ただ弱者にマウントを取るだけの、なんとも情けない暇潰しである。
と、その時。
「あの、すみません...」
男子の隙間を掻い潜って手を挙げたのは、おとなしげの一人の女の子だった。
「あら、ごめんなさい、今は男子だけなの」
「す、すみません、でも一回だけいいですか?」
目が隠れるまで伸びた前髪、全体的にボサボサのアクア色の髪、幼い輪郭など、あまり目立つような人でない。
手をもじもじさせたり、声の震えや声量などから、あまり人との付き合いが得意ではないと察知できる。
誰、この人、同じクラス?こんな人いたっけ...。
「まぁいいわよ、一回なら」
早いとこ片付けてしまおう。
と、思いゾイはチェスに手をかざす、すると駒は最初の定位置に戻る。
「あ、ありがとうございます...」
青髪の女の子はそそくさ男子たちを避けながら席に座る。
男子たちはすっかり黙り込み、当然の乱入女子に静かに目配せするだけだ。
「はい、じゃあなたから」
「は、はい、失礼します」
そして、女の子はよそよそしく駒を動かした。ゾイもすかさず駒を動かす。
「あの、厚かましいと思いますが、これで私が勝ったら何個か質問に答えてくれませんか?」
女の子は手を指しながら訊く。
「いいわよ〜」
ゾイは肘をつき、手を指しながら答える。
あんたが私に勝つなんて、万に一つもありえないし...。
「ありがとうございます」
それから二人は会話することなく、盤上にて、駒を使い、戦略を練る、ある種の"コミュケーションを"始めた。
――数分後――。
「チェ、チェックメイトです」
女の子はそう言いながら、優しくクイーンを置く。
ゾイは目を丸くして固まる。
は?え、いや、いつの間に?
盤上は、完璧と言うべきほど美しく、完封されていた。
「あ、あなた一体――」
ゾイが聞こうとした瞬間、女の子は口を開く。
「あのッ、質問いいですか?」
「あ、あぁ、いいよ」
ゾイはそう言えば賭けたことを思い出す。
「あの、メイトさんとはどんな関係なんですか?」
「メイトと?」
いきなり出てきた名前に首を捻りながら答える。
「えーと、なんだろ、仲間ってほどでもないし、同居人でもないし..."友達"かな?」
正確には友達でもなく、面白いから近くにいたいだけなのだが。
「と、友達...じゃあの二人さんは?」
「ハキマとおねぇちゃんのこと?あの二人は仲間だよ、私もその『絆』に負けたし」
仲間と言えるほど仲が良いのも事実だ。
「それって、こ、"恋人"とかじゃ...ないですよね?」
女の子は照れた様子で頬を赤くして訊く。
「恋人!?」
ゾイは少し予想外で驚いた後、手を振る。
「いやいやいや、あの二人はそういうのじゃない、てかメイトがそういうのじゃないから...あ、まぁ最近はわかんないけど...ま、まぁとにかくそういうのじゃないから!」
「そ、そうですか...」
女の子は安堵したように息を吐く。その反応を見て、ゾイは色々察し、不敵に笑う。
「なんでそんなこと訊くの?」
ゾイがイダズラするように訊くと、女の子は頬に両手を当てて顔を逸らす。
「え、えとそれは――」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
と、いきなり咆哮と共にメイトがゲームコーナーに転がるように入ってきた。
「な、なんだ!?」
男子どもがざわざわしだす。
「はぁ、はぁ...あ、おいゾイ!あいつら止めてくれ!あいつらの要求酷いんだよ!マジで死ぬ!」
メイトは酷く焦りながら、男子たちを避けてゾイの肩を掴む。
「え、は?要求ってなに?てか落ち着いて...」
「め、メイトさん...」
女の子は浮くローブ、つまりメイト本人であると理解し、頬を赤く染める。
「いやあいつら、足肩揉めだの皿洗えだの洗濯しろだの手料理作れだのゲーム相手なれだの服脱げだの面白い話しろだの、完全に殺す気だろ!?」
「いや、それじゃ死なないでしょ」
「アホか!元準引きこもりカス人間舐めんな!家事とかできるわけねぇだろ!」
死ぬ原因は家事の方なんだ...。
「ま、まぁとにかく!なんか知らないけど頑張って!」
「ひでぇそれ!」
メイトがガタガタ震えていると、女の子が自分を見ていることに気がつく。
...ん、誰この人。
「あ、あのッ!!」
女の子は声を裏返しながら声を出し、メイトの近くに寄る。
メイトは反射的に少し後ろにのけぞる。
「私、メイトさんが好きです!!」
辺りに静寂が流れる。
男子全員は固まり、目を点にして女の子を見る。
ゾイは口を開けて女の子を見る。
メイトは一瞬固まった後、天井を仰ぐ。しっかり間を置いて、呟いた。
「モテ期、来ましたか――」
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




