【第44話】雑魚狩り
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン 透明人間。
ハキマ・クォーツ 温厚篤実。
スピネル 男性嫌悪。
イト メイトのゲーム相手。
「えーでは昨日、オリエンテーションも終わったので、今日から授業を始めます。ではまずこの指導書の一枚目を――」
壇上では、学生とは柄が違うローブを着た教師が講演している。
生徒たちの席は、後ろに連れて階段を登るのか、前世の言うところいわゆる大学でよく見るあれだな。
まぁ異世界物によくある教室だな。見てて楽しい。
俺とハキマ、スピネルは並んで中間程に座っていた。
俺は指導書を開く。
ふーん、なるほどなぁ……全然わかんない。
前提として、メイトは動かす魔法、ただ物を動かす魔法しか使えないので、それ以外の魔法は――。
――単純に分からん。
そう、魔法は感覚が大きい。想像できればできると有識者は言うが、メイトは現代人だったので、前世の固定概念がどこか深いところでその想像力のストッパーとなっているのだ。
普通に手から炎なんて出る訳ないだろ……魔法としても。
動かす魔法だけは使えるのは、人がいればそうなる、と考えることだけは得意だったから。
メイトはペラペラ語る教師を一瞥した後、隣のハキマに話しかける。
「なぁ、今何やってんの?」
「へ? いや、今は『衝撃魔法:螺旋系統の普遍性と異特性の関係性』ですよ」
「訳わからん」
最初の授業でやる内容ではないことは確かだな。
「にしても、結構難しいんですね……追いつけるかな」
ハキマは心配そうに呟く。すでに追いつけていないメイトはテキトーに分厚い指導書をめくる。
なんか、イトとの戦いで使えそうなもんねぇーかな。
「あなた集中しなさい、ここは神聖アルディア、バカは置いていかれるわよ」
ふと、ハキマの右隣に座るスピネルが小声で忠告する。
なぜその忠告に俺が含まれていないのかは疑問だが、まぁいいや。
俺は周りを見る。
……この中にイトがいないことが確定した今、だいぶ気を休める。
生徒数は五十人ほど。この学校は取りたい授業などは選択できるが、クラスメイトは固定らしい。だから今この部屋にいる人たちとコレから四年間過ごす訳だけど……。
メイトの頬に汗が垂れる。
思い出す。前世の記憶を。
失敗した友達作り、ほとんど誰とも会話せず過ごした中学校。友達を作ろうと頑張るが何故かできない高校初日。そのまま彼女はおろか友達も一人もおらず夏休みを超え……までは覚えているがその後は気がついたらこの異世界に。
結局、俺が本当に心を許せたのなんて妹か家族ぐらいで、他はテキトーに上手く接していただけだった。
その事実が、メイトの深くで"ストッパー"となっていた。
メイトは何かワンテンポ挟まないと、誰かと関わるのが苦手だった。
メアリーはたまたま馬車に乗りこんだらいたから上手くいけたけど、こういう自身が誰かを選択できる立場に立つと、無理なんだよ。
「……まぁいいか、友達なんていらねぇし」
メイトは痛い強がりを呟く。それをハキマが聞き逃すわけもなく――。
「え? 私は友達じゃないんですか?」
「え?」
自分を指すハキマにメイトは戸惑う。
「……分からん、友達とか……俺とハキマはなんか流れで一緒にいるだけだし……」
「じゃ! 今から友達!」
ハキマは俺の手を掴む。俺は急に触られてびっくりしつつ、答える。
「あぁ、分かったよ、友達な」
「やった!」
ハキマは手を離し、グッと拳を作り喜ぶ。
「あ、ネルネルもほら、友達!」
ハキマはスピネルにも手を出す。スピネルは差し出された手を見た後、その手を軽く握る。
「はいはい、友達友達」
「うん!」
そんなテキトーでいいんですか? てか友達になる時って握手するもんなんですか? うーむ、やはり分からん。
「あ、ネルネルもメイトと友達になってよ、握手〜」
「それは絶対に嫌」
「え〜?」
