【第57話】恋のヒット音
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
ハキマ・クォーツ
スピネル
ゾイ
イト
体温がない。つまり熱を感じれないということ。
言わば火耐性や冷耐性と言えるのだが、転じて言えばお湯と水の違いが分からない、暑いのか寒いのか分からないなど、挙げればキリがないほど私生活に弊害がある。
その一つ、『お風呂が全く気持ちよくない』と言うのが大きい。
前世は引きこもり予備軍だった俺は毎日風呂に入らずとも別にいいのだが、ふと入った時、熱がない浮遊感というものは酷く気持ち悪いものなのだ。
と、言うことでこっちに来てからは風呂は大体三分で上がってしまう。
汚いとかちゃんと洗ってんのかとか言われるかも知れないが、言わせてもらおう。
うるせぇ、と。
なんてしょーもないことを考えながら共用温泉に向かっていると、温泉の入口でふと人を見つける。
「ん、ハキマとスピネルじゃん」
「え? あ、あぁメイト……」
今上がったのだろうか、サラサラ靡くピンク髪を翻させて振り返るハキマと、その横に、いつものダークな雰囲気と共に妖艶さを醸し出す小紫色の長髪を美しく流すスピネル。
「お疲れ、お前ら今上がりか? 悪いけど夜飯先に食ったから食っててくれ、あとゾイ今部屋にいるから」
メイトは言いたいことだけ言う。
なんら変わりない普通の会話、のはずだが。
「ぇえ、あ、ん……」
ハキマは視線を迷わせながら答える。その口をアワアワしてうまく回らない様子だ。
「そ、そう、分かったわ」
スピネルもメイトから視線を逸らし答える。
「……? ん、んんぁまぁそういうことで」
メイトは不信感を抱きながら温泉内に入る。
脱衣所にて、服を脱ぎながら考える。
なんだあいつら、頬なんか赤くして……風呂であったまったからか、しかしなんか変というか、照れてると言うか。
メイトは服を脱ぎ終わり、温泉に入る。ガラスの戸を開けると湯気が溢れる。
ま、どうでもいいや。
メイトはペタペタ歩いてそのまま風呂に飛び込んだ。バッシャーンと水が高く上がる。
周りの生徒からものすごい嫌な目で見られる。
「――はぁ……これやってもバレないって、透明人間の特権だな」
全員気づいてるってーの!!!!
そう思った、男子一同であった。
――――――――――――――――――――
――カチ、カチ、カチ――。
スピネルの部屋では、時計の音だけが静かに規則的に刻まれ、なんとも言えない雰囲気が流れていた。
ソファに座り、足を伸ばしたまま本で顔を隠すゾイ、机でチェスをするスピネルとハキマをチラッと本の隙間から見る。
……なんか変だなぁ……なんか落ち着かないし、心ここに在らずみたいな……。
二人は全くチェスに集中していない。むしろ負け筋だけを進んでいた、が、二人ともそうなので一向にゲームが進まない。
イライラするなぁ。あ、ほらおねぇちゃん今そっちだったら勝てたのに……。
ゾイはその妙な雰囲気がなんなのか分からず、イライラしていた。その時。
ガチャ。
「いんやー、遅くなった」
ローブが、メイトが入室してきた。
「遅かったね、どしたの」
「試しにサウナで整ってた、まぁ熱くないから全く気持ちよくなかったけど」
「熱くないのにサウナに入ったんだ」
――素敵。
ゾイはその意味分からん行動に若干惚れる。
「まぁそれだけ……ん? おーチェスか、どれどれ」
メイトはチェス盤を覗き込む。
「あ、め、メイト……遅かったね」
「……」
ハキマはドギマギしながら喋り、スピネルは俯いて口に手を当てる。
二人とも、視線は定まらず頬が赤い。
も、もしかして――。
「あと、"六手"……だな」
「六手?」
「あぁ、あと六手でハキマがチェックメイト……だな」
メイトはそう言いながらソファに座る。ハキマとスピネルはメイトを驚いたように見る。
「すごいね、どう動かすの?」
ハキマは目をキラキラさせて聞いた、スピネルは横目でメイトを見る。
「いや嘘、テキトーに言った」
「な、なにそれ……」
はぁ、メイトってホント……そういうところが好き、チューしたい――。
ゾイは顎に手をやりフッと笑う。そして前を見ると、スピネルとハキマは。
「――」
「――」
二人とも言葉を失ったように、目を開いて固まっていた。
そして。
ズッキゅゅーーーんッ!!!!
