【第43話】とりあえず、そこから
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン 透明人間。
ハキマ・クォーツ 温厚篤実。
スピネル 男性嫌悪。
イト メイトのゲーム相手。
「どういうこと? 七階のやつにゲームしに来たとは」
女はメイトに質問しながら、薄いブルーの髪を揺らして首を傾げる。
「そのまんまだろ、俺は七階のやつとゲームしに来たんだ、それ以外ない」
メイトは平然と答える。しかし内心穏やかではなかった。
――今俺は、境地に立っている。
ルールで『日本語が読める人以外、八階以降立ち入り禁止』と言うことに気が付かず、まんまとノコノコ八階に釣られた俺だ。
しかもその日本語とは『自分がゲーム相手だ』と言う物、完全にイトとの例のゲームのことである。
「どういうことか――どういうこと?」
女はいつもの口調にならないように訂正し、全く同じ質問をする。
「さぁ? 俺はそれしか分からん」
今、あくまでも俺は無関係者、知らないふりしろ。そのため具体的なことは言わないことが最適。
この女に察してもらうしかない――。
「……」
女は考えていた。
――……察してほしいと言うことか。
七階にゲーム相手がいる。つまり日本語は読めるが、このルールの言う"ゲーム"は何のことか分からないと言うこと。
自分はあくまでも、『七階のやつとのゲーム相手』であるとは自覚しているから、それのせいじゃないか? と言うことか。
もし、即行で考えたのなら悪くない言い訳だ。
メイトは女の反応を伺いながら考える。
この"ルール"には何のゲームなのか、誰のゲーム相手なのか、具体性がない。ならばそれによる人違いにするしかない。
「と、言うわけで俺はコレで」
メイトはその場を去ろうとする。
ふむ、実に悪くない。細く脆い逃げ道を何とか手繰り寄せた。疑いはかかるが、"本人ではない可能性"を暗に示した……しかし――。
女は振り返り逃げ出すローブを見て、笑う。
くそっ、日本人であることがバレてしまった……しかしコレ以外逃げ道など…….まぁイトの姿も確認できたし、良しとするか、本当に危なかった……。
メイトは振り返り、階段を降りようとする。
――が。
「君は"ニホンジン"か?」
一段、足を下ろした瞬間、女はそう言った。
メイトは女を睨みながら振り返る。
日本人か……イトである証拠がまた……いや、なんなら今ここで問い詰めてしまう?
「なぜあんたがそれを――」
そこまで言って、止める。
――待てよ? こいつ、本当に"イト"か?
八階を立ち入り禁止にした奴らは"二人"だ。ならば、もう一人がイトの可能性もある。いや、そうだ、言っていたじゃないか――。
――あの人が言うなら君が絶対"そう"なのだけど――。
こいつはイト本人じゃない!
メイトは焦る。
マズい、逃げれていない! 俺はこちらの姿がバレたが、イトの姿も見れたなら良いかと判断していたが、こいつがイトでないなら、ただゲーム相手が透明人間とバレただけだ……。
――クッッソっ!!
メイトは顔を顰める。
本当の狙いはコレかッ!!
さて、気がついたかな? そうだ、この作戦は、良くてゲーム相手本人で、通常ではその候補を見つけるだけの作戦なのだよ。
イトが探してんのはゲーム相手本人じゃなくてゲーム相手候補なんだ、そして、俺はここに入った時点でその候補になっているのだ。
つまり……――。
女はまるでメイトの思考を読んだように、喋る。
「そう、君は私に見られた時点で終わっているのだ。そして君ができることは、出来るだけ"本人"であると言う可能性を低くしてからこの場を去ることだけ」
……どうやら、全部お見通しらしい。
メイトはその瞬間、負けを確信した。"この場の負け"だけは。
「そうだ、あー……一応言うが、私の考えではなくあの人の作戦であり計画だ、そして、全て"彼女"の思い通りの結果である」
「彼女……イト本人か」
メイトは階段を上がり、女の近くによる。
「イト?」
「あぁ、俺が勝手ながら名付けた、あんたの相方さんの名称だよ」
「イト……なるほど」
メイトは色々この場でできることは諦め、とりあえず自分はその候補の中でも出来るだけその本人の可能性を下げることに専念する。
「個人的に八階以降を立ち入り禁止にした奴らに興味あったからな、まぁなんだ、頑張ってなそのゲームとやら」
俺はそれだけ言って、退散しようとする。
ふむ、今できることはそれを言うことしかないだろう。しかし、もう良いのだ、"楽しんだ"から。
「別にいいぞ、もう嘘つかなくても。私は君のことを"イト"へ言ったりしない。私はただ、伝言を頼まれただけなのだから」
「……伝言?」
俺は女に言われたことに内心驚きつつ、平然と返す。
「うむ、『私と会いたければ、学園トップの成績になりなさい』とのことだ」
なんだと?