俺は別に気にしないけど、というかメアリーでたいぶ耐性ついてるから毒舌とか気になんないけど……こう、これからのことを考えたら、この仲はあまりよろしくない。
「ネルネル……なら、協力者としては握手できるか?」
「……まぁ、それなら問題ないわ。あと二度とその名前で呼ばないであんたは」
スピネルは妥協し、テキトーに手を差し出してくる。俺はそれを軽く握る。
と言うことで、協力者として握手した。
――――しっかし、つまらん。
「――で、この時に発生する魔素の螺旋が違う方法の螺旋に似ているから――」
数刻黙って授業聞いてたが、一切理解できない。いや、理解しようとしないだけかもしれないがな。
コレを学ぶ必要性を感じない。
そもそも俺は、魔法を感知できない。だから洗脳魔法にかかった。だが、それはどうしようもなく、生まれつき備えられている第六感のようなもので、この世界生まれじゃない俺には、今更どうしようもないことだ。
最初は魔法に心躍ったが、どうやら魔法も一筋縄でいかないらしい。
だから今もこうして透明人間を作って踊らせて遊ぶくらいには暇なのだ。
メイトは肘を机につき、死んだ目で教師を見ていた。
もはや、見ずとも透明人間は作れるようになっていた。
「さて、ここまで話してもまだ分からない人がいるだろうし、外へ行こうか、実践してみよう」
お、やっと面白くなってきた――。
――――――――――――――――――――
城の巨大な裏門から出て、少し歩いたところの広場。
ほんと敷地広すぎ。この広場も奥見えないほどでかいし。
「では二人組を作って、螺旋の流れを掴んでみなさい」
教師が言い終えると、生徒の各々移動始める。大体みんな友達は作ったようだ。
「よし! 私たちもやろ!」
「えぇ、いいわよ」
ハキマとスピネルは一緒にやるらしい。
俺はその後ろをついて行く。
「私、螺旋苦手なんだよね〜、できるかなぁ?」
「あら、そんな難しくないわよ慣れれば……」
ふぁーーー〜……寝み。
「そうかなぁ? でもかっこいいよね」
「そうね、実際、実践でも結構使われたりする技法らしいわよ、応用も効くし」
「はぇ〜、すごいね」
……。
「なんでいるの?」
いきなりスピネルが話しかけてきた。
「え? なんでってなんで?」
「いや、あんたも誰かと組みなさいよ」
「アホか、俺にそんなコミュ力あるとでも?」
「普通にあるでしょ……頑張りなさいよ……気持ち悪い」
「まぁまぁ、メイトも一緒にやればいいじゃん」
ハキマはスピネルを宥めながら俺に微笑む。
「というわけで頼む」
「……別にいいけどさ」
スピネルは横を見ながら呟いた。
「サンクス」
俺は手を合わせてお礼する。
「じゃここでやろっか」
「そうね」
――そして、ハキマはスピネルから教わりながら螺旋を撃ち始める。
俺は後ろから眺める。
螺○丸か? いや違うか、玉じゃないし。
ハキマは腕を構えてイメージする。すると手が光り、風のようなものが発生する。
「そう、それが螺旋よ。あとは大きくするの」
「な、なるほど〜、ネルネルもできるの?」
「もちろん」
スピネルも腕を構える。すると一瞬で手の光は大きくなり、発射される。
それは想像よりも大きく強く、草を刈りながら進み、そのうち消える。
「はい、これが螺旋よ」
「す、凄い! すごいネルネル!」
「コレぐらいアルディア入る人ならみんなできるわよ、普通よ」
そうなんだ、俺できないけど――。
「おい」
いきなり後ろから話しかけられた。ハキマとスピネルが先に俺を見た。正確には俺の後ろを。
俺も振り返ると、そこには男が三人いた。
「お前が透明人間か」
「……んだけど?」
その中のリーダーのような、金髪と黒髪に別れた男が話しかけてきた。
「俺と一緒にやろうぜ、"魔法"」
男は意味深に誘ってきた。俺はめんどいと考えながら振り返り、二人の様子を見る。
ハキマは心配そうに俺を見て、スピネルはジロッと男たちを睨んでいた。(俺含め)