と。
「あ、えと、あははなにそれ……」
「……ば、バカじゃないの?」
ハキマは髪をイジイジ整えながら答える、その顔を完全赤面で、視線が渦を巻く。
スピネルはスカしているが、手で隠した頬は紅潮しているのが見えた。
こ、この人たち……ま、まさか――。
「まぁほんとはルールすらうろ覚えレベルだから俺、ははは」
ズッキゅゅーーーん!!!!
か、確定だーー!!!!
ゾイは顔を本に埋める。
マジでこの人たちメイトの言葉に照れてる……好きってことだ、しかも結構ガチで。
ゾイはソファの上を移動し、メイトの顔あたりに口を寄せる。
「ちょと、外で話が」
「……?」
ゾイは囁き、退出を促す。メイトは首を捻りながらゾイと共に部屋を出た。
――――――――――――――――――――
「あの二人が俺に惚れてるだぁ?」
メイトは顔を顰めながら扉に寄りかかる。
「うん、アレはマジ恋だよ、"ガチ"だよ」
「……」
確信するゾイに、メイトは半眼で口を開く。
「んなわけねぇだろ、なんで急に……てかなんでわかんだよ」
「妹だからかな、おねぇちゃんのあの顔初めて見た……アレは恋してる乙女の顔だよ」
「は、はぁ……下らん、気のせいだろ」
「えぇ〜、ホントなのに〜!」
ゾイは握り拳をブンブン振りながらメイトに近寄る。
メイトはふと、一つ考えつく。
「……ちょと離れてくれ」
「あ、ごめ」
ゾイはススと後ろに下がる、メイトは腕を前に構える。
「ルール」
腕に光板が現れ現在の校則が映し出さられる。
「――……あ〜、これはまた……」
その時、ゾイはドキッと胸打った。メイトの口調が些細だが、変化した。
それは、あの時と同じ、ゾイが惚れた、"ゲーム中のメイト"である。
「誰かが仕掛けてきたわけだ」
メイトはその校則を見てニヤと醜悪に笑う。ゾイは隣から光板を覗き込む。
「『メイトを意識する』……ってこれ校則!?」
ゾイはその校則を読み上げて驚く。
「つまり誰かがハキマとスピネルに俺を意識させることで勝負して、勝ったんだろ。なんでハキマとスピネルはそれを言わないのかと言うと?」
「下の『ゲーム内容、賭物内容、対戦相手など、このゲームに関する情報含め、近辺全ての記憶を無くす』という校則……だからあの二人は覚えてなかった」
「そうゆーことだな、しかしなぜこんなこと……一体誰が……」
「これじゃこの校則消そうと思っても相手が分からないなら取り消せれないね」
校則を取り消す場合、本人が削除するか、ゲームで勝ち消させる以外ない。
「まぁおおよそ俺のことを狙ってだろうな、目的は分からんが九位を狙ってか……となると九位以下のやつ……」
「でも立場上私が九位だよ? 九位になりたいなら私を狙わないと」
メイトは九位に勝った事実だけがある状態、本当の九位は変わらずゾイである。
……仮にXと名付けよう、Xは二人に俺を意識させた、だからあいつらは俺に惚れた。
一見俺がただモテただけだが、一体俺にどんな不利が……。
「……」
「……」
沈黙するメイトの返事を待つゾイ、すると。
「ま、現状なんかゲームを挑まれてる訳でもないし、攻撃ってほど攻撃でもないし、一旦保留でいいだろ」
メイトはルールをしまう。
「でもあの二人言っちゃえば洗脳されてるんだよ? 助けないと」
「……いや、記憶がないならあいつらに取ってそれが普通なんだ、ならなんら罪悪感はない」
「え、それはそうだけど……」
「とにかく、今は敵、いや敵かも分からないやつのことは置いておく!」
メイトはビシッと言い切る、その様子でゾイは察する。
メイト、ただこの状況を楽しみたいだけなんじゃ...。
「じゃ戻るか、あと"こうなってること"はあの二人には言うなよ」
メイトはそう、ゾイを軽く睨みながら部屋に戻っていった。
「……抜かりない……流石メイト」
そうとしか言えないゾイであった。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