「『会いたければ、なりなさい』だぁ? なんで上から目線なんだよ、てかそれならトップになろうとすること自体が、本人です、って言うようなもんだろ」
……なれる訳ない……とは言わないのか。
女はメイトを"興味あり"と判断する。
「実際、彼女は今日の昼にはルールを削除し、追加するだろう。『この意味が分かる人ルール』は消し、『学園順位トップの人は入れる』というルールを追加する」
「……なるほどな、分かった、とりあえず会いたければ学園トップになれと」
イト……何を企んでいる。俺がトップになれば俺を疑うだろうが、すでに疑われているし意味はない。そしてそれは俺がゲーム相手本人である証拠にもならない。
俺はイトの思考が読めず、考えあぐねていると、女が言う。
「彼女は楽しんでいるのだよ、君とのゲームを。だから具体的な条件を持ち込んだのだよ」
「楽しんで……」
メイトは若干、心が躍った。
「彼女曰く、『その方が燃える』そうだ、私には分からない非合理的な行動だがね」
女は微笑みながら言う。メイトはその言葉はいつか、俺も言った言葉だ。
「なんだ……お前もそうなのか……」
ニヤと笑う。
「絶対勝つ」
女はそんなメイトを見て、目を細める。
「それは君がゲーム相手であると自供したようなものではないか?」
「はっ! 誘導尋問!?」
メイトは二歩ほど後ずさる。女はその反応を見て、笑う。
「はっ、やはり君がそうなのか、安心したまえ。私は中立者だ、彼女の仲間ではない。強いて言えば、君と彼女のゲームの息末を、横から見ていたいのだ。楽しそうだからね」
メイトは愉快そうに、かつ憎たらしく笑う女に一笑する。
「フッ、ならイトの協力者になってくれないか?」
女は流石に予想外の返事に、首を捻る。
「イトは一人なんだろ? さすがにかわいそうだからなぁ〜、あんたは彼女の仲間になってくれよ、その方がフェアだしな」
「わざわざ敵に塩を送ると?」
メイトはニヤと口角を上げて目を細める。
「勘違いすんなよ? 俺は"あんた"も"イト"も負かすってだけだ」
女は目を開き、メイトと同じように憎く笑う。
「ほう、私に勝つ気か?」
「おぉ当たり前だ。それと、約束しろ。一手で終わるようなクソつまんないルールは作るなよ」
「……分かっているさ、私も彼女もね」
例えば、自分がゲーム相手であると自覚する者以外、校内にいてはならない。なんてルールを作れば一瞬で終わってしまう。それは実に面白くない。
「なら安心、じゃホントに俺はこれでおさらばするぜ」
メイトは笑いながら振り返る。
「うむ、健闘を祈る」
「あぁ、次会う時は敵同士で――」
そうして、メイトの敵と初めての接触は終わった。
「――あぁ、そういやあんた――」
「――――」
メイトは半身だけ振り返り、話しかけた。その言葉に女は驚いた――。
――――――――――――――――――――
寮のある一室。
そこには机に座り、俯く一人の女がいた。
生徒に配られたローブのフードを深く被り、まるで誰にも顔を見られないように隠しているようだ。
女は静寂と時だけが流れる部屋で、ただ待っていた。
すると、ドアが開かれた。
「……」
無言で入ってきたのは先ほどメイトとの交渉を終わらせてきた青髪の女。
「どうでした? いましたか人は」
「うむ、いたよ、そして――その人が君の"言う人"だ」
「そうですか」
やはり、合格していましたか。
「それで、どんな人でしたか?」
女は訊くが答える気がないのか、無言で歩く。
「……それは訊かない約束だろう」
「そうでしたね、まぁ"彼"が入学したことが分かればいいです」
彼……男までは予測したのか……。
女は少し感心しながら、"魔法"を解く。するとだんだんの髪の色が変わり、髪が長くなってくる。そして骨格や体型も変わり、背が縮み――――。
「ふぅ……」
そこにいたのは、紛れもなくロリ校長であった。オレンジ色の髪が地面につくほど長く、眠そうな瞼や小学校低学年のような容姿。