めんどうごとは他所でやれ、と言っているようだ。
「いいよ、別に」
「こっち来い」
男は振り返り、歩き出す。それに周りの取り巻きもついて行く。
こんな誘い方があるだろうか、間違いなく喧嘩を売られている。
透明人間ということに対して怒っているのか知らんけど、まぁ、こちらとしても――。
メイトは興味なさ気な顔しながら、男を見る。
――舐められるのは嫌なんでね。
―――――――――――――――――――――
「じゃお前はそこに立て、練習方法は実戦式で行くぞ」
「はいはい、どうぞ」
俺はテキトーに返事しなから男を見据える。
数メートル先にはめんどい男とその取り巻き二人、別に意識したわけではないが、どこかライカのデブチビのようだ。
「なんだなんだ?」
「喧嘩だよ喧嘩。ほら、あいつと例の透明人間が」
「透明人間かわいそうに、あいつ入試うちのクラストップだぞ?」
ざわざわと野次馬の生徒も増えていく。
「あーあ、"雑魚狩り"だよ」
「雑魚狩り?」
「あぁ、弱そうなやつがいたら片っ端から退学にするんだ、殺害以外はセーフだから動けなくなるほど傷負わせてトラウマにさせるんだよ、他にもルールで退学にさせたり」
「そんなのやってんのかよ、怖っ!」
「他のクラスでも強いやつはやってるらしいぜ、雑魚は少ない方がいいからな」
「じゃああの透明人間も退学になるな、勝てるわけないし……」
「あぁ、かわいそうに」
……ほーん、雑魚狩りね……透明人間だからじゃなかったか。
「いくぞ」
要は戦って勝てば良いだけの話だろ。
男は腕を引いて構える。
「……」
俺は何故か冷静だった。こんな風景、ずっと見ていたから。
メアリーとの魔法の決戦でいつも痛い思いしていた。
ライカとの授業で、いつも怖い思いをしていた。
正直、この男は、ライカとメアリー、二人に遥かに劣る。ここに恐怖心はない。
メイトは無知ながら確信していた。ライカとメアリーに勝る戦闘できる人間なんて、この世にいないことを――。
次の瞬間、男が魔法を放った。
それは地面抉りながら進んでくる"螺旋"の衝撃。
クラスの誰も出せないほど大きな螺旋。
誰もが息を呑んだ。
コレにあたれば、"死ぬ"と。
――だが、メイトは驚いていた。
おっそ!!
メアリーの放つ魔法は一秒にも満たない速度で、さらに加速して、接近する。そして大きさも強さもメアリーより遥かに劣る、比にならない。
メイトはメアリーとの半年にも及ぶ決闘で、もう慣れていた。
メイトは向かってくる"死の螺旋"に一切動くことなく、魔法を発動する。
――普通、魔法同士は反発する。つまり、魔法には魔法で押し勝つもので、素手で相手する物ではない。
だが、メイトも自覚していない、そして今自覚する、新たな事実。
メイトは魔法の透明人間で、思いっきり駆け出し、螺旋を透過し、そのまま、ライカとの同じ動きで、一瞬で男の間合いに入った。
――メイトの作り出す魔法の透明人間は、他人の魔法を干渉しない。
そして、男の顔面を殴る。
――つまり、防御絶対不可、物理でも魔法でも、全てをすり抜け襲ってくる。
メイトの想像が働く場所は全て――。
突如殴られた男は、鼻から血を出しながら後ろに倒れる。それに合わせるように、螺旋もメイトに当たる直前で消える。
それを見たその場の全員が、理解不能で、場には沈黙という名の静寂が流れる。
が、その場に残るのは、透明人間は立ち、男は倒れたという事実のみ。
つまり、透明人間は男に勝ったということ。
「うぉおおお!!!」
「すげえぇええぇ!」
辺りに歓声が沸く。
誰もが透明人間の負けを確信していた試合は、呆気なく透明人間が勝利した。
メイトはみんなに拍手されながら、やはりと、納得した。
やっぱ、魔法学ぶ必要ないわ――。
そう考えたメイトは、そそくさその場から去った。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