校長はスルスルと落ち、足下にある"全身"の服を跨ぎ、小さい可愛げのあるショーツを穿き、ブカブカのTシャツを着る。
「それで、彼は約束したんですか?」
「うむ、その人も楽しむことを大事にするタイプでな、絶対反則級ルールは作らないそうだ」
「…………。そうですか、まぁあっちが作れるルールなんて大体予想できますけどね」
「……そうか」
「では、契約はこれだけなので帰ってください」
女はぶっきらぼうに言う。相変わらずフードで顔を見えないが、口元は一切動かず、本当に楽しんでいるのか分からない。
「いいのか? 私は校長だぞ? こんな一回きりにして」
「……? 何か問題ありますか?」
女は首を捻り、口を開く。
「あなたをもう一度使いたければ、またあなたに勝てば良いだけの話。そこに何か不純点が?」
なんの不安もなく言う女に、校長は少しムッとする。
「また、私に勝つと?」
「えぇ、多分何回でも勝てます。私、"最強"なので」
「……そうか」
校長はメイトとの違いを見れたような気がした。
「では、お望み通り、私はここから去らせてもらおう――」
「――あなた、正体バレてませんよね?」
「――」
校長は固まる。
「あーそれなのだけどな、実は普通にバレてしまった」
「は?」
女は予想外の返事につい、声が漏れてしまった。
「あー、なんだ。意識はしていたんだが、ついいつもの口調で喋ってしまってな? 中立者であるとまでつい、な」
校長は全てが話し終わったあと、メイトに言われたこと瞬間を思い出しながら言う。
「……」
意外と使えない校長に、女は絶句する。
はぁ、これであっちに私が一人ということがバレた訳か……。
「あー後それと、こんなことも言っていたな」
校長は小さい手を顎に当てる。
「『私は君の仲間となれ』とのことだ」
な、なんだと?
「彼曰く、それが『燃える展開』らしい、全く分からんよそれは」
私の同じことを、そして、私の仲間だと……意味不明だ。
その瞬間、初めて女の表情に変化が訪れる。
女は歯を強く締めた。
「それで余裕を見せたつもりか……」
校長は一瞬止まる。その声音だけでも分かる激怒に、不意を突かれたからである。
必ず殺す……何があっても絶対に――。
女はそう、今は見えないゲーム相手に向かって、宣言した。
――――――――――――――――――――
時は流れ、日も落ち始めたころ。
メイトは自分の部屋でダラダラしながら考えていた。すると扉が開く。
「ふい〜〜、疲れた!」
ハキマがどっさり大きな荷物と共にやってきた。どん! と机に置かれる。
「なんだこれ」
「指導書とか参考書とかだよ〜重すぎるよコレ〜」
ハキマは汗汗しながら言う。すると後ろからスピネルが入ってくる。
「あら、あんたいたのね」
スピネルは全然重そうじゃない。光っているしどうやら魔法で浮かせているらしい。
「ハキマも魔法使えば良いじゃん」
「そんな簡単に言わないで〜? この重さ浮かべるのって結構疲れるんだよ〜?」
そうなのか? 俺は別に大丈夫だけど……なんならスピネルも平気そうだけど。
「そうか、まぁお疲れさん」
とりあえず労う。ハキマはフラフラと歩きながらソファに倒れ込んだ。
それを横目に、スピネルが話しかけてきた。
「それで、勝ったの?」
何のことか一瞬不明だったが、すぐ朝の話だと理解する。
「いや、こんなすぐ決まる話でもない」
「そう……ま、どうでも良いけれど」
スピネルは少し興味あり気だったが、すぐいつもの冷めた表情に戻る。俺は話を続ける。
「でも、やるべきことは決まった」
誰もが一度は考えることで、でもすぐそれは選ばれた人にしか無理だと気がついて、稚拙で滑稽な目標。
「とりあえず、学園トップになる」
二人は揃って首を傾げた。俺は明確な目標ができて、どこかスッキリしていた――。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




